破産の手続によりファクタリングの請求を免れることができるか 債権の帰属、請求の制限及び免責の範囲

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資金繰りが行き詰まった局面は、行き詰まる仕組みを捉える場面と、事業再生又は破産の手続を選ぶ場面とに分かれますので、次のとおり切り分けます。本ページは、破産の手続における債権の帰属と請求の制限及び免責の範囲を扱います。

▶ ファクタリングによる資金繰りの悪化と事業再生 採り得る手続と選択の順序

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ファクタリングの負担により資金繰りが行き詰まった場合に、破産の手続をとれば業者からの請求を免れることができるのかというご質問をいただきます。

結論から申し上げますと、破産手続開始の決定がされますと、破産債権に基づく個別の権利の行使は制限されます。もっとも、有効に譲渡された売掛債権は破産財団に属しませんので、譲受人が売掛先から回収することを妨げるものではありません。また、譲渡の対象とした債権の内容に事実と異なる部分がある場合の刑事上の責任は、破産によって消滅しません。

本ページでは、破産の手続とファクタリングとの関係を、債権の帰属、請求の制限、免責、刑事上の責任の4つに分けて整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。

破産の手続の概要

破産手続は、支払不能又は債務超過にある債務者について、裁判所が破産手続開始の決定をし、破産管財人が財産を換価して債権者に配当する手続です(破産法第30条第1項)。

法人については、手続の終了により法人格が消滅します。個人については、免責の許可の決定が確定した場合に、破産債権について責任を免れることとなります(同法第253条第1項)。

法人の代表者が連帯保証をしている場合には、法人の破産と併せて、代表者個人の破産を申し立てることが一般です。

譲渡された売掛債権の帰属

債権の譲渡は、譲渡人と譲受人との間の合意によって効力を生じます。したがって、有効に譲渡された売掛債権は、譲渡人の財産ではありません。破産財団にも属しません。

この結果、譲受人は、破産手続の外で、売掛先から直接に回収することができます。破産手続開始の決定がされたことによって、この回収が妨げられるものではありません。

もっとも、対抗要件の具備の時期によっては、破産管財人との関係で効力を主張することができない場合があります。破産手続開始の決定の後にされた対抗要件の具備は、原則としてその効力を主張することができません(破産法第49条第1項)。

また、実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断される場合には、担保として扱われることがあります。この場合、別除権として扱われるか、否認の対象となるかが問題となります。ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

請求の制限

破産手続開始の決定がされますと、破産債権については、破産手続によらなければ行使することができません(破産法第100条第1項)。したがって、業者が譲渡人に対して有する債権のうち、破産債権に当たるものについては、個別の請求をすることができなくなります。

買戻しの請求、償還の請求、損害の賠償の請求は、破産債権となります。他方で、回収した資金を引き渡す義務については、当該資金が破産財団に属するかどうかによって取扱いが異なります。

また、破産手続開始の申立てがされた事実は、契約における期限の利益の喪失の事由とされていることが一般です。したがって、申立てにより直ちに全額の請求を受けることとなります。

否認の対象となる行為

破産手続においては、特定の債権者に対する偏った弁済、財産の不当な処分等が否認の対象となることがあります(破産法第160条、第162条)。

ファクタリングに関しては、次の点が問題となり得ます。第1に、支払不能となった後にされた債権の譲渡です。第2に、支払不能となった後にされた業者への引渡しです。第3に、著しく低廉な対価による債権の譲渡です。

否認がされた場合には、譲受人は、受領した金銭を破産財団へ返還することとなります。この結果、譲受人が譲渡人に対して有する債権が復活します。

免責と刑事上の責任

個人の破産においては、免責の許可の決定が確定した場合に、破産債権について責任を免れることとなります(破産法第253条第1項)。もっとも、破産者が不正の手段により信用取引に関して財産を取得した事実があるときは、免責許可の決定をすることができない場合があります(同法第252条第1項第5号)。

また、免責は、民事上の責任に関するものです。譲渡の対象とした債権の内容に事実と異なる部分がある場合の刑事上の責任は、免責によって消滅しません。詐欺罪(刑法第246条第1項)、私文書偽造罪及び同行使罪(同法第159条第1項、第161条第1項)、横領罪(同法第252条第1項)の成否は、破産の手続とは別に判断されます。

したがって、これらに心当たりがある場合には、破産の申立てを検討する前に、刑事上の対応を含めて方針を定める必要があります。

事業の継続を前提とする手続との比較

ファクタリングの負担を除いた場合に営業損益が黒字であり、主要な売掛先との取引が維持されているのであれば、事業の継続を前提とする手続を検討する余地があります。私的整理、中小企業活性化協議会の手続、民事再生(民事再生法第1条)が挙げられます。

他方で、既に売掛先に対する債権譲渡の通知が送付され、取引が停止している場合には、再生の前提が失われていることがあります。

判断に当たっては、資金の流出が止まっているかどうかが最も重要です。取引を重ねるごとに手数料が累積する状態が続いている限り、いかなる手続によっても資金繰りは改善しません。

申立ての前に確認すべき事項

第1に、譲渡した売掛債権の状況です。有効に譲渡された債権は破産財団に属しませんので、破産手続によって回収を止めることはできません。他方で、対抗要件の具備の時期によっては、破産管財人との関係で効力を主張することができない場合があります(破産法第49条第1項)。

第2に、否認の対象となり得る行為の有無です。支払不能となった後にされた債権の譲渡、業者への引渡し、著しく低廉な対価による譲渡が問題となります(同法第160条、第162条)。

第3に、譲渡した債権の内容に事実と異なる部分の有無です。この場合には、刑事上の責任が問題となるほか、免責許可の決定をすることができない場合があります(同法第252条第1項第5号)。

第4に、回収した資金の取扱いです。分別して管理すべき旨が定められているにもかかわらず他の支払に充てた場合には、横領罪(刑法第252条第1項)の成否が問題となります。

第5に、代表者個人の保証の状況です。法人の破産と併せて個人の破産を申し立てることが一般です。

第6に、事業の継続の可能性です。ファクタリングの負担を除いた場合に営業損益が黒字であるならば、破産以外の選択肢を検討する余地があります。

申立てから終了までの流れ

第1に、受任及び受任通知の発送です。もっとも、ファクタリング業者に対しては、貸金業法第21条第1項第9号の適用がありませんので、通知により当然に請求が止まるものではありません。

第2に、資料の収集です。決算書類、勘定科目内訳明細書、通帳、契約書、債権者の一覧を整理します。

第3に、申立てです。裁判所に破産手続開始の申立てをします。予納金の準備が必要となります。

第4に、破産手続開始の決定です。決定がされますと、破産債権については、破産手続によらなければ行使することができなくなります(破産法第100条第1項)。

第5に、破産管財人による調査及び換価です。譲渡された債権の帰属、否認の対象となる行為の有無が調査されます。

第6に、配当及び手続の終了です。法人については、手続の終了により法人格が消滅します。

従業員及び取引先に対する対応

第1に、従業員に対しては、解雇の予告(労働基準法第20条第1項)、未払賃金の取扱い、社会保険の手続について説明する必要があります。未払賃金については、立替払の制度の利用を検討することとなります。

第2に、取引先に対しては、納品又は役務の提供の中止の時期を伝える必要があります。仕掛かり中の工事又は業務がある場合には、その取扱いを協議します。

第3に、売掛先に対しては、債権譲渡の通知が既に送付されている場合には、支払先について説明する必要があります。

第4に、賃貸人に対しては、明渡しの時期を協議します。

第5に、いずれについても、申立ての時期との関係で順序を定める必要があります。早期に伝えますと、資産の散逸又は混乱を招くことがあります。

申立ての時期の判断

第1に、予納金を確保することができるかどうかです。資金が完全に尽きた後では、申立てそのものが困難となります。

第2に、否認の対象となり得る行為が増加する前かどうかです。支払不能となった後に特定の債権者に対して弁済を続けますと、否認の対象が拡大します。

第3に、従業員の給与の支払の状況です。未払が拡大する前に判断することが望まれます。

第4に、事実と異なる資料の提出、回収金の不引渡しといった行為に至る前かどうかです。これらの行為が生じますと、刑事上の責任が問題となり、免責にも影響します。

第5に、事業の一部を第三者へ譲渡する余地があるかどうかです。事業に価値が残っている段階であれば、雇用及び取引関係の一部を維持することができる場合があります。

いま確認していただきたいこと

1 業者ごとの残額、担保の有無、通知の有無及び登記の有無を一覧にしてください。

2 直近3期の決算書類及び勘定科目内訳明細書をご用意ください。

3 ファクタリングの負担を除いた場合の営業損益を算定してください。

4 主要な売掛先との取引が継続しているかどうかを確認してください。

5 代表者個人の連帯保証の有無及び範囲を確認してください。

6 譲渡した債権の内容に事実と異なる部分がないかどうかを確認してください。

よくあるご質問

破産をすれば、業者からの請求は止まりますか。

破産債権に基づく個別の請求は制限されます。もっとも、有効に譲渡された売掛債権については、譲受人が売掛先から回収することを妨げるものではありません。

代表者個人はどうなりますか。

連帯保証がある場合には、個人に対する請求がされます。法人の破産と併せて個人の破産を申し立てることが一般です。

免責を受ければ、刑事上の責任もなくなりますか。

なくなりません。免責は民事上の責任に関するものです。

事実と異なる資料を提出していた場合、免責は受けられますか。

破産者が不正の手段により信用取引に関して財産を取得した事実があるときは、免責許可の決定をすることができない場合があります。個別の事情を確認したうえで判断することとなります。

事業を続けたまま整理することはできますか。

ファクタリングの負担を除いた場合に収益力が残っており、主要な売掛先との取引が維持されているのであれば、私的整理又は民事再生により事業を継続することができる可能性があります。

どの段階で相談すべきでしょうか。

資金の流出が続いている段階では、選択肢が日々失われます。次回の支払期日を履行することができるかどうかが不確かとなった時点でご相談ください。

おわりに

破産の手続によって、ファクタリングに関する問題の全部が解決するものではありません。譲渡された売掛債権の帰属、否認の対象となる行為の有無、刑事上の責任の有無を、あらかじめ整理しておく必要があります。

また、事業に収益力が残っている場合には、破産以外の選択肢を検討する余地があります。まず資金の流出を止め、全体を把握することが出発点となります。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

出典

  • 破産法第30条第1項、第49条第1項、第100条第1項、第160条、第162条、第252条第1項第5号、第253条第1項
  • 民事再生法第1条
  • 刑法第159条第1項、第161条第1項、第246条第1項、第252条第1項
  • 貸金業法第2条第1項
  • 利息制限法第1条
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条

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