ファクタリングを続けるか、金融機関との返済条件の変更に切り替えるか 判断の基準と切替えの手順

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ファクタリングの利用をめぐる判断は、資金調達の手段を選び直す場面と、M&Aその他の局面で利用を開示する場面とに分かれますので、次のとおり切り分けます。本ページは、返済条件の変更へ切り替える判断の基準と手順を扱います。

▶ ファクタリングとは 法的な構造、取引の類型、負担の把握の方法及び契約上の留意事項

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売掛金の入金日を待たずにファクタリングを利用し、入金があった当日に次の申込みをしている。金融機関への約定返済は一度も遅らせていないものの、その返済の原資自体がファクタリングによって作り出された資金になっている。決算は赤字ではなく、受注も減っていない。それでも毎月の手元資金が薄くなり続けている。このようなご相談を数多くお受けします。

この状態が生ずるのは、ファクタリングが翌月以降の入金を先に受け取る取引だからです。今月の資金は確保できますが、その分だけ翌月の入金は減ります。減った分を補うために翌月も同じ取引を行い、これが繰り返されます。金融機関からの借入れは返済によって残高が減っていくのに対し、ファクタリングの利用額は減らないという形で、二つの負担が並行して積み上がります。

結論から申し上げます。ファクタリングを続けるか、金融機関との返済条件の変更に切り替えるかは、金融機関への約定返済がまだ滞っていない段階で決める必要があり、延滞が生じた後では切替えのために採ることのできる方法が大きく狭まります。返済条件の変更は、既存の借入金の弁済の期限を先送りして資金の流出を止める方法であり、新たな資金が入る方法ではありません。手元の資金が尽きた後に申し出ても間に合いません。以下、順にご説明します。

本記事が扱う場面と、扱わない場面

資金調達の手段を選び直す場面と、既に生じた支払の問題を処理する場面とでは、採るべき順序が異なりますので、次のとおり切り分けます。

手数料を払い続けるほど、資金繰りは細くなります

ファクタリングは、売掛債権を額面より低い金額で譲り渡し、その差額を負担することによって入金の時期を前倒しする取引です。負担する差額は、資金が手元にある期間の長さに応じて増減するものではなく、譲り渡した債権の1本ごとに生じます。毎月譲り渡せば、その負担も毎月生じます。

ここで生ずるのが、運転資金の目減りです。ある月に譲り渡した債権の入金は、譲り受けた側に帰属します。翌月に同じ額の運転資金を確保するには、翌月もほぼ同じ額の債権を譲り渡さなければなりません。しかも前月に負担した差額の分だけ手元は減っていますので、必要となる譲渡の額はむしろ増えます。売上が横ばいであっても、譲渡の額は逓増します。

この逓増が止まるのは、譲り渡すことのできる債権が尽きたときです。そのときには金融機関への返済も、税金及び社会保険料の納付も同時に迫っています。判断の余地が残るのは、売掛金の総額という上限に達する前の期間だけです。

二つの方法は、資金の性質がまったく違います

ファクタリングは、法的には債権の売買として構成されます。民法第555条は、売買が、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がその代金を支払うことを約することによって効力を生ずると定めています。売買である以上、譲り渡した会社に返済の義務は生じません。これに対し、金融機関からの借入れは金銭消費貸借であり、民法第587条は、同じ種類、品質及び数量の物をもって返還をすることを約して金銭を受け取ることによって効力を生ずると定めています。返還の義務があるからこそ、その期限を後ろへ動かす交渉が成り立ちます。

この違いは、負担に対する法の関わり方にも表れます。利息制限法第1条は、金銭を目的とする消費貸借における利息の契約について、元本の額に応じ、年2割、年1割8分又は年1割5分により計算した金額を超える部分を無効とすると定めています。売買として構成される取引に、この規定がそのまま働くわけではありません。もっとも、実質が金銭の貸付けであれば、貸金業法第2条第1項にいう貸付けに当たり、同法第11条第1項により、登録を受けない者はこれを業として行うことができません。

金融機関の側は、銀行法第2条第2項が、預金又は定期積金の受入れと資金の貸付け又は手形の割引とを併せ行うことを銀行業と定めているとおり、監督を受けた枠組みの中で貸付けを行います。片方は毎月が新たな取引であり、もう片方は既存の債務の条件を動かす協議です。

切り替えることができる会社の条件

返済条件の変更は、金融機関が、返済の期限を先送りしても最終的に回収できると判断した場合に応じられるものです。次の条件が揃っているかどうかを、申し出る前に自ら点検してください。

第一に、営業利益、又は減価償却費を加え戻した後の利益が黒字であることです。赤字が続いていれば、返済を止めても資金は減り続けます。第二に、金融機関への返済が現に滞っていないことです。既に延滞している場合には、条件の変更ではなく債務の整理の枠組みへ移ります。第三に、税金及び社会保険料に滞納がないか、あるとしても納付の猶予を受けていることです。

第四に、主要な売掛先との取引が継続していることです。第五に、月次の試算表が翌月中に作成できていることです。信用保証協会法第20条第1項は、中小企業者等が金融機関に対して負担する債務の保証を協会の業務として定めており、保証の付いた借入れがある場合には協会の理解も欠かせません。協会は資料の提出を求めますので、経理の資料が整っていない会社は、この段階で滞ります。

金融機関へ持ち込む資料と説明の順序

用意する資料は、直近3期の決算書及び勘定科目内訳明細書、当期の月次試算表、直近12か月の資金繰りの実績表、今後13週間の資金繰りの予定表、金融機関別の借入金の一覧、売掛金の年齢表、そして経営の改善の計画です。借入金の一覧には、残高、約定の返済額、担保及び保証の有無を記載します。

これに加えて、ファクタリングの利用状況を一覧にします。開始した時期、直近12か月の利用の回数、譲り渡した債権の額面の合計、現に譲渡済みで未入金の債権の額、各契約の期間及び更新の時期です。相手方の名称よりも、額と時期を示すことが求められます。

説明の順序は、まず取引の額が最も大きい金融機関、次に信用保証協会の保証の付いた融資を扱う金融機関、最後にその他という順です。ただし、提出する資料は全ての金融機関に対して同一のものとし、時期をずらさないでください。情報に差があると、後の協議が成立しません。中小企業の事業再生等に関する研究会が令和4年3月に公表した「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」が、私的整理の進め方の枠組みを示しています。

返済条件の変更が認められた場合に生ずる制約

期限の先送りが認められると、その期間中は新たな借入れが事実上止まります。設備の入替えや大口の受注に伴う仕入れに借入れで対応できなくなりますので、計画には自己資金の範囲で回る前提を置きます。

次に、経営の改善の計画の履行の状況を定期的に報告する義務が生じます。四半期ごとに試算表と資金繰りの実績を提出し、計画との差異を説明します。あわせて、役員報酬の水準、遊休資産の処分、生命保険の解約返戻金の取扱いについて、具体的な求めを受けることが通常です。

そして、複数の金融機関がある場合には、残高に応じた按分による返済が求められ、特定の金融機関にのみ多く返済することは認められません。手元の資金がファクタリングの負担に先に充てられていると按分の前提が崩れますので、この制約は、利用を続けたまま条件の変更を受けることが難しい理由にもつながります。

既存のファクタリングをどのように減らしていくのか

返済条件の変更によって浮いた資金は、利用を縮小するための原資です。まず、現に有効な契約の一覧を作り、契約の期間の満了日と、更新をしない旨の意思表示の期限を書き出してください。継続的な基本契約には、満了の一定期間前までに申し出なければ自動的に更新される旨の定めが置かれていることが通常ですので、この期限を逃すと1期分の縮小が遅れます。

次に、譲り渡す債権の額を、毎月の資金繰りの予定表の上で段階的に引き下げます。一度に停止すると、譲渡済みの債権の入金が譲り受けた側に帰属する月に、手元の資金が二重に不足します。譲渡済みで未入金の債権が残る期間を確認し、その期間を越えるまでは急激な縮小を避けてください。

また、同一の売掛先に対する同一の債権を、異なる相手方に重ねて譲り渡していないかを必ず確認してください。契約書に最低の利用額の定めや専属の定めが置かれている場合には、縮小そのものが契約の違反となることがありますので、条項を確認したうえで解約の申入れを行います。

切替えの途中で支払が止まった場合の対応

切替えの途中で資金が不足した場合、最初に決めるのは支払の優先順位です。従業員の賃金、税金及び社会保険料、事業の継続に不可欠な仕入れ、この三つを先に確保します。金融機関への返済とファクタリングに伴う支払は、その後です。順序を誤ると、操業そのものが止まります。

次に、契約書の中の買戻しに関する条項を確認します。売掛先が支払わなかった場合に譲り渡した側が債権を買い戻す義務を負う定めが置かれていれば、その取引は売買としての性質を欠き、実質は貸付けに近づきます。契約書、申込書及び入金の記録は全て保存してください。

民法第466条第1項は、債権は譲り渡すことができると定め、同条第2項は、当事者が譲渡を禁止し又は制限する旨の意思表示をしたときであっても債権の譲渡はその効力を妨げられないと定めています。売掛先との契約に譲渡を禁ずる定めがあることのみを理由として、譲渡が無効になるわけではありません。もっとも、民法第467条第1項は債務者への通知又は債務者の承諾を、同条第2項は確定日付のある証書によることを、それぞれ対抗の要件としていますので、支払が止まった局面では売掛先を巻き込む手続が動き出します。

なぜ金融機関はファクタリングの利用を嫌うのか

理由の第一は、返済の原資が先に失われるからです。金融機関は売掛金の入金を返済の原資として見込んでいます。その入金が先に第三者へ帰属していると、貸借対照表の上では売掛金があっても、実際には返済に充てることのできる資金がありません。

第二は、負担の全体像が資料に現れにくいからです。譲渡の対価と額面との差額は、支払手数料や売上債権売却損として費用に計上され、借入金として貸借対照表に現れません。第三は、担保としての余力が失われるからです。売掛債権を担保として評価していた場合、その債権が既に譲り渡されていれば、評価の前提が崩れます。第四は、資金の使途との整合です。

したがって、説明の際に隠すことは最も不利に働きます。開始した時期、その理由、現在の残高、そして停止の計画を、数値によって先に示してください。利用の事実そのものよりも、申告しなかったことが取引の継続を難しくします。

弁護士に任せられる範囲と、依頼の時期

弁護士が担うのは、金融機関へ提出する資料の点検、返済条件の変更の申出とその後の協議の代理、ファクタリングに関する契約書の条項の精査、縮小及び解約の申入れ、税金及び社会保険料の納付の猶予の申請に関する支援、そして協議が整わない場合に私的整理又は法的整理へ移るかどうかの判断です。経営者は、窓口を代理人に委ねることによって、受注と操業の維持に時間を使うことができます。

依頼の時期は、翌々月の資金繰りの予定表に不足が現れた時点です。この時点であれば、約定返済がまだ続いており、返済条件の変更を申し出る前提が残っています。手元の資金が1か月分の支出を下回ってからでは、協議に要する2か月から3か月の期間を確保できません。

いま確認していただきたいこと

まず、現に有効なファクタリングの契約を全て並べ、契約日、期間の満了日、更新をしない旨の申出の期限、譲り渡した債権の額面、買戻しに関する条項の有無を一覧にしてください。あわせて、直近12か月の間に負担した差額の合計を集計します。この合計額が、切替えによって手元に残すことのできる金額の目安です。

次に、金融機関別の借入金の一覧を作り、残高、月々の約定返済額、担保、そして信用保証協会の保証の有無を記載してください。最後に、今後13週間の資金繰りの予定表を、ファクタリングを利用しない前提で作成します。不足が生ずる週が明らかになれば、いつまでに申出を済ませるべきかが定まります。

よくあるご質問

返済条件の変更を申し出ると、取引を打ち切られますか

約定返済を続けている段階での申出であれば、直ちに取引が打ち切られることはありません。金融機関にとっても、回収の可能性が高まる方向の提案だからです。厳しい扱いを受けるのは、延滞が生じた後に事後的に説明した場合です。

ファクタリングの利用を伏せたまま申し出てもよいですか

避けてください。資金繰りの実績表と預金の動きを照合すれば、譲渡の対価の入金と差額の支出は把握されます。後から判明すれば、提出した資料の信頼性そのものが否定されます。

複数の金融機関がありますが、1行だけに申し出てもよいですか

できません。全ての金融機関に対して同時に、同一の資料をもって申し出るのが原則です。1行のみを対象とすると、他の金融機関から按分に反する扱いであるとして同意を得られません。

会社の譲渡も検討していますが、先に整理すべきですか

M&Aを並行して検討する場合には、利用の事実と残高の開示が必ず問題となります。買主の調査によって把握される事項ですので、譲渡の交渉に入る前に、契約の一覧と残高を確定させてください。

おわりに

ファクタリングと返済条件の変更は、どちらが優れているかという問題ではなく、どの時点でどちらへ軸足を移すかという問題です。約定返済が続いているうちに資料を揃え、全ての金融機関へ同時に申し出て、浮いた資金を縮小の原資に充てること。この三つを順に行えば、負担の構造は変わります。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

ファクタリングの継続と金融機関との返済条件の変更に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)

出典

  • 民法第466条第1項及び第2項(債権の譲渡性)、第467条第1項及び第2項(債権の譲渡の対抗要件)、第555条(売買)、第587条(消費貸借)
  • 利息制限法第1条(利息の制限)
  • 貸金業法第2条第1項(定義)、第11条第1項(無登録営業等の禁止)
  • 銀行法第2条第2項(定義等)
  • 信用保証協会法第20条第1項(業務)
  • 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(中小企業の事業再生等に関する研究会、令和4年3月公表)

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