ファクタリングの手数料の水準 算出の方法、水準が高くなる理由及び他の資金調達手段との比較

ファクタリングの手数料は、どの程度が妥当なのかという御質問を数多くいただきます。広告においては、手数料が売掛債権の額面の数パーセントであると表示されていることが少なくありません。もっとも、実際に受領した金額と、後に引き渡すこととなる金額を比較しますと、負担の水準は表示された数値から受ける印象とは大きく異なることがあります。
この差が生じる原因は、手数料が期間と結び付けて表示されていないことにあります。金銭の貸付けにおける利息は、年率によって表示されることが法令上求められています。これに対し、ファクタリングの手数料は、売掛債権の額面に対する割合として表示されることが一般です。両者は基準が異なりますので、そのままでは比較することができません。
本ページでは、負担の水準を算出する方法、水準が高くなる理由、他の資金調達手段との比較、及び水準が過大である場合に検討することのできる事項を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。
負担の水準を算出する方法
負担の水準を把握する出発点は、実際に受領した金額と、後に引き渡すこととなる金額の差額です。この差額を、資金を受領した日から引渡しの期日までの期間で除し、年率に引き直します。
例えば、額面1000万円の売掛債権について、支払期日までの期間が1箇月であり、実際に受領した金額が900万円である場合、差額は100万円です。これは受領した金額900万円に対して約11.1パーセントに相当します。期間が1箇月ですので、年率に引き直しますと約133パーセントに相当します。
期間が短いほど、年率に引き直した水準は高くなります。同じ額面の10パーセントという手数料であっても、支払期日までの期間が2週間である場合には、年率に引き直した水準は約260パーセントに相当します。したがって、手数料の割合のみを見て判断することは適切ではありません。
また、手数料のほか、保証金、事務手数料、調査費用、登記費用、振込手数料等の名目で控除がされることがあります。負担の水準を把握するに当たっては、名目にかかわらず、実際に手元に残った金額を基準としてください。契約書に記載された手数料の割合ではなく、通帳に記録された入金額を基準とすることが確実です。
さらに、取引が反復している場合には、1回ごとの負担ではなく、一定の期間における負担の合計を把握する必要があります。同一の売掛先に対する債権について毎月譲渡を繰り返している場合、年間の負担は、1回の手数料の12倍に相当します。当事務所に寄せられる御相談の多くは、この累積により資金繰りが行き詰まった事案です。
水準が高くなる理由
第1に、回収の確実性です。2社間ファクタリングにおいては、譲受人は売掛先に対して直接に請求することができる立場にありながら、通知をしないことを選択しています。したがって、回収は譲渡人による引渡しに依存します。この不確実性が、水準に反映されます。
第2に、売掛先の信用の調査の困難さです。譲受人は、売掛先と直接の関係を有しません。通知をしない以上、売掛先に対して債権の存否を照会することもできません。提出された資料のみによって判断せざるを得ませんので、その分の危険が水準に反映されます。
第3に、期間の短さです。資金の運用の期間が短いほど、1件当たりの事務の負担の割合は高くなります。審査、契約、登記、送金といった手続に要する費用は、期間の長短にかかわらず生じます。
第4に、譲渡人の資金繰りの状況です。他の資金調達手段を利用することができる事業者は、水準の低い手段を選択します。ファクタリングを利用する事業者は、他の手段を利用することが困難である場合が多く、この事情が水準に反映されます。
第5に、競争の程度です。3社間ファクタリングにおいては、譲受人が売掛先から直接に支払を受けますので、回収の確実性が高く、水準は相対的に低くなります。
法令による上限の有無
ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。
利息制限法は「金銭を目的とする消費貸借」における利息の上限を定めるものです(同法第1条)。出資法第5条も、金銭の貸付けを行う者を規律の対象とするものです。売買である以上、これらの規定が直接に適用される場面ではありません。
したがって、年率に引き直した水準が100パーセントを超えているという事実のみをもって、法令に違反すると主張することはできません。この点は、御相談の際に最も誤解の多い事項です。
なお、いわゆる給与ファクタリングについては、最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)が、貸金業法第2条第1項及び出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たる旨を判示しています。もっとも、これは、賃金は直接労働者に支払わなければならないものとされていること(労働基準法第24条第1項)から、譲受人が使用者に対して直接に支払を求めることが予定されていないという、給与債権に特有の事情を前提とする判断です。事業者が有する売掛債権を対象とする事業者向けのファクタリングとは事案を異にしますので、この判断がそのまま及ぶものではありません。
他の資金調達手段との比較
| 金融機関からの借入れ | 年率で表示されます。利息制限法の適用があり、元本の額に応じた上限が定められています(同法第1条)。審査に要する期間は長くなります。 |
| 信用保証協会の保証付融資 | 保証料が加算されますが、水準は借入れに準じます。手続に要する期間は長くなります。 |
| 手形の割引 | 年率で表示されます。手形の支払人の信用が前提となります。 |
| 売掛債権担保融資 | 売掛債権を担保として金銭を借り入れるものです。貸付けですので、利息制限法の適用があります。 |
| 3社間ファクタリング | 売掛先の承諾又は通知が前提となりますが、水準は2社間ファクタリングより低くなります。 |
| 2社間ファクタリング | 売掛先に知られないことが予定されていますが、水準は最も高くなります。 |
資金調達の手段を選択するに当たっては、水準のみならず、資金化までに要する期間、売掛先への影響、審査に必要となる資料、及び将来の資金調達への影響を併せて検討する必要があります。ファクタリングを反復して利用している事実は、金融機関の審査において考慮されることがあります。
水準が過大である場合に検討することのできる事項
第1に、取引の性質を争うことです。売買の形式が採られていても、実質において金銭の貸付けと同視すべきであると主張する場合には、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実を主張し、立証する必要があります。回収不能の危険が譲渡人に残る仕組みとなっているかどうか、売掛先の信用の調査がされているかどうか、担保又は保証が徴求されているかどうかが、主として問題とされています。
第2に、公序良俗違反を主張することです。負担の水準、契約の内容及び締結の経緯を総合して、公の秩序又は善良の風俗に反するものとして無効とされる余地があります(民法第90条)。もっとも、これが認められるためには、相当に強度の事情を要します。
第3に、今後の取引を停止することです。既に生じた負担を争うことと、これ以上負担を増やさないことは別の問題です。取引を重ねる限り、負担は累積します。
第4に、資金繰りの全体を見直すことです。ファクタリングの負担を除いた場合に営業損益が黒字であるならば、負担の整理により事業を継続することができる可能性があります。
取引ごとの負担の記録の方法
負担を継続して把握するためには、取引のたびに記録を残す必要があります。次の項目を記録してください。
第1に、契約の日付と個別契約書の番号です。
第2に、譲渡した債権の売掛先、金額、支払期日です。
第3に、実際に入金された日付と金額です。通帳の記録により確認します。
第4に、控除された金額を、名目ごとに記録します。手数料、保証金、事務手数料、調査費用、登記費用、振込手数料の別に記載します。
第5に、業者へ送金した日付と金額です。
第6に、年率に引き直した水準です。差額を受領額で除し、365を乗じ、期間で除して算出します。
水準の変化から読み取ることのできる事柄
第1に、水準が上昇している場合です。業者の側で回収の見込みが低いと判断されている可能性があります。
第2に、期間が短縮されている場合です。同様の判断がされている可能性があります。期間が短いほど、年率に引き直した水準は高くなります。
第3に、連帯保証又は担保が新たに求められた場合です。譲渡人の資力に依拠する度合いが高まっていることを示します。
第4に、譲渡することのできる金額の上限が引き下げられた場合です。
第5に、他の業者を紹介された場合です。当該業者が取引の継続を望んでいない可能性があります。
これらの変化は、決算書類に現れるより早く生じます。資金繰りの状況を示す指標として受け止め、対応の方針を見直してください。
負担の削減のために検討することのできる事項
第1に、3社間の取引への変更です。売掛先の承諾を得ることができるのであれば、水準は相対的に低くなります。もっとも、売掛先に譲渡の事実を明らかにすることとなります。
第2に、譲渡する債権の選定です。信用力の高い売掛先に対する債権を対象とすることにより、水準が下がることがあります。
第3に、期間の調整です。支払期日までの期間が短い債権を対象とすることにより、1回当たりの手数料の割合は下がります。もっとも、年率に引き直した水準は上がりますので、取引の頻度が増加します。
第4に、他の資金調達手段への切替えです。金融機関からの借入れ、信用保証協会の保証付融資を検討してください。
第5に、資金繰りの構造の是正です。売掛金の回収の期間の短縮、支払の期間の延長により、必要となる資金そのものを減らすことができます。
第6に、取引の停止です。負担が営業利益を上回っている場合には、取引を継続する限り資金繰りは悪化します。
いま確認していただきたいこと
1 通帳の記録により、取引ごとに実際に受領した金額を確認してください。
2 取引ごとに、引き渡した金額と、資金を受領した日から引渡しの期日までの期間を確認してください。
3 差額を期間で除し、年率に引き直してください。
4 手数料、保証金その他の名目で控除された金額を、名目ごとに集計してください。
5 一定の期間における負担の合計を算出してください。
6 同じ期間における営業損益と比較してください。
よくあるご質問
手数料の相場はどの程度ですか。
取引の類型、売掛先の信用状況、期間によって異なりますので、一律に申し上げることはできません。まず、実際に受領した金額を基準として、年率に引き直した水準を算出してください。
年率に引き直すと100パーセントを超えます。違法ではありませんか。
ファクタリングには利息制限法及び出資法の適用がありませんので、水準のみを理由として違法となるものではありません。
広告では手数料は3パーセントからと表示されていました。
表示された割合は、売掛債権の額面に対する割合であることが一般です。期間と結び付けて年率に引き直すと、水準は大きく異なります。また、他の名目による控除が加算されることがあります。
支払った手数料の返還を求めることはできますか。
水準のみを理由として返還を請求することはできません。実質において貸付けと同視すべきであると主張する場合には、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実の主張及び立証を要します。
手数料の引下げを求めることはできますか。
既に成立した取引について一方的に引き下げることはできません。今後の取引について協議することは可能ですが、業者に応じる義務はありません。
複数の業者と取引していますが、どこから見直すべきでしょうか。
年率に引き直した水準が高い取引から順に見直します。もっとも、担保の有無及び通知の有無によって順序が変わりますので、全体を把握したうえで判断してください。
おわりに
手数料の水準を把握するには、契約書に記載された割合ではなく、通帳に記録された金額を基準として、期間で除し、年率に引き直すという作業が必要です。この作業を経て初めて、他の資金調達手段との比較が可能となります。
水準が過大であることのみを理由として法令違反を主張することはできません。他方で、契約の内容及び運用の実態によっては、取引の性質を争う余地があります。まずは取引の全体を復元することから着手してください。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
ファクタリングの手数料の水準に関する御相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)
出典
- 民法第90条
- 利息制限法第1条
- 貸金業法第2条第1項
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第3項
- 労働基準法第24条第1項
- 最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)
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