利息制限法はファクタリングに適用されるか 規律の内容、適用がない理由及び例外的に問題となる場面

利息制限法は、ファクタリングに適用されるのかという御質問を数多くいただきます。手数料を年率に引き直しますと同法が定める上限を大きく超える場合が少なくありませんので、当然の御質問です。
本ページでは、利息制限法の規律の内容、ファクタリングに適用がない理由、例外的に問題となる場面、及び他の法令による規律の可能性を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。
利息制限法の規律の内容
利息制限法第1条は、金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約について、元本の額に応じた上限を定めています。元本の額が10万円未満の場合は年20パーセント、10万円以上100万円未満の場合は年18パーセント、100万円以上の場合は年15パーセントです。これらを超える部分は無効となります。
また、同法第3条は、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問わず、金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭を利息とみなす旨を定めています。ただし、契約の締結及び債務の弁済の費用は除かれます。
同法第4条は、賠償額の予定について、利息の上限の1.46倍を超える部分を無効とする旨を定めています。同法第7条は、営業的金銭消費貸借について、賠償額の予定の上限を年20パーセントとする旨を定めています。
ファクタリングに適用がない理由
ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。
利息制限法第1条は、「金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約」を対象とするものです。消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって効力を生ずる契約です(民法第587条)。
これに対し、売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって効力を生ずる契約です(民法第555条)。売掛債権の譲渡は、この売買に当たります。
したがって、返還の約束を前提とする消費貸借とは、契約の類型が異なります。同法第3条が「いかなる名義をもってするか」を問わないと定めているのは、消費貸借に該当することを前提として、その名目にかかわらず利息とみなすという趣旨であり、消費貸借でない契約に同法を及ぼす趣旨ではありません。
例外的に問題となる場面
売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例があります。この場合には、利息制限法の適用が問題となります。
そのような判断がされる場合には、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実が考慮されています。主として問題とされているのは、回収不能の危険が譲渡人に残る仕組みとなっているかどうか、売掛先の信用の調査がされているかどうか、担保又は保証が徴求されているかどうか、譲渡の対象が具体的に特定されているかどうか、資金の授受の態様が返済に類似しているかどうかです。
これらは、いずれか1つが認められれば直ちに貸付けと同視されるというものではありません。取引全体を通じて判断されます。したがって、争う場合には、契約書の条項のみならず、実際の資金の流れ、業者との連絡の記録その他の資料を収集し、主張及び立証を組み立てる必要があります。
いわゆる給与ファクタリングとの区別
いわゆる給与ファクタリングについては、最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)が、貸金業法第2条第1項及び出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たる旨を判示しています。
もっとも、これは、賃金は直接労働者に支払わなければならないものとされていること(労働基準法第24条第1項)から、譲受人が使用者に対して直接に支払を求めることが予定されていないという、給与債権に特有の事情を前提とする判断です。事業者が有する売掛債権を対象とする事業者向けのファクタリングとは事案を異にしますので、この判断がそのまま及ぶものではありません。
事業者向けのファクタリングにおいては、譲受人が売掛先に対して債権譲渡の通知をし、売掛先から直接に支払を受けることが、法律上も実務上も予定されています(民法第467条第1項)。この点において、給与ファクタリングとは仕組みが根本的に異なります。
他の法令等による規律の可能性
第1に、民法第90条による無効です。負担の水準、契約の内容及び締結の経緯を総合して、公の秩序又は善良の風俗に反するものとして無効とされる余地があります。もっとも、これが認められるためには、相当に強度の事情を要します。
第2に、民法第96条第1項による取消しです。重要な事項について事実と異なる説明を受け、これによって誤認して契約をした場合には、取消しが問題となります。
第3に、催促の態様に関する刑法上の規律です。脅迫罪(刑法第222条第1項)、強要罪(同法第223条第1項)等の成否が問題となり得ます。
第4に、譲渡人の側の行為に関する規律です。事実と異なる資料を提出した場合、回収した資金を引き渡さなかった場合には、詐欺罪、私文書偽造罪、横領罪の成否が問題となります。
他の法令による規律との比較
第1に、貸金業法です。金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介を業として行う者を規律の対象とするものであり(同法第2条第1項)、売買には適用されません。
第2に、出資法です。金銭の貸付けを行う者による契約及び利息の受領を規律するものであり(同法第5条)、売買には適用されません。
第3に、消費者契約法です。消費者と事業者との間の契約を対象とするものですので、事業者間の取引には適用されません。事業のために契約の当事者となる場合には、消費者に当たりません(同法第2条第1項)。
第4に、割賦販売法です。指定商品等の割賦販売等を対象とするものであり、売掛債権の売買には適用されません。
第5に、独占禁止法です。優越的地位の濫用(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第2条第9項第5号)が問題となる余地がありますが、これが認められるためには、取引上の地位の優越及び濫用の事実を要します。
第6に、下請代金支払遅延等防止法です。親事業者と下請事業者との間の取引を対象とするものであり、ファクタリングの当事者間の関係には適用されません。
負担が過大である場合に検討することのできる法律構成
第1に、公序良俗違反(民法第90条)です。負担の水準、契約の内容及び締結の経緯を総合して判断されます。もっとも、これが認められるためには、相当に強度の事情を要します。
第2に、詐欺による取消し(同法第96条第1項)です。重要な事項について事実と異なる説明を受け、これによって誤認して契約をした場合に問題となります。説明の内容を示す資料の有無が重要です。
第3に、錯誤による取消し(同法第95条第1項)です。表示された金額と実際に受領した金額とが大きく異なる場合等に問題となる余地があります。
第4に、取引の性質を争う構成です。実質において金銭の貸付けであると主張し、利息制限法の適用を求めるものです。
第5に、損害賠償の額の予定に関する主張です。損害金及び違約金が著しく過大である場合に問題となります。
いずれについても、契約書及び取引の記録に基づく具体的な事実の主張及び立証を要します。
相談の際に確認させていただく事項
第1に、契約書の条項です。買戻し、償還請求、期限の利益の喪失、損害金、違約金、表明及び保証に関する条項を確認いたします。
第2に、取引の記録です。通帳により、実際に受領した金額と引き渡した金額を確認いたします。
第3に、契約に至る過程です。提出を求められた資料、説明を受けた内容、検討の時間の有無を伺います。
第4に、担保及び保証の状況です。連帯保証、不動産の担保、株式の担保、手形の差入れの有無を確認いたします。
第5に、現在の取引の状況です。取引が継続しているかどうかにより、採るべき手段の順序が異なります。
適用の有無に関する誤解が生じる原因
第1に、利息制限法第3条が「いかなる名義をもってするか」を問わないと定めていることです。この規定は、消費貸借に該当することを前提として、その名目にかかわらず利息とみなすという趣旨であり、消費貸借でない契約に同法を及ぼす趣旨ではありません。
第2に、給与ファクタリングに関する判断が、事業者向けの取引にも及ぶかのように紹介されていることです。
第3に、手数料を年率に引き直すと同法所定の上限を大きく超える場合が多いことです。もっとも、水準の大きさは、適用の有無とは別の問題です。
第4に、実質において貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例が、一般的な結論として紹介されていることです。これらは、当該事案における契約の内容及び運用の実態を前提とするものです。
第5に、これらの誤解を前提として支払を拒みますと、その主張は認められず、遅滞による損害金が加算されます。
いま確認していただきたいこと
1 契約書に、買戻し又は償還請求に関する条項があるかどうかを確認してください。
2 買戻しの事由がどのように定められているかを確認してください。
3 契約に至る過程で、売掛先に関する資料の提出を求められたかどうかを確認してください。
4 連帯保証、担保の差入れ、手形の差入れの有無を確認してください。
5 買取代金が一括して交付されたかどうかを、通帳の記録により確認してください。
6 同一の業者との取引の回数と期間を確認してください。
よくあるご質問
手数料を利息とみなすことはできませんか。
利息制限法第3条は、消費貸借に該当することを前提とする規定です。売買である以上、同条によって手数料を利息とみなすことはできません。
年率で100パーセントを超えていても違法ではないのですか。
ファクタリングには利息制限法及び出資法の適用がありませんので、水準のみを理由として違法となるものではありません。
実質は貸付けであると主張することはできますか。
できます。もっとも、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実の主張及び立証を要します。
損害金の利率にも上限はありませんか。
利息制限法第4条及び第7条の適用はありませんので、法令上の上限はありません。著しく過大である場合には、別途の主張の余地を検討することとなります。
給与ファクタリングの判例を援用できませんか。
給与債権に特有の事情を前提とする判断ですので、事業者向けのファクタリングにそのまま及ぶものではありません。
それでは、負担が重い場合に何もできないのでしょうか。
そうではありません。取引の性質を争う余地の検討、支払の方法についての協議、資金繰りの立て直しといった対応が可能です。まず取引の全体を把握することから着手します。
おわりに
利息制限法は、金銭を目的とする消費貸借を対象とする法律ですので、売掛債権の売買であるファクタリングには適用がありません。したがって、手数料の水準のみを理由として法令違反を主張することはできません。
他方で、契約の内容及び運用の実態によっては、取引の性質を争う余地があります。また、支払の方法についての協議、資金繰りの立て直しという対応も可能です。まず取引の全体を把握することから着手してください。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
利息制限法の適用に関する御相談
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出典
- 民法第90条、第96条第1項、第467条第1項、第555条、第587条
- 利息制限法第1条、第3条、第4条、第7条
- 貸金業法第2条第1項
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第3項
- 労働基準法第24条第1項
- 刑法第222条第1項、第223条第1項
- 最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)
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