ファクタリングの手数料について過払金の返還請求はできるか?適用される法令と争う場合に必要となる主張

この記事の位置付け
手数料をめぐる検討は、負担の水準を把握する場面と、返還を求める法律構成を組み立てる場面とに分かれますので、次のとおり切り分けます。本ページは、適用される法令と争う場合に必要となる主張を扱います。
同じ主題を扱う関連ページ
本記事は、ファクタリングの手数料が高額であることから、支払った金銭を過払金として取り戻すことができないかを検討している事業者の方に向けたものです。
ファクタリングの手数料が高額であることを理由として、支払った金銭の返還を請求することができないかというご相談を数多くお受けしています。いわゆる給与ファクタリングに関する報道の影響もあり、事業者向けのファクタリングについても同様の請求ができるのではないかというご質問をいただきます。
本ページでは、この点に関する法律上の枠組みと、請求を検討する場合に必要となる主張及び立証の内容を整理します。結論から申し上げますと、手数料の水準のみを理由として返還を請求することはできません。
ファクタリングに対する貸金業法等の適用
ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。
利息制限法は「金銭を目的とする消費貸借」における利息について上限を定めるものです(同法第1条)。出資法第5条も、金銭の貸付けを行う者による契約及び利息の受領を規律するものです。売買である以上、これらの規定が直接に適用される場面ではありません。
過払金の返還請求は、利息制限法所定の上限を超えて支払われた利息を元本に充当し、なお残額がある場合に、不当利得としてその返還を請求するものです。したがって、利息制限法の適用がない取引について、同じ枠組みによる請求をすることはできません。
給与ファクタリングに関する判断とその射程
いわゆる給与ファクタリングについては、最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)が、貸金業法第2条第1項及び出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たる旨を判示しています。
もっとも、これは、賃金は直接労働者に支払わなければならないものとされていること(労働基準法第24条第1項)から、譲受人が使用者に対して直接に支払を求めることが予定されていないという、給与債権に特有の事情を前提とする判断です。事業者が有する売掛債権を対象とする事業者向けのファクタリングとは事案を異にしますので、この判断がそのまま及ぶものではありません。
事業者向けのファクタリングにおいては、譲受人が売掛先に対して債権譲渡の通知をし、売掛先から直接に支払を受けることが、法律上も実務上も予定されています(民法第467条第1項)。この点において、給与ファクタリングとは仕組みが根本的に異なります。
実質において貸付けと同視すべきであると主張する場合
売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例があります。そのような主張をする場合には、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実を主張し、立証する必要があります。裁判例において考慮されている要素としては、次のものが挙げられます。
| 回収不能の危険の所在 | 売掛先が支払をしない場合に、譲渡人が支払の責任を負う仕組みとなっているかどうか。買戻しの義務又は償還の義務が定められているかどうか。 |
| 売掛先の信用の調査 | 譲受人が売掛先の信用状況を調査しているかどうか。調査をしていない場合には、売掛先の資力ではなく譲渡人の資力を前提とした取引であることがうかがわれます。 |
| 担保及び保証の徴求 | 代表者個人の連帯保証、不動産の担保、株式の担保その他の担保が徴求されているかどうか。 |
| 譲渡の対象の特定 | 譲渡の対象とされた債権が具体的に特定されているかどうか。特定が形式的なものにとどまる場合には、資金の融通が主たる目的であることがうかがわれます。 |
| 資金の授受の態様 | 債権買取代金が分割して交付されているかどうか。返済に相当する入金が定期的に行われているかどうか。 |
これらは、いずれか1つが認められれば直ちに貸付けと同視されるというものではありません。取引全体を通じて判断されます。
請求を検討する場合の手順
第1に、取引の全体を復元します。業者ごとに、契約書、個別の取引の明細、通帳の記録を時系列で整理し、資金の授受を確定します。
第2に、契約書の条項を確認します。買戻し、償還請求、期限の利益の喪失、損害金、違約金に関する条項の有無及び内容を確認します。
第3に、運用の実態を確認します。契約書に定められていない取扱いが行われている場合には、その事実を示す資料を保全します。
第4に、請求の可否及び見込みを検討します。仮に実質において貸付けと同視すべきであるとされた場合には、利息制限法所定の上限を超える部分について、不当利得としての返還請求が問題となります。
第5に、現在も取引が継続している場合には、返還請求よりも先に、支払の方法及び債権譲渡の通知への対応を整理する必要があります。返還請求を先行させますと、通知が送付され、売掛先を失うことがあります。
引直しの計算の考え方
仮に実質において金銭の貸付けであると認められた場合には、利息制限法所定の上限による計算をすることとなります。この計算の考え方を、あらかじめ整理しておきます。
第1に、元本の額の確定です。実際に受領した金額を元本とします。契約書に記載された額面の金額ではありません。
第2に、上限の利率の確定です。利息制限法第1条は、元本の額が10万円未満の場合は年20パーセント、10万円以上100万円未満の場合は年18パーセント、100万円以上の場合は年15パーセントと定めています。
第3に、弁済の充当です。業者へ送金した金額のうち、上限による利息を超える部分を元本に充当します。
第4に、取引の一連性の判断です。同一の業者との間で取引が反復している場合において、これを一連の取引として計算するか、個別の取引として計算するかによって、結果が大きく異なります。基本契約が存在し、同一の枠組みのもとで取引が継続している場合には、一連の取引として扱うことが考えられます。
第5に、過払いの有無の判定です。充当の結果、なお過払いが生じている場合には、不当利得としての返還請求が問題となります(民法第703条)。
この計算は、取引の全体が復元されていることを前提とします。通帳の記録が欠けている期間がある場合には、その期間について推計をすることとなりますが、推計に基づく主張は立証の点で不利となります。
請求を検討するに当たっての実務上の判断
第1に、業者の資力です。判決を得ても、業者に資力がなければ回収することができません。登記事項証明書により、業者が現に存続しているかどうか、解散の登記がされていないかどうかを確認してください。
第2に、費用と見込みの比較です。取引の性質を争う訴訟は、資料の収集及び尋問を要しますので、期間及び費用を要します。請求することのできる金額の見込みと比較したうえで判断してください。
第3に、順序の判断です。現に取引が継続している場合には、請求をすることにより売掛先への通知が送付され、取引関係が失われることがあります。
第4に、消滅時効です。債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法第166条第1項)。
第5に、資料の保存期間です。金融機関の取引明細及び通信の記録については、保存期間の経過により取得することができなくなります。
ご相談の際に確認させていただく事項
第1に、取引の期間と回数です。同一の業者との間で長期間にわたり反復している場合には、一連の取引として計算する余地があります。
第2に、契約書の条項です。買戻し、償還請求、期限の利益の喪失、表明及び保証に関する条項を確認いたします。
第3に、通帳の記録です。実際に受領した金額と引き渡した金額を、取引ごとに確認いたします。
第4に、契約に至る過程です。提出を求められた資料、説明を受けた内容を伺います。
第5に、現在の取引の状況です。取引が継続しているかどうかにより、採るべき手段の順序が異なります。
第6に、業者の存続の状況です。既に解散している場合には、請求そのものが困難となることがあります。
本ページの位置付け
本ページは、ファクタリングの手数料について、支払った金銭の返還を求めることができるかどうかを検討している事業者の方に向けて、法律上の枠組みと必要となる主張を整理したものです。
結論として、手数料の水準のみを理由として返還を請求することはできません。他方で、契約の内容及び運用の実態によっては、取引の性質を争う余地があります。
まず取引の全体を復元し、引直しの計算により見込みを立てることから着手してください。
いま確認していただきたいこと
1 業者ごとに、契約書及び個別契約書の全部を時系列で整理してください。
2 通帳又は取引明細により、債権買取代金の入金及び業者への送金の全部を書き出してください。
3 手数料、保証金、事務手数料その他の名目で控除された金額を、取引ごとに確認してください。
4 連帯保証、担保の差入れ、債権譲渡登記の有無を確認してください。
5 現在も取引が継続している場合には、次回の支払期日と金額を確認してください。
よくあるご質問
手数料が年率に引き直すと100パーセントを超えます。それでも返還を請求することはできませんか。
ファクタリングには利息制限法及び出資法の適用がありませんので、水準のみを理由として返還を請求することはできません。実質において貸付けと同視すべきであると主張する場合には、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実の主張及び立証を要します。
既に完済しています。それでも検討する意味はありますか。
取引が終了している場合には、売掛先への通知の問題が生じませんので、検討の余地はあります。もっとも、資料の保存期間の経過により、取引の全体を復元することが困難となることがあります。
給与ファクタリングでは返還が認められた例があると聞きました。
給与債権を対象とする取引については、労働基準法第24条第1項の規律を前提とする特有の事情がありますので、事業者向けのファクタリングとは事案を異にします。
返還を請求すると、業者は取引先へ通知を送りますか。
その可能性は否定できません。現在も取引が継続している場合には、対応の順序を定めたうえで進める必要があります。
弁護士費用はどの程度かかりますか。
弁護士費用の考え方及び目安は、当事務所の弁護士費用のご案内のページに記載しています。ご相談の際に、案件の類型を切り分けたうえで、算定した見積りを提示します。
おわりに
手数料の水準が高いという事実だけでは、返還の請求は認められません。他方で、契約の内容及び運用の実態によっては、取引の法的性質を争う余地があります。まずは取引の全体を復元し、争うことのできる事実があるかどうかを確認することから着手します。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
ファクタリングの手数料及び返還請求に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)
ご留意事項
本ページの記載は、ファクタリングの手数料及び過払金の返還請求に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。
また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。
法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。
出典
- 民法第467条第1項、第703条
- 利息制限法第1条
- 貸金業法第2条第1項
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第3項
- 労働基準法第24条第1項
- 最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)
具体的なご相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。


