ファクタリングの負担が過大となっている場合の検討 負担の把握と採り得る対応

ファクタリングの負担が過大となっており、資金繰りが行き詰まりつつあるという御相談を数多くお受けしています。この局面において、まず必要となるのは、負担の大きさを数値として把握することです。
本ページでは、負担の把握の方法、負担が過大である場合に生じる帰結、採り得る対応、及び判断の期限を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。
負担の把握の方法
第1に、取引ごとに、実際に受領した金額と、引き渡すこととなる金額を確認します。契約書に記載された手数料の割合ではなく、通帳に記録された入金額を基準としてください。
第2に、差額を、資金を受領した日から引渡しの期日までの期間で除し、年率に引き直します。額面の10パーセントの手数料で期間が1箇月である場合、年率に引き直した負担は約133パーセントに相当します。
第3に、一定の期間における負担の合計を算出します。同一の売掛先に対する債権について毎月譲渡を繰り返している場合、年間の負担は1回の手数料の12倍に相当します。
第4に、その水準と、直近の営業利益率とを比較します。営業利益率が数パーセントである事業において、月次で10パーセントの負担を吸収することは、構造上不可能です。
第5に、譲渡することのできる売掛債権の残量を確認します。循環に入りますと、譲渡することのできる債権の残量が減少する一方で、負担は累積します。
負担が過大である場合に生じる帰結
第1に、次の売掛債権を譲渡して前回の引渡しに充てるという循環が生じます。この循環は、当事者の意思によってではなく、負担の水準と営業利益率との差によって構造的に生じます。
第2に、譲渡することのできる債権の残量が減少します。将来発生する債権を含めて譲渡している場合には、資金化することのできる資産が先に費消されます。
第3に、事業の継続に不可欠な支払が後回しになります。人件費、仕入代金、公租公課の遅滞が生じますと、事業そのものが維持できなくなります。
第4に、他の資金調達手段の利用が困難となります。債権譲渡登記の存在、ファクタリングの反復の事実は、金融機関の審査において考慮されることがあります。
第5に、売掛先に対する債権譲渡の通知が送付される可能性が高まります。引渡しが遅滞しますと、業者は回収の手段としてこれを選択します。
法令の適用に関する前提
ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。
したがって、負担が過大であることを理由として、直ちに支払を拒み、又は返還を求めることはできません。この点は、御相談の際に最も誤解の多い事項です。
採り得る対応
第1に、資金の流出を止めることです。取引を重ねる限り、負担は累積します。次の譲渡を行わないという判断が、最初の対応となります。
第2に、支払の方法について協議することです。分割による支払、支払の猶予、精算の方法について、資金繰りの見込みに基づいて提案します。業者に応じる義務はありませんが、業者にとっての目的は多くの場合に金銭の回収ですので、協議が調う例があります。
第3に、契約の内容を精査することです。買戻し、償還請求、期限の利益の喪失、損害金及び違約金に関する条項を確認し、請求されている金額の算定の根拠を求めます。
第4に、取引の性質を争う余地があるかどうかを検討することです。もっとも、現に取引が継続している場合には、争う姿勢を示すことにより売掛先への通知が送付されることがありますので、順序の判断を要します。
第5に、資金繰りの全体を見直すことです。ファクタリングの負担を除いた場合に営業損益が黒字であるならば、負担の整理により事業を継続することができる可能性があります。黒字でない場合には、事業の整理を含めて検討することとなります。
判断の期限
第1に、譲渡することのできる売掛債権の残量が尽きる時期です。残量が尽きますと、次の期日を越える手段がなくなります。
第2に、主要な売掛先との取引が継続している間です。取引を失いますと、資金繰りの再建の前提が失われます。
第3に、事業の継続に不可欠な支払が遅滞する前です。人件費、仕入代金の遅滞が生じますと、事業そのものが維持できなくなります。
第4に、売掛先に対する債権譲渡の通知が送付される前です。この段階が、最も選択肢の広い局面です。
負担の把握に用いる表の作り方
負担を把握するに当たっては、次の項目を列とする表を作成してください。取引ごとに1行とします。
| 項目 | 記載する内容 |
| 資金受領日 | 通帳に入金が記録された日 |
| 受領額 | 実際に入金された金額。契約書に記載された額面ではありません。 |
| 引渡期日 | 契約上、業者へ引き渡すこととされた日 |
| 引渡額 | 業者へ引き渡すこととされた金額 |
| 差額 | 引渡額から受領額を控除した金額 |
| 期間 | 資金受領日から引渡期日までの日数 |
| 年率換算 | 差額を受領額で除し、365を乗じ、期間で除した数値 |
| 業者名 | 取引の相手方 |
| 売掛先 | 譲渡した債権の債務者 |
この表を作成しますと、業者ごとの水準の差、期間の長短による水準の違い、時期による水準の変化が明らかになります。時期を追って水準が上昇している場合には、業者の側で回収の見込みが低いと判断されている可能性があります。
負担の合計と収益との比較
第1に、直近12箇月における差額の合計を算出します。これが、当該期間においてファクタリングに費消された金額です。
第2に、同じ期間の営業利益を算定します。決算書類において、ファクタリングの手数料が営業外費用又は売上債権売却損として計上されている場合には、これを控除する前の金額を用います。
第3に、両者を比較します。差額の合計が営業利益に近づいている場合には、事業の収益がすべてファクタリングに費消されている状態です。この状態では、営業損益が黒字であっても、資金繰りは破綻します。
第4に、譲渡することのできる売掛債権の残量を確認します。将来発生する債権を含めて譲渡している場合には、残量が既に費消されている可能性があります。
第5に、以上を踏まえて、事業を継続することができるかどうかを判断します。ファクタリングの負担を除いた場合に営業損益が黒字であるならば、負担の整理により事業を継続することができる可能性があります。
負担が過大である場合に生じる社内の問題
第1に、経理の担当者の負担です。支払の順序を日々組み替える作業が生じますので、本来の業務に支障が生じます。また、担当者が事情を把握することにより、社内における不安が生じます。
第2に、決算への影響です。手数料が営業外費用又は売上債権売却損として計上されますので、経常利益が圧迫されます。金融機関の審査において、この点が確認されます。
第3に、税務上の取扱いです。手数料の計上の時期及び区分について、税理士に確認する必要があります。課税関係は税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。
第4に、従業員の処遇です。資金繰りが逼迫しますと、賞与の支給、昇給が困難となります。
第5に、設備投資の停止です。将来の収益力を確保するための投資ができなくなります。
取引を停止する場合の手順
第1に、現在の残額と支払期日を、業者ごとに確定してください。
第2に、次の譲渡を行わない場合に、いずれの支払が不足するかを算出してください。
第3に、不足する金額について、他の手段による調達の可否を確認してください。金融機関からの借入れ、既存の借入れの条件の変更、取引先との支払条件の協議が対象となります。
第4に、なお不足する場合には、業者との間で支払の方法について協議することとなります。資金繰りの見込みに基づいて、履行することのできる内容を書面により提示してください。
第5に、債権譲渡登記が残っている場合には、抹消への協力を求めてください。登記が残る限り、他の資金調達手段の利用が困難となります。
第6に、通知書を交付している場合には、返還を求めてください。
負担の把握を継続するための運用
第1に、取引のたびに記録を残す担当者を定めてください。
第2に、月次で集計し、経営者が確認する運用としてください。
第3に、年率に引き直した水準を、営業利益率と並べて表示してください。両者の差が、資金繰りに及ぼす影響を示します。
第4に、譲渡することのできる売掛債権の残量を、月商との関係で把握してください。
第5に、これらの数値が一定の水準を超えた場合には、取引を停止する判断を行う旨を、あらかじめ定めておいてください。
負担の把握に関する用語の整理
手数料は、譲渡の対価の算定において控除される金額のうち、その名目により手数料とされているものを指します。これに対し、負担は、実際に受領した金額と引き渡すこととなる金額との差額の全部を指します。名目にかかわらず、実際に手元に残った金額を基準として把握してください。
年率換算は、負担を期間で除して1年あたりに引き直した数値です。金融機関からの借入れにおける利率と比較するために用います。もっとも、ファクタリングには利息制限法の適用がありませんので、この数値は水準の大きさを把握するためのものであり、法令違反を基礎付けるものではありません。
いま確認していただきたいこと
1 取引ごとに、実際に受領した金額と引き渡した金額を、通帳の記録により確認してください。
2 差額を期間で除し、年率に引き直してください。
3 直近1年間の負担の合計を算出し、同じ期間の営業利益と比較してください。
4 譲渡することのできる売掛債権の残量を確認してください。
5 今後3箇月の資金繰りを、日単位で作成してください。
6 主要な売掛先との取引が継続しているかどうかを確認してください。
よくあるご質問
負担が過大であることを理由に支払を拒むことはできますか。
できません。ファクタリングには利息制限法及び出資法の適用がありませんので、水準のみを理由として支払を拒むことはできません。
まず何をすべきでしょうか。
資金の流出を止めることです。次の譲渡を行わないという判断が、最初の対応となります。
次の譲渡をしなければ、今月の支払ができません。
その状態が、循環に入っていることを示しています。業者との協議を含め、対応の方針を定める必要がありますので、直ちに御相談ください。
手数料の引下げを求めることはできますか。
既に成立した取引について一方的に引き下げることはできません。今後の取引について協議することは可能ですが、業者に応じる義務はありません。
事業を続けることはできますか。
ファクタリングの負担を除いた場合に営業損益が黒字であり、主要な売掛先との取引が維持されているのであれば、可能性があります。決算書類を御持参ください。
どの段階で相談すべきでしょうか。
譲渡することのできる売掛債権の残量が減少しつつある段階、又は次回の支払期日を履行することができるかどうかが不確かとなった段階で御相談ください。
おわりに
負担が過大であるかどうかは、印象ではなく、数値として把握することができます。実際に受領した金額を基準とし、期間で除して年率に引き直し、営業利益率と比較してください。
負担が営業利益率を上回っている場合には、取引を重ねる限り資金繰りは悪化します。まず資金の流出を止め、全体を把握することが出発点となります。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
負担が過大となっている場合の御相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)
御留意事項
本ページの記載は、ファクタリングの負担の水準に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。
また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士に御確認ください。
法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際の御依頼に際しましては、必ず個別に御相談ください。御相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。
出典
- 民法第90条
- 利息制限法第1条
- 貸金業法第2条第1項
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条
このページの位置付けと、関連するページ
本ページは、過払金の返還請求及び手数料の水準に関する解説のうちの1つです。全体像は、次の中核となるページを御覧ください。
▶ ファクタリングの手数料と過払金の返還請求 適用される法令と争う場合に必要となる主張
同じ主題を扱う関連ページ
具体的な御相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次の御案内のページに整理しています。あわせて御覧ください。


