ファクタリング業者に対する不当利得の返還請求 請求の構成、立証の対象及び手続の進め方

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ファクタリング業者に対して支払った金銭について、その返還を求めることができるかという御相談をお受けしています。本ページでは、請求の法律上の構成、立証の対象、手続の進め方、及び請求を検討する場合の留意点を整理します。

結論から申し上げますと、手数料の水準のみを理由として返還を請求することはできません。請求をするためには、当該取引が実質において金銭の貸付けであることを、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実によって主張し、立証する必要があります。

請求の法律上の構成

ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

実質において金銭の貸付けであると認められる場合には、利息制限法第1条が定める上限を超える部分の利息の契約は無効となります。上限を超えて支払われた金銭は、元本に充当されます。充当の結果、なお過払いが生じている場合には、法律上の原因なく利益を受けたものとして、不当利得の返還を請求することができます(民法第703条)。

また、悪意の受益者に対しては、受けた利益に利息を付して返還を請求することができます(同法第704条)。

このほか、契約全体が公の秩序又は善良の風俗に反するものとして無効であると主張する構成(同法第90条)、及び重要な事項について事実と異なる説明を受けたことを理由として取消しを主張する構成(同法第96条第1項)も考えられます。もっとも、いずれも認められるためには相当に強度の事情を要します。

立証の対象

請求の中心となるのは、当該取引が実質において金銭の貸付けであるという点です。この点について、次の事実を主張し、立証することとなります。

回収不能の危険の所在 買戻しの義務又は償還の義務の有無及びその事由の範囲。契約書のほか、実際に買戻しが求められた事実を示す資料。
売掛先の信用の調査 契約に至る過程で提出を求められた資料の内容。売掛先に関する資料の提出が求められなかった事実。
担保及び保証の徴求 連帯保証、不動産の担保、株式の担保、手形の差入れに関する書面。
譲渡の対象の特定 個別契約書における債権の特定の程度。事後の差替えが行われた事実。
資金の授受の態様 通帳の記録。買取代金が分割して交付された事実。返済に相当する入金が定期的に行われた事実。
取引の反復性 取引の回数及び期間。与信の枠として機能していた事実。

これらの資料の多くは、業者の手元にあります。したがって、文書提出命令の申立て(民事訴訟法第221条第1項)を含めて、立証の方法を検討する必要があります。

手続の進め方

第1に、取引の全体を復元します。業者ごとに、契約書、個別の取引の明細、通帳の記録を時系列で整理し、資金の授受を確定します。この作業を経ずに請求をすることはできません。

第2に、引直しの計算を行います。仮に実質において貸付けであると認められた場合に、利息制限法所定の上限による計算をした場合の残額を算出します。これにより、請求することのできる金額の見込みが立ちます。

第3に、業者に対して資料の開示を求めます。取引の明細、計算書の交付を求めることにより、こちらの記録との照合が可能となります。

第4に、請求の書面を送付します。請求の根拠となる事実と、請求する金額を明示します。

第5に、協議が調わない場合には、訴訟の提起を検討します。

請求を検討する場合の留意点

第1に、現に取引が継続している場合には、順序の判断を要します。請求をすることにより、売掛先に対する債権譲渡の通知が送付され、取引関係が失われることがあります。事業の継続を優先するのか、既に生じた負担を争うことを優先するのかを、あらかじめ定めておく必要があります。

第2に、消滅時効に注意を要します。債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法第166条第1項)。

第3に、資料の保存期間に注意を要します。取引が終了してから期間が経過している場合には、通帳の記録の取得が困難となることがあります。

第4に、業者の資力に注意を要します。判決を得ても、業者に資力がなければ回収することができません。事前に、業者の存続の状況及び資産の状況を確認する必要があります。

第5に、費用と見込みを比較することです。取引の性質を争う訴訟は、資料の収集及び尋問を要しますので、期間及び費用を要します。請求することのできる金額の見込みと比較したうえで判断してください。

引直しの計算における個別の論点

第1に、手数料の取扱いです。仮に実質において貸付けであると認められた場合には、礼金、割引金、手数料、調査料その他いかなる名義をもってするかを問わず、債権者の受ける元本以外の金銭は利息とみなされます(利息制限法第3条本文)。ただし、契約の締結及び債務の弁済の費用は除かれます(同条ただし書)。

第2に、保証金の取扱いです。返還が予定されている場合には、利息とみなされないと解する余地があります。他方で、返還の要件が定められておらず、事実上返還されていない場合には、利息とみなされることが考えられます。

第3に、登記費用の取扱いです。実費として支出されている場合には、契約の締結の費用に当たると解する余地があります。実費を超える部分については、別途の検討を要します。

第4に、取引の一連性です。同一の業者との間で取引が反復している場合において、これを一連の取引として計算するか、個別の取引として計算するかによって、結果が大きく異なります。基本契約が存在し、同一の枠組みのもとで取引が継続している場合には、一連の取引として扱うことが考えられます。

第5に、複数の業者との取引の取扱いです。業者ごとに別個に計算することとなります。合算することはできません。

相手方の主張として想定されるもの

第1に、売買であるという主張です。契約書の文言、譲渡の対象の特定、対抗要件の具備の事実を根拠とすることが想定されます。

第2に、回収不能の危険が譲受人に帰属しているという主張です。買戻しの事由が譲渡人の責めに帰すべき事由に限定されていることを根拠とすることが想定されます。

第3に、売掛先の信用の調査を行っていたという主張です。内部の調査の記録が提出されることがあります。

第4に、譲渡人が事業者であり、内容を理解して契約をしたという主張です。

第5に、消滅時効の主張です。取引が終了してから期間が経過している場合には、これが主要な争点となることがあります。

これらに対しては、運用の実態を示す資料により反論することとなります。契約書の文言のみによって判断されるものではありませんので、実際の資金の流れ、業者との連絡の記録が重要となります。

手続の選択

第1に、任意の協議です。まず請求の書面を送付し、協議を求めます。業者が応じる場合には、早期の解決が可能となります。

第2に、民事調停です。裁判所の関与のもとで協議を行うものです。訴訟に比べて手続が簡易であり、費用も低額です。

第3に、訴訟です。争点が取引の性質に及ぶ場合には、資料の収集及び尋問を要しますので、期間及び費用を要します。

第4に、保全の要否です。業者の資産が散逸するおそれがある場合には、仮差押命令の申立てを検討します(民事保全法第20条第1項)。

第5に、業者が既に解散している場合の取扱いです。清算の状況によっては、請求そのものが困難となります。

訴訟に至った場合の進行の見通し

第1に、訴えの提起から第1回の口頭弁論期日までは、通常1箇月から2箇月を要します。

第2に、争点の整理に数箇月を要します。取引の性質が争点となる場合には、双方から書面が提出され、資料の開示をめぐる協議が行われます。

第3に、文書提出命令の申立てを行う場合には、その審理に更に期間を要します。

第4に、当事者尋問が実施される場合には、更に数箇月を要します。

第5に、和解の勧試が行われることがあります。業者にとっての目的は多くの場合に金銭の回収ですので、和解による解決に至る例は少なくありません。

第6に、判決に至る場合には、全体として1年から2年を要することがあります。費用及び期間と、請求することのできる金額の見込みとを比較したうえで判断してください。

本ページの位置付け

本ページは、ファクタリング業者に対して支払った金銭の返還を求めることを検討している事業者の方に向けて、請求の構成、立証の対象及び手続の進め方を整理したものです。

手数料の水準のみを理由として返還を請求することはできません。実質において金銭の貸付けであることを、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実によって主張し、立証する必要があります。

まず取引の全体を復元し、引直しの計算により見込みを立てることから着手してください。

いま確認していただきたいこと

1 業者ごとに、契約書及び個別契約書の全部を時系列で整理してください。

2 通帳又は取引明細により、買取代金の入金及び業者への送金の全部を書き出してください。

3 手数料、保証金その他の名目で控除された金額を、取引ごとに確認してください。

4 連帯保証、担保の差入れ、債権譲渡登記の有無を確認してください。

5 最後の取引がいつであったかを確認してください。

6 業者が現に存続しているかどうかを、登記事項証明書により確認してください。

よくあるご質問

手数料が高額です。それだけで請求することはできますか。

できません。実質において金銭の貸付けであることを、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実によって主張し、立証する必要があります。

どの程度の金額を請求することができますか。

仮に実質において貸付けであると認められた場合に、利息制限法所定の上限による計算をした場合の残額によります。取引の全体を復元したうえで算出することとなります。

通帳を紛失しました。

金融機関に対して取引明細の発行を求めることができます。もっとも、保存期間を経過している場合には取得することができません。

業者が既に解散しています。

清算の状況によっては、請求することが困難となります。登記事項証明書により状況を確認してください。

現在も取引が続いています。

請求をすることにより、売掛先への通知が送付されることがあります。事業の継続を優先するかどうかを、あらかじめ判断する必要があります。

いつまでに請求すべきでしょうか。

消滅時効に注意を要します。また、資料の保存期間の経過により、取引の全体を復元することが困難となります。早い段階で御相談ください。

おわりに

支払った金銭の返還を求める場合には、まず取引の全体を復元し、引直しの計算により請求することのできる金額の見込みを立てることが出発点となります。

そのうえで、取引の性質を争うことができるかどうかを、契約の内容及び運用の実態に照らして検討します。現に取引が継続している場合には、順序の判断が結果を左右します。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

支払った金銭の返還請求に関する御相談
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受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

御留意事項

本ページの記載は、不当利得の返還請求に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。

また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士に御確認ください。

法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際の御依頼に際しましては、必ず個別に御相談ください。御相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。

出典

  • 民法第90条、第96条第1項、第166条第1項、第703条、第704条
  • 民事訴訟法第221条第1項
  • 利息制限法第1条
  • 貸金業法第2条第1項
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条

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