ファクタリング業者から訴状又は支払督促が届いたとき 書類の種別ごとの期限と初動

ファクタリング業者から、裁判所を通じて書類が届いた。訴状であるのか、支払督促であるのかも判然としない。同封された書面に期日や期限が記載されているが、どうすればよいか分からない。このような御相談を受けることがあります。
裁判所から届く書類には、いずれも応答の期限があります。期限を徒過しますと、内容を争う機会そのものを失い、その後は強制執行の局面へ移行します。
本ページでは、書類の種別ごとの期限と、初動として何を行うべきかを整理します。
書類の種別ごとの見分け方
第1に、訴状です。裁判所から特別送達により送付されます。表紙に事件番号と裁判所名が記載され、口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状が同封されています。答弁書の提出期限は、通常、第1回の口頭弁論期日の1週間前とされています。
第2に、支払督促です。簡易裁判所の書記官が発するものです(民事訴訟法第382条)。送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てなければ、仮執行の宣言がされます(同法第391条第1項、第393条)。仮執行の宣言がされた後は、更に2週間以内に督促異議を申し立てなければ、確定判決と同一の効力を有することとなります(同法第396条)。
第3に、仮差押命令です。債権者の申立てにより、審尋を経ずに発せられることがあります。預金口座、売掛債権が対象とされますと、事業の継続に直ちに影響します。保全異議(民事保全法第26条)又は保全取消し(同法第37条以下)の申立てを検討することとなります。
第4に、債権差押命令です。既に債務名義がある場合に発せられます。判決、仮執行の宣言を付した支払督促、強制執行を受諾する旨の記載のある公正証書が債務名義となります(民事執行法第22条)。
第5に、業者からの内容証明郵便です。裁判所からのものではありませんので、法律上の期限はありません。もっとも、記載された期限を経過しますと、法的手続へ移行することが予告されていることがあります。
応訴の方針を定める際の検討事項
第1に、請求の根拠となる条項の適用の有無です。買戻しの事由、償還の事由が生じているかどうかを、契約書の文言に即して検討します。
第2に、請求されている金額の算定です。元となる金額のほか、損害金、違約金、費用が加算されていることがあります。算定の根拠を明らかにするよう求めることが、応訴の出発点となります。
第3に、損害金及び違約金の水準です。ファクタリングには利息制限法第4条及び第7条の適用がありませんので、法令上の上限はありません。もっとも、著しく過大である場合には、別途の主張の余地を検討することとなります。
第4に、取引の性質です。実質において金銭の貸付けであると主張する場合には、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実の主張及び立証を要します。
第5に、和解の可能性です。業者にとっての目的は多くの場合に金銭の回収ですので、和解による解決に至る例は少なくありません。履行することのできる内容を資料に基づいて提示することが前提となります。
第6に、他の業者との関係です。1つの訴訟における対応が、他の業者に伝わることがあります。全体を把握したうえで方針を定める必要があります。
期限を経過してしまった場合の対応
第1に、答弁書を提出せず、口頭弁論期日にも出頭しなかった場合です。請求の原因となる事実を自白したものとみなされ、請求を認容する判決がされることがあります。判決の送達を受けた日から2週間以内であれば、控訴をすることができます(民事訴訟法第285条)。
第2に、支払督促に対する督促異議の期間を経過した場合です。仮執行の宣言がされた後、更に2週間以内に督促異議を申し立てなければ、確定判決と同一の効力を有することとなります(同法第396条)。仮執行の宣言がされた段階であれば、なお異議を申し立てることができます。
第3に、判決が確定した場合です。請求異議の訴え(民事執行法第35条第1項)による余地がありますが、確定後に生じた事由に限られます。
第4に、強制執行を受けた場合です。差押えの対象が事業に不可欠な財産である場合には、執行の停止を求める余地を検討することとなります。
第5に、いずれの場合においても、期限を経過した後の対応は選択肢が限られます。書類が届いた時点で直ちに御相談ください。
業者の側の意図の読み方
第1に、支払督促の申立ては、費用が低額であり、手続が簡易であることから、まず選択されることが多い手段です。督促異議を申し立てますと、通常の訴訟に移行します。
第2に、仮差押命令の申立ては、資産の保全を目的とするとともに、交渉上の圧力としての意味を有することがあります。
第3に、訴訟の提起は、他の手段によって回収の見込みが立たない場合に選択されます。
第4に、いずれの手続についても、業者にとっての最終的な目的は金銭の回収です。したがって、手続の進行中であっても、和解による解決の余地は残されています。
第5に、手続に対応しないまま放置しますと、判決又は仮執行の宣言により、強制執行を受ける状態となります。必ず対応してください。
本ページの位置付け
本ページは、ファクタリング業者から訴状、支払督促、仮差押命令その他の書類を受け取った事業者の方に向けて、書類の種別ごとの期限と初動を整理したものです。
裁判所からの書類には、いずれも期限が定められています。期限を経過した後の対応は選択肢が限られますので、書類が届いた時点で直ちに確認してください。
期限が迫っている場合には、その旨をお伝えのうえ御相談ください。
まず、書類の名称と日付を確認します
封筒の中の書類の表題を確認してください。名称によって、採るべき手続が異なります。
| 支払督促 | 送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申立てを要します。この期間内に申立てがされないときは、債権者の申立てにより仮執行の宣言が付されます(民事訴訟法第391条第1項)。督促異議の申立てがあれば、通常の訴訟手続に移行します(同法第395条)。 |
| 仮執行宣言付支払督促 | 送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申立てを要します。期間を徒過しますと、確定判決と同一の効力を有することとなります(民事訴訟法第396条)。既に強制執行が可能な状態にあります。 |
| 訴状及び口頭弁論期日呼出状 | 同封の書面に、答弁書の提出期限及び第1回の口頭弁論の期日が記載されています。答弁書を提出せず期日にも出頭しないときは、訴状に記載された事実を争わないものとして扱われることがあります(民事訴訟法第159条第1項、第3項)。 |
| 仮差押命令 | 債務者の意見を聴かずに発令されることがあります。保全異議の申立て(民事保全法第26条)、本案の訴えの提起等を命ずる申立て(同法第37条第1項)、事情の変更による保全取消しの申立て(同法第38条第1項)等の手続があります。解放金の供託による執行の停止も考えられます(同法第22条)。 |
| 債権差押命令 | 売掛金又は預金が差し押さえられている状態です(民事執行法第145条)。売掛先に対して差押命令が送達されますので、取引関係に直接の影響が生じます。 |
期限は、書類を受け取った日から進行します。受け取った日が分かる資料(郵便の受領の記録、封筒)を保管してください。
受け取らなければ期限は進まない、という理解は誤りです
受取りを拒んだ場合であっても、送達の効力が生じることがあります。付郵便送達(民事訴訟法第107条)、公示送達(同法第110条以下)といった方法が定められているためです。
また、書類を受け取らないことにより、こちらの言い分を述べる機会のみが失われるという結果になり得ます。受取りを避けることには、実益がありません。
争う余地があるかどうかは、書類だけでは決まりません
ファクタリング業者が提起する訴訟においては、次の点が争点となることがあります。
- 当該取引が債権の売買であるのか、金銭の貸付けとしての実質を有するのか。後者と評価される場合には、利息制限法第1条の上限を超える部分の無効、年109.5パーセントを超える割合による利息の契約がされている場合の契約全体の無効(貸金業法第42条第1項)が問題となります。
- 契約の内容が公の秩序又は善良の風俗に反しないかどうか(民法第90条)。
- 請求されている金額の算定の根拠。損害金、違約金、清算金の名目で加算されている部分の当否。
- 既に支払った金銭の充当の関係。取引が反復されている場合には、全体の計算を要します。
- 譲渡の対象とされた債権の特定及び実在性。
これらは、契約書と資金の流れを確認して初めて判断することのできる事項です。争う余地の有無を検討する前に期限を徒過しますと、検討の機会そのものが失われます。
初動として行うこと
1 期限を確定します。受領の日を起算点として、督促異議の申立ての期限又は答弁書の提出期限を確定します。
2 書類の全部を保管します。封筒を含め、届いた書類を一式で保管してください。
3 契約書と入出金の記録を集めます。業者ごとに、契約書、計算書、通帳又は取引明細を時系列で整理します。
4 期限内に応答します。争点の検討が間に合わない場合であっても、まず期限内に督促異議の申立て又は答弁書の提出を行い、期日を確保することが必要です。
5 他の債権者との関係を整理します。一の業者からの請求への対応は、他の業者との関係にも影響します。
放置した場合に失われるもの
第1に、判決又は仮執行宣言付支払督促が確定しますと、これに基づく強制執行を受けることとなります。売掛金、預金、動産が執行の対象となります。
第2に、売掛金が差し押さえられますと、売掛先に対して差押命令が送達されます。取引関係に直接の影響が生じます。
第3に、確定した後に争うためには、請求異議の訴え(民事執行法第35条)その他の手続によることとなり、要件も手続も加重されます。
よくあるご質問
支払督促に督促異議を申し立てると、不利になりますか。
督促異議の申立ては、通常の訴訟手続へ移行させるための手続です(民事訴訟法第395条)。移行した後においても、和解による解決を図ることは可能です。
答弁書は自分で作成してもよいのでしょうか。
提出すること自体は可能です。もっとも、当初の答弁書に記載した内容は、その後の主張の前提となります。争点となり得る事項を検討したうえで作成する必要があります。
請求されている金額が契約書と合いません。
算定の根拠を明らかにするよう求めることになります。損害金、違約金、清算金の名目で加算されている部分については、その当否が争点となり得ます。
期日に出頭できない場合はどうすればよいですか。
答弁書を提出せず期日にも出頭しないときは、訴状に記載された事実を争わないものとして扱われることがあります。期日の変更を求めるか、代理人を選任するかを、期限前に判断する必要があります。
既に期限を過ぎてしまいました。もう何もできませんか。
段階によって採り得る手続が異なります。書類を御持参のうえ、速やかに御相談ください。
おわりに
裁判所から届いた書類への対応は、期限を確保することが最初の仕事です。争点の検討は、その後に行うことができます。まず期限を御確認ください。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
訴状、支払督促又は仮差押命令に関する御相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)
御留意事項
本ページの記載は、訴状、支払督促その他の裁判所からの書類への対応に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。
また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士に御確認ください。
法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際の御依頼に際しましては、必ず個別に御相談ください。御相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。
出典
- 民事訴訟法第107条、第110条、第159条第1項及び第3項、第391条第1項、第395条、第396条
- 民事保全法第22条、第26条、第37条第1項、第38条第1項
- 民事執行法第35条、第145条
- 貸金業法第42条第1項
- 利息制限法第1条
- 民法第90条
このページの位置付けと、関連するページ
本ページは、ファクタリングの支払が困難となった場合の対応に関する解説のうちの1つです。全体像は、次の中核となるページを御覧ください。
▶ ファクタリングの返済が困難となったとき 支払の交渉、債権譲渡の通知への対応及び資金繰りの立て直し
同じ主題を扱う関連ページ
- ファクタリングの返済の遅延及び滞納 弁護士に依頼した場合に変わることと変わらないこと
- ファクタリングの分割による支払の交渉 提案の組み立て方と合意書における留意事項
- ファクタリングの支払をすることができないとき 最初の1週間に行うべきことの順序
- ファクタリングの支払を遅滞した場合に生じること 契約上の効果と実務上の流れ
- ファクタリング業者による催促の態様 貸金業法の規律が及ばない場合の対応と記録の方法
- 元請の工事の中断等により入金が得られなくなった場合 法律関係と業者との協議の方法
- 日刊建設工業新聞に当事務所の取扱いが紹介されました 建設業におけるファクタリングの実情と対応
- ファクタリングの分割払い和解交渉の解説動画【動画】
具体的な御相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次の御案内のページに整理しています。あわせて御覧ください。


