ファクタリング業者による催促の態様 貸金業法の規律が及ばない場合の対応と記録の方法

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ファクタリング業者からの催促について、一日に何度も電話が入る、深夜又は早朝に連絡がある、事務所や自宅に来ると告げられた、家族や従業員に連絡が及んでいる、弁護士事務所にまで繰り返し連絡が入るというご相談をお受けしています。

催促の態様については、貸金業を営む者に対する規律と、ファクタリング業者に対する規律とが異なります。この点を正確に理解しておかなければ、採ることのできる手段を誤ります。

本ページでは、催促の態様に関する法律上の枠組み、記録の方法、申入れの方法、及び態様が刑法上の問題となり得る場合を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。

貸金業法の規律が及ばないこと

貸金業法第21条第1項は、貸金業を営む者又は貸金業者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて、人を威迫し、又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない旨を定め、各号において具体的な行為を列挙しています。同項第9号は、債務者が弁護士等に債務処理を委任した旨の通知を受けた後に、正当な理由なく債務者へ支払を請求することを禁じています。

ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

この結果、弁護士が受任した旨を通知したことのみによって、催促が当然に止まるものではありません。この点は、ご相談の際に最も誤解の多い事項です。

もっとも、弁護士が窓口となることにより、連絡を一本化し、協議の場を整えることはできます。また、態様が刑法上の問題となり得る場合には、別途の対応が可能です。

態様が刑法上の問題となり得る場合

脅迫罪 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合に成立します(刑法第222条第1項)。
強要罪 脅迫又は暴行を用いて、義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合に成立します(同法第223条第1項)。
住居侵入罪 正当な理由がないのに人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった場合に成立します(同法第130条)。
威力業務妨害罪 威力を用いて人の業務を妨害した場合に成立します(同法第234条)。
名誉毀損罪 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立します(同法第230条第1項)。取引先その他の第三者に対する言動が問題となり得ます。

これらが成立するかどうかは、言動の具体的な内容、状況、頻度によって判断されます。単に強い口調で支払を求めることのみによって、直ちに犯罪が成立するものではありません。

記録の方法

第1に、着信の履歴を保存してください。日時と回数が分かるように、画面の写しを保存することが確実です。

第2に、通話の内容を録音してください。ご自身が当事者となっている通話について、その内容を録音することは、通常、法令に違反するものではありません。

第3に、通信アプリケーションの履歴を保全してください。機種の変更、保存期間の経過により参照することができなくなることがありますので、画面の写しを保存してください。

第4に、訪問を受けた場合には、日時、人数、氏名、言動の内容を、その日のうちに書き留めてください。

第5に、家族、従業員、取引先に連絡があった場合には、その日時、相手方、伝えられた内容を記録してください。

記録は、申入れの根拠となるとともに、後に刑事上の手続を検討する場合の資料となります。

申入れの方法

第1に、連絡の窓口を一本化する旨を書面により通知します。以後の連絡を弁護士が受ける旨を明らかにします。前述のとおり、これにより当然に催促が止まるものではありませんが、態様を記録する基礎となります。

第2に、態様に問題がある場合には、具体的な事実を摘示したうえで、中止を申し入れます。抽象的な申入れでは効果がありません。日時、方法、内容を特定して申し入れます。

第3に、勤務先、家族、取引先への連絡については、これらの者が契約の当事者でないことを明らかにしたうえで、中止を申し入れます。

第4に、それでも改まらない場合には、刑事上の手続を検討することとなります。もっとも、これを検討する場合には、記録が整っていることが前提となります。

第5に、並行して、支払の方法についての協議を進めます。催促の目的は金銭の回収ですので、履行することのできる内容が示されることが、態様の改善につながる例が少なくありません。

弁護士事務所に対する連絡について

弁護士が受任した後においても、業者から弁護士事務所に対して連絡が繰り返されることがあります。これは、貸金業法の規律が及ばないことによるものです。

もっとも、弁護士が窓口となることにより、経営者の方が直接に応答する必要はなくなります。連絡の内容は記録され、協議の材料となります。

また、業務の遂行を妨げる態様に至る場合には、威力業務妨害罪(刑法第234条)の成否が問題となり得ます。

記録の様式と保存の方法

第1に、連絡の記録表を作成してください。日時、方法(電話、訪問、電子メール、通信アプリケーション)、相手方の氏名、内容の要旨を、その日のうちに記載します。記憶が薄れた後に作成した記録は、正確性を欠きます。

第2に、着信の履歴の画面の写しを保存してください。日時と回数が分かるように保存します。

第3に、通話の録音を保存してください。日付ごとに整理し、内容の要旨を併記しておくと、後の利用が容易になります。

第4に、通信アプリケーションの履歴を保存してください。機種の変更、保存期間の経過により参照することができなくなることがあります。

第5に、訪問を受けた場合には、日時、人数、氏名、言動の内容を記載してください。目撃した従業員がいる場合には、その氏名も記載します。

第6に、家族、従業員、取引先に連絡があった場合には、その相手方から聴取した内容を記載してください。

申入れの書面の記載事項

第1に、当事務所が受任した旨と、以後の連絡の窓口を明示します。

第2に、問題とする態様を、日時、方法、内容により特定します。抽象的な申入れでは効果がありません。

第3に、当該態様が法律上いかなる問題を生じ得るかを指摘します。貸金業法の規律が及ばないことを前提としたうえで、刑法上の問題を指摘することとなります。

第4に、中止を求める内容を明示します。時間帯の制限、訪問の中止、第三者への連絡の中止といった形で、具体的に記載します。

第5に、応じない場合の対応を明示します。記録を保全していること、刑事上の手続を検討する余地があることを述べます。

第6に、支払の方法についての協議に応じる姿勢を併せて示します。催促の目的は金銭の回収ですので、協議の余地を示すことが、態様の改善につながります。

従業員及び家族に対する説明

第1に、事実を伏せないでください。連絡が及んでいる以上、事情を説明しなければ、憶測により不安が広がります。

第2に、対応の方針を説明してください。弁護士が窓口となっていること、応答する必要がないことを伝えます。

第3に、連絡があった場合の対応を統一してください。当事務所へ連絡するよう伝える、という対応で足ります。

第4に、記録を求めてください。日時、相手方、内容を書き留めるよう依頼します。

第5に、不安が強い場合には、当事務所から直接に説明することもいたします。

刑事上の手続を検討する場合の手順

第1に、記録を整理してください。日時、方法、相手方、内容を特定した一覧を作成します。

第2に、いずれの罪に当たり得るかを検討してください。脅迫罪(刑法第222条第1項)、強要罪(同法第223条第1項)、住居侵入罪(同法第130条)、威力業務妨害罪(同法第234条)が主として問題となります。

第3に、被害の届出又は告訴を検討してください。告訴は、書面又は口頭により検察官又は司法警察員に対して行います(刑事訴訟法第241条第1項)。

第4に、民事上の交渉との関係を検討してください。刑事上の手続を進めることにより、支払の方法についての協議が困難となることがあります。

第5に、いずれにしても、記録が整っていることが前提となります。まず記録の保全から着手してください。

本ページの位置付け

本ページは、ファクタリング業者からの催促の態様についてお困りの事業者の方に向けて、法律上の枠組み、記録の方法及び申入れの方法を整理したものです。

催促の態様に関しては、貸金業法の規律が及ばないという点を正確に理解しておく必要があります。そのうえで、記録を積み上げ、具体的な事実を摘示して申し入れるという方法によることとなります。

あわせて、支払の方法についての協議を進めることが、結果として最も有効な対応です。

いま確認していただきたいこと

1 着信の履歴、通話の録音、通信アプリケーションの履歴を保全してください。

2 訪問を受けた場合には、日時、人数、氏名、言動の内容を記録してください。

3 家族、従業員、取引先への連絡の有無を確認してください。

4 契約書における連絡の方法に関する定めを確認してください。

5 業者の商号、所在地及び代表者を、登記事項証明書により確認してください。

6 支払の方法についての提案を、資金繰りの見込みに基づいて準備してください。

よくあるご質問

弁護士に依頼すれば催促は止まりますか。

止まりません。ファクタリングには貸金業法第21条第1項第9号の適用がありませんので、通知により当然に催促が止まるものではありません。もっとも、弁護士が窓口となることにより、協議の場を整えることはできます。

深夜に電話が来ます。違法ではありませんか。

貸金業法第21条第1項第1号は、貸金業を営む者について、正当な理由がないのに社会通念に照らし不適当と認められる時間帯に電話をかけることを禁じていますが、ファクタリング業者はこの規律の対象ではありません。もっとも、態様によっては刑法上の問題が生じ得ますので、記録を保全してください。

取引先に連絡すると言われました。

債権譲渡の通知は譲受人の権利の行使ですので、これを妨げる法律上の根拠は原則として存在しません。他方で、契約の内容と異なる事実を伝える場合には、別途の問題が生じ得ます。

家族に連絡が来ています。

家族が契約の当事者でも保証人でもない場合には、その旨を明らかにしたうえで中止を申し入れます。記録を保全してください。

録音してもよいのでしょうか。

ご自身が当事者となっている通話について録音することは、通常、法令に違反するものではありません。利用の方法については、あらかじめご相談ください。

警察に相談することはできますか。

態様が刑法上の問題となり得る場合には、相談することができます。もっとも、記録が整っていることが前提となります。

おわりに

催促の態様に関しては、貸金業法の規律が及ばないという点を正確に理解しておく必要があります。そのうえで、記録を積み上げ、具体的な事実を摘示して申し入れるという方法によることとなります。

あわせて、支払の方法についての協議を進めることが、結果として最も有効な対応です。催促の目的は金銭の回収ですので、履行することのできる内容が示されることが、態様の改善につながります。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

催促の態様に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

ご留意事項

本ページの記載は、催促の態様に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。

また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。

法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。

出典

  • 刑法第130条、第222条第1項、第223条第1項、第230条第1項、第234条
  • 貸金業法第2条第1項、第21条第1項
  • 利息制限法第1条
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条

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