ファクタリングの返済が困難となったとき 支払の交渉、債権譲渡の通知への対応及び資金繰りの立て直し

砂時計と一万円札

ファクタリングの返済期日が迫っているにもかかわらず、支払に充てる資金の見込みが立たない。業者からの連絡が日に何度も入る。取引先に債権譲渡の通知を送ると告げられている。このようなご相談を、当事務所は数多くお受けしています。

この局面では、業者との交渉、売掛先との取引関係の維持、資金繰りの立て直しという性質の異なる問題が同時に進行します。いずれか1つだけに対応していますと、他の問題が手遅れになります。順序を定めることが、最初に必要な作業です。

本ページでは、ファクタリングの返済が困難となった場合に採り得る手段と、その前提となる法律上の枠組みを整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。

ファクタリングの返済が困難となる仕組み

ファクタリングは、事業者が有する売掛債権を業者へ譲渡し、支払期日の前に資金を得る取引です。譲渡の対価は、売掛債権の額面から手数料を控除した金額となります。

2社間ファクタリングにおいては、譲渡人である事業者が売掛先から売掛金を回収し、これを業者へ引き渡す取扱いが一般です。したがって、売掛先からの入金が遅れた場合、又は入金された資金を他の支払に充ててしまった場合には、業者への引渡しが滞ります。

また、手数料の負担は、取引を繰り返すたびに累積します。1回の取引の手数料が売掛債権の額面の10パーセントであるとしますと、支払期日までの期間が1箇月である場合、年率に引き直した負担は120パーセントに相当します。この負担を運転資金から捻出することは、多くの事業者にとって困難です。その結果、次の売掛債権を譲渡して前回の引渡しに充てるという循環が生じ、負担が加速度的に増大します。

この局面で同時に進行する4つの問題

業者との関係 買戻し、償還請求、損害金、違約金に関する条項に基づく請求がされます。契約書の定めを確認したうえで、請求額の算定の根拠を求める必要があります。
売掛先との関係 債権譲渡の通知(民法第467条第1項)が送付されますと、売掛先は取引の継続を再考します。売掛先を失いますと、資金繰りの再建そのものが困難になります。
資金繰り 複数の業者との間で資金が循環している場合には、全体を把握したうえで、私的整理、民事再生その他の手続の要否を検討する必要があります。
刑事上の問題 譲渡の対象とした債権の内容に事実と異なる部分がある場合、又は回収した資金を引き渡していない場合には、詐欺罪(刑法第246条)、横領罪(同法第252条)等の成否が問題となります。

この4つは、進行する速さが異なります。売掛先への通知は数日のうちに送付されることがある一方で、資金繰りの立て直しには数箇月を要します。したがって、まず時間の余裕がない問題から着手し、並行して時間を要する問題の準備を進めることになります。

貸金業法、利息制限法及び出資法の適用について

ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

なお、いわゆる給与ファクタリングについては、最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)が、貸金業法第2条第1項及び出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たる旨を判示しています。もっとも、これは、賃金は直接労働者に支払わなければならないものとされていること(労働基準法第24条第1項)から、譲受人が使用者に対して直接に支払を求めることが予定されていないという、給与債権に特有の事情を前提とする判断です。事業者が有する売掛債権を対象とする事業者向けのファクタリングとは事案を異にしますので、この判断がそのまま及ぶものではありません。

したがって、手数料の水準のみを根拠として過払金の返還を請求することはできません。実質において貸付けと同視すべきであると主張する場合には、譲渡人が回収の責任を負う仕組みとなっているかどうか、売掛先の信用の調査がされているかどうか、買戻しが事実上強制されているかどうかといった、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実を主張し、立証する必要があります。

採り得る手段

連絡の窓口の一本化 弁護士が受任した旨を通知し、以後の連絡を当事務所が受けます。もっとも、貸金業法第21条第1項第9号の適用はありませんので、通知により当然に連絡が止まるものではありません。
支払の方法に関する交渉 分割による支払、支払の猶予、精算の方法について協議します。資料に基づいて履行することのできる内容を提示します。業者が応じる義務はありません。
売掛先への通知に関する交渉 通知の送付の回避、延期又は撤回に向けて交渉します。通知は譲受人の権利の行使でもありますので、結果を保証することはできません。
契約内容の精査 買戻し、償還請求、損害金、違約金に関する条項を確認し、請求されている金額の算定の根拠を求めます。
他の業者との関係の整理 複数の業者と取引がある場合には、資金の流れの全体を把握したうえで、対応の順序を定めます。
資金繰りの立て直し 事業の継続が困難である場合には、私的整理、民事再生、特別清算、破産その他の手続を検討します。

この場面で避けていただきたい対応

第1に、その場で履行することのできない金額を述べることです。口頭で述べた金額と期日は、後の協議において前提として扱われます。履行することができなければ、以後の提案が信用されなくなります。

第2に、内容を確認しないまま新たな書面に署名することです。催促の場で示された合意書、又は公正証書の作成に関する委任状に署名しますと、直ちに強制執行を受ける状態となることがあります。

第3に、連絡を絶つことです。連絡が取れない状態が続きますと、売掛先に対する債権譲渡の通知が送付されることがあります。窓口を設けたうえで応答する方が、結果として穏当に進みます。

第4に、事実と異なる資料を提出することです。譲渡の対象とする債権の内容について事実と異なる資料を提出しますと、民事上の責任にとどまらず、刑事上の責任が問題となります。

第5に、記録を残さない形でやり取りを重ねることです。着信の履歴、通信アプリケーションの履歴及び録音は、後に事実関係が争われた場合の資料となります。削除しないでください。

当事務所にお寄せいただくご相談の類型

第1の類型は、支払期日の直前に至って初めてご相談をいただくものです。売掛先からの入金が予定より遅れ、当日の朝になって不足が判明したという事案が典型です。この類型においては、まず業者への連絡と、その日のうちに支払うことのできる金額の確定が中心となります。事後の説明よりも、期日の当日に連絡があったという事実が、その後の協議の基礎となります。

第2の類型は、複数の業者との間で資金が循環している状態に至ってご相談をいただくものです。3社から5社との取引に至り、毎月の支払の順序を組み替えて何とか維持しているという事案です。この類型においては、業者ごとの残額、支払期日、担保の有無、通知の有無を一覧にすることが最初の作業となります。この一覧を作成しないまま個別の業者と協議しますと、他の業者との関係で履行することができない約束をしてしまいます。

第3の類型は、既に売掛先に対する債権譲渡の通知が送付された後にご相談をいただくものです。この段階においては、取引を維持することができるかどうかが最大の争点となります。売掛先に対する説明の内容及び順序を整えることにより、取引が維持された例があります。他方で、主要な売掛先を失った場合には、資金繰りの再建の前提が失われますので、事業の整理を含めて検討することとなります。

第4の類型は、譲渡した債権の内容に事実と異なる部分があり、業者から刑事告訴を予告されている事案です。この類型においては、民事上の責任、刑事上の責任、売掛先との関係、資金繰りの4つが同時に進行しますので、順序を定めることが特に重要となります。

ご依頼をいただいた場合の進め方

第1に、初回のご相談において、事実関係と資料の状況を確認します。資料がそろっていない場合であっても、何を集めるべきかをご案内いたします。

第2に、業者ごとの一覧と、今後3箇月の資金繰りの見込みを作成します。この2つの資料が、その後のすべての協議の基礎となります。

第3に、目指す到達点と優先順位を定めます。事業の継続を優先するのか、既に生じた負担を争うことを優先するのかによって、採るべき手段が異なります。

第4に、見込みと弁護士費用を書面でお示しします。結果を保証することはいたしません。できないことをできると申し上げることもいたしません。

第5に、連絡の窓口を設定したうえで、支払の方法及び売掛先への通知について協議を進めます。協議が調わない場合には、法的手続へ移行します。

いま確認していただきたいこと

1 業者ごとに、債権譲渡契約書、基本契約書及び個別契約書の全部を時系列で整理してください。

2 業者へ提出した資料の控えを、提出の日付とともに整理してください。

3 通帳又は取引明細により、債権買取代金の入金及び業者への送金の記録を確認してください。

4 売掛先に対する債権譲渡の通知の有無、及び債権譲渡登記の有無を確認してください。

5 業者の担当者との連絡の記録を保全してください。

6 今後3箇月の資金繰りの見込みを、売掛先ごとの入金予定と支払予定に分けて書き出してください。

よくあるご質問

弁護士に依頼すれば、業者からの連絡は止まりますか。

ファクタリングは売掛債権の売買であり、貸金業法第21条第1項第9号の適用はありませんので、受任の通知により当然に連絡が止まるものではありません。もっとも、弁護士が窓口となることにより、協議の場を整えることはできます。

分割による支払に応じてもらうことはできますか。

業者に応じる義務はありませんので、結果を保証することはできません。もっとも、業者にとっての目的は多くの場合に金銭の回収ですので、履行することのできる内容を資料に基づいて提示することにより、協議が調う例があります。

売掛先に知られずに解決することはできますか。

通知が送付されていない段階であれば、送付の回避又は延期に向けた協議の余地があります。既に送付されている場合には、売掛先に対する説明の方法を検討することになります。

手数料が高額ですので、過払金の返還を請求することはできますか。

ファクタリングには利息制限法及び出資法の適用がありませんので、手数料の水準のみを理由として過払金の返還を請求することはできません。実質において貸付けと同視すべきであると主張する場合には、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実の主張及び立証を要します。

複数の業者から請求を受けています。どこから手を付けるべきでしょうか。

事実関係の整理を先行させることが、結果として最も早い解決につながります。順序を定めずに個別に応答しますと、全体の収拾が困難になります。

資料が手元にそろっていませんが、相談することはできますか。

できます。何を集めるべきかをご案内することも、ご相談の内容に含まれます。

おわりに

ファクタリングの返済が困難となった局面では、業者との交渉、売掛先との取引関係、資金繰り及び刑事上の問題が同時に進行します。いずれの問題も、確認することのできる事実を積み上げ、優先順位を定めて対応することにより、道筋を付けることができます。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

ファクタリングの返済が困難な場合のご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

出典

  • 民法第467条第1項
  • 刑法第246条、第252条
  • 貸金業法第2条第1項、第21条第1項第9号
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第3項
  • 労働基準法第24条第1項
  • 最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)

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