ファクタリングの支払をすることができないとき 最初の1週間に行うべきことの順序

考え込むスーツ姿の男性

ファクタリングの支払期日が明日に迫っているにもかかわらず、資金の見込みが立たない。今日が期日であるが、売掛先からの入金が間に合わない。このようなご相談を、当事務所は数多くお受けしています。

この局面では、何を先にすべきかという順序が結果を左右します。誤った順序で動きますと、売掛先を失い、資金繰りの再建そのものが困難となります。

本ページでは、支払をすることができないことが判明した時点から最初の1週間に行うべきことを、順を追って整理します。

第1日 事実の確定

まず、不足する金額と、その理由を確定します。売掛先からの入金の遅れによるものか、他の支払に充ててしまったことによるものか、そもそも当初から不足していたのかによって、その後の説明が異なります。

次に、業者ごとの支払期日と金額を一覧にします。複数の業者と取引がある場合には、期日の順序を誤ると全体が崩れます。

あわせて、契約書における期限の利益の喪失、買戻し、償還請求、損害金及び違約金に関する条項を確認します。遅滞によって請求される金額がどの程度増加するかを、あらかじめ把握してください。

第2日 業者への連絡

連絡を絶つことは、最も避けるべき対応です。連絡が取れない状態が続きますと、業者は回収の手段として、売掛先に対する債権譲渡の通知の送付を選択します。

連絡に際しては、次の事項を伝えてください。第1に、期日に支払をすることができないという事実です。第2に、その理由です。第3に、入金の見込みとその時期です。第4に、現時点で支払うことのできる金額です。

この段階で、履行することのできない金額を述べないでください。口頭で述べた金額と期日は、後の協議において前提として扱われます。履行することができなければ、以後の提案が信用されなくなります。

第3日から第4日 資金繰りの見込みの作成

今後3箇月について、売掛先ごとの入金の予定と、支払の予定を日単位で書き出します。人件費、仕入代金、公租公課その他の事業の継続に不可欠な支払を確保したうえで、残余を業者への支払の原資とします。

この作業を経ずに提案をしますと、履行することのできない内容となります。業者は、提案の内容そのものよりも、それが資料により裏付けられているかどうかを見ています。

第5日 書面による提案

金額、期日、回数及び前提となる資料を書面に記載して提示します。口頭による提案は、内容が正確に伝わらず、また後に食い違いを生じます。

複数の業者と取引がある場合には、配分を定めたうえで、それぞれに提示します。1つの業者にのみ支払をしますと、他の業者との関係が悪化し、全体の収拾が困難になります。

第6日から第7日 書面の確認と署名の判断

業者から合意書の案が提示された場合には、署名の前に次の点を確認してください。

1 支払の総額と内訳。損害金、違約金、費用が加算されているかどうか。

2 期限の利益の喪失に関する条項。1回の遅滞で全額の請求を受けることとなるかどうか。

3 債権譲渡の通知に関する定め。履行されている間は送付しない旨を明記することができるかどうか。

4 連帯保証及び担保に関する定め。新たな負担が求められていないかどうか。

5 公正証書の作成に関する定め。強制執行を受諾する旨の記載のある公正証書が作成されますと、判決を得ることなく強制執行を受ける状態となります(民事執行法第22条第5号)。

この局面で避けていただきたい対応

第1に、他の業者から新たに資金を得て支払に充てることです。手数料が累積し、負担は加速度的に増大します。

第2に、事実と異なる資料を提出することです。実在しない債権を譲渡し、又は金額を過大に記載した資料を提出した場合には、詐欺罪(刑法第246条)、私文書偽造罪及び同行使罪(同法第159条、第161条)の成否が問題となります。

第3に、売掛先から回収した資金を他の支払に充てることです。分別して管理すべき旨が定められている場合には、横領罪(同法第252条)の成否が問題となります。

第4に、連絡を絶つことです。通知の送付を早めます。

第5に、記録を残さない形でやり取りを重ねることです。着信の履歴、通信アプリケーションの履歴及び録音を保全してください。

法令の適用に関する前提

ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

また、貸金業法第21条第1項第9号の適用はありませんので、弁護士が受任した旨を通知したことにより、当然に催促が止まるものではありません。もっとも、弁護士が窓口となることにより、協議の場を整えることはできます。

業者へ連絡する際の具体的な伝え方

第1に、期日に支払をすることができないという事実を、最初に述べてください。前置きを重ねますと、事実が正確に伝わりません。

第2に、理由を述べてください。売掛先からの入金の遅れによるものか、他の支払に充ててしまったことによるものかによって、業者の側の受け止め方が異なります。事実と異なる理由を述べますと、後に判明した場合に信用を失います。

第3に、入金の見込みとその時期を述べてください。根拠となる資料を併せて示すことができれば、より確実です。

第4に、現時点で支払うことのできる金額を述べてください。この金額は、確実に支払うことのできる水準としてください。

第5に、次の連絡の時期を約束してください。連絡の予定を示すことにより、業者の側の不安が軽減されます。

第6に、履行することのできない金額を述べないでください。その場をしのぐために過大な金額を述べますと、履行することができなかった時点で、以後の提案が信用されなくなります。

期日の当日における現実的な選択肢

第1に、一部の支払をすることです。全額を支払うことができない場合であっても、一部を支払うことにより、協議の姿勢を示すことができます。もっとも、一部の支払により通知の送付が留保されることが保証されるものではありません。

第2に、期日の延期を求めることです。入金の見込みが確実である場合には、その資料を示したうえで、短期間の延期を求めることが考えられます。

第3に、分割による支払を提案することです。もっとも、この日のうちに提案を組み立てることは困難ですので、まず連絡をしたうえで、数日中に書面により提案することとなります。

第4に、他の業者から資金を得て支払に充てないことです。手数料が累積し、負担は加速度的に増大します。

第5に、事実と異なる資料を提出しないことです。刑事上の責任が問題となります。

翌週以降の作業の進め方

第1に、業者ごとの一覧を作成します。残額、支払期日、担保の有無、通知の有無を記載します。

第2に、資金繰りの見込みを日単位で作成します。人件費、仕入代金、公租公課その他の事業の継続に不可欠な支払を確保したうえで、残余を業者への支払の原資とします。

第3に、業者ごとの配分を定めます。1つの業者にのみ支払をしますと、他の業者との関係が悪化します。

第4に、書面により提案します。金額、期日、回数及び前提となる資料を記載します。

第5に、履行の状況を報告します。資金繰りに変動が生じた場合には、期日の前に報告してください。

第6に、資金繰りの構造そのものを見直します。当初の不足の原因が解消されない限り、同じ問題が繰り返されます。

第2週以降の見通し

第1に、協議が調う場合には、合意書が作成されます。署名の前に、支払の総額と内訳、期限の利益の喪失の事由、債権譲渡の通知に関する定め、新たな担保及び保証の有無を確認してください。

第2に、協議が調わない場合には、売掛先に対する債権譲渡の通知が送付される可能性が高まります。売掛先に対する説明の準備を並行して進めてください。

第3に、業者が法的手続に着手した場合には、答弁の期限、督促異議の期限が短いため、書類が届いた時点で直ちに確認してください。

第4に、複数の業者と取引がある場合には、他の業者の期日が順次到来します。全体の配分を定めたうえで進める必要があります。

第5に、資金繰りの構造そのものを是正しなければ、同じ問題が繰り返されます。当初の不足の原因の解消を、並行して検討してください。

本ページの位置付け

本ページは、ファクタリングの支払期日に支払をすることができないことが判明した事業者の方に向けて、最初の1週間に行うべきことの順序を整理したものです。

この局面では、何を先にすべきかという順序が結果を左右します。誤った順序で動きますと、売掛先を失い、資金繰りの再建そのものが困難となります。

事実の確定、業者への連絡、資金繰りの見込みの作成、書面による提案という順序で進めてください。

いま確認していただきたいこと

1 業者ごとの支払期日、金額及び残額を一覧にしてください。

2 契約書における期限の利益の喪失、損害金及び違約金に関する条項を確認してください。

3 今後3箇月の資金繰りを、日単位で作成してください。

4 売掛先に対する債権譲渡の通知の有無、及び債権譲渡登記の有無を確認してください。

5 業者との連絡の記録を保全してください。

6 主要な売掛先との取引が継続しているかどうかを確認してください。

よくあるご質問

期日に少しでも支払えば、通知は送られませんか。

一部の支払により送付が留保されることはありますが、保証されるものではありません。金額のみならず、その後の見込みを説明することが必要です。

今日が期日です。まず何をすべきでしょうか。

業者へ連絡し、期日に支払をすることができないという事実、理由、入金の見込み及び現時点で支払うことのできる金額を伝えてください。そのうえで、資金繰りの見込みの作成に着手してください。

連絡をしたら、かえって強く求められるのではありませんか。

連絡を絶つ場合には、売掛先への通知が選択されやすくなります。窓口を設けたうえで応答する方が、結果として穏当に進みます。

他の業者から資金を得て支払うことは避けるべきでしょうか。

手数料が累積し、負担は加速度的に増大します。一時的に期日を越えることができても、次の期日はより困難となります。

弁護士に依頼した場合、いつから対応してもらえますか。

事実関係と資料の状況を確認したうえで、方針を定めることとなります。期日が迫っている場合には、その旨をお伝えください。

資料がそろっていませんが、相談することはできますか。

できます。何を集めるべきかをご案内することも、ご相談の内容に含まれます。

おわりに

支払をすることができないことが判明した局面では、事実の確定、業者への連絡、資金繰りの見込みの作成、書面による提案という順序で進めることが、結果として最も早い解決につながります。

この順序を誤り、その場をしのぐ対応を重ねますと、選択肢は日々失われます。売掛先への通知がされる前の段階が、最も選択肢の広い局面です。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

ファクタリングの支払ができない場合のご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

ご留意事項

本ページの記載は、ファクタリングの支払をすることができない場合の対応に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。

また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。

法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。

出典

  • 民法第412条、第467条第1項
  • 民事執行法第22条第5号
  • 刑法第159条、第161条、第246条、第252条
  • 貸金業法第2条第1項、第21条第1項第9号
  • 利息制限法第1条
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条

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