ファクタリングの支払を遅滞した場合に生じること 契約上の効果と実務上の流れ

下降する矢印と積み上げられた硬貨

この記事の位置付け

支払が困難となった場面の対応は、交渉により資金繰りを立て直す場面と、訴訟その他の法的手続へ応じる場面とに分かれますので、次のとおり切り分けます。本ページは、遅滞により生じる契約上の効果と実務上の流れを扱います。

▶ ファクタリングの返済が困難となったとき 支払の交渉、債権譲渡の通知への対応及び資金繰りの立て直し

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ファクタリングの支払を遅滞した場合に、どのようなことが起こるのかというご質問をいただきます。契約書に記載された条項の意味が分からない、業者から示された金額の根拠が分からないというご相談も数多くお受けしています。

本ページでは、遅滞により生じる契約上の効果と、実務上の流れを、時間の経過に沿って整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。

遅滞により生じる契約上の効果

期限の利益の喪失 一定の事由が生じた場合に、直ちに全額の支払を求めることができる旨が定められていることが一般です。1回の遅滞で全額の請求を受けることとなる例があります。
買戻しの義務 譲渡した売掛債権を買い戻す義務が定められていることがあります。買戻しの価格は、譲渡の対価に一定の金額を加算したものとされることがあります。
償還の義務 売掛先が支払をしない場合に、譲受人に対して償還する義務が定められていることがあります。
損害金 遅滞した期間に応じて損害金が加算されます。水準は契約により異なります。
違約金 一定の事由が生じた場合に、定額の違約金が定められていることがあります。
債権譲渡の通知 契約に定められた要件を満たす場合に、売掛先に対して通知を送付することができる旨が定められています。
債権譲渡登記 登記の申請、又は既に留保されている登記の実行がされることがあります。

請求されている金額に疑義がある場合には、その算定の根拠を書面により求めてください。契約書のどの条項に基づき、どの期間について、どの利率により算定されたのかが示されなければ、協議の前提が定まりません。

実務上の流れ

期日の当日から数日

業者から電話又は電子メールにより連絡が入ります。この段階では、事情の確認と、支払の見込みの確認が中心です。応答することが重要です。

数日から2週間

連絡の頻度が高くなります。書面による請求がされることがあります。売掛先への通知を送付する旨の予告がされることがあります。

この段階までに、資金繰りの見込みを作成し、履行することのできる提案を書面により提示することが望まれます。

2週間から1箇月

協議が調わない場合には、売掛先に対する債権譲渡の通知が送付されることがあります。通知は内容証明郵便によることが一般です(民法第467条第2項)。

また、代表者個人の連帯保証がある場合には、個人に対する請求がされます。

1箇月以降

訴訟の提起、支払督促の申立て、仮差押命令の申立てがされることがあります。訴状が届いた場合の答弁の期限、支払督促に対する督促異議の期限は短いため、書類が届いた時点で直ちに確認する必要があります。

また、譲渡の対象とした債権の内容に事実と異なる部分がある場合、又は回収した資金を引き渡していない場合には、刑事告訴が予告されることがあります。

この局面で問題となり得る刑事上の責任

単に支払をすることができないという事実のみによって、直ちに犯罪が成立するものではありません。問題となるのは、次の場合です。

第1に、実在しない債権を譲渡し、又は金額を過大に記載した資料を提出して資金を得た場合です。詐欺罪(刑法第246条)、私文書偽造罪及び同行使罪(同法第159条、第161条)の成否が問題となります。

第2に、同一の債権を複数の業者へ譲渡した場合です。事実を秘して譲渡した場合には、詐欺罪の成否が問題となります。

第3に、売掛先から回収した資金を、分別して管理すべき旨が定められているにもかかわらず他の支払に充てた場合です。横領罪(同法第252条)又は業務上横領罪(同法第253条)の成否が問題となります。

これらに心当たりがある場合には、業者が刑事告訴を行う前の段階が、最も選択肢の広い局面です。被害の回復に関する事情は、検察官が公訴を提起するかどうかを判断するに当たって考慮される事情の1つとされています(刑事訴訟法第248条)。

法令の適用に関する前提

ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

損害金及び違約金の水準についても、利息制限法第4条及び第7条の適用はありません。もっとも、著しく過大である場合には、民法第90条による無効、又は損害賠償の額の予定に関する主張の余地を検討することとなります。

請求されている金額の検証の方法

第1に、元となる金額を確認します。譲渡の対価として実際に受領した金額か、売掛債権の額面の金額かによって、大きく異なります。

第2に、既に支払った金額を控除します。通帳の記録により、業者へ送金した金額の全部を書き出し、請求書における控除と一致しているかどうかを確認します。

第3に、損害金の算定を確認します。起算日、利率、計算の期間を確認してください。契約書に定められた利率と一致しているかどうかを照合します。

第4に、違約金の有無を確認します。定額の違約金が定められている場合には、その事由が生じているかどうかを確認してください。

第5に、費用の内訳を確認します。督促に要した費用、弁護士費用が加算されている場合には、契約書における定めの有無を確認してください。

第6に、複数の取引がある場合には、取引ごとに区分して確認します。一括して請求されている場合には、内訳の開示を求めてください。

業者の側の内部の判断

業者は、遅滞が生じた場合において、次の点を検討しています。この点を理解しておくことは、協議の方針を定める際に有用です。

第1に、回収の見込みです。譲渡人の事業が継続しており、将来の売掛債権から回収が可能である場合には、直ちに強い手段を採ることは、かえって回収の総額を減少させます。

第2に、売掛先の状況です。売掛先が支払能力を有する場合には、債権譲渡の通知により確実に回収することができます。他方で、通知により譲渡人の事業が停止しますと、他の債権について回収が困難となります。

第3に、他の債権者の動向です。他の業者が先に通知を送付し、又は法的手続に着手した場合には、これに遅れることは不利となります。

第4に、費用と回収額の比較です。訴訟の提起、仮差押命令の申立てには費用を要します。回収の見込みが小さい場合には、これらの手段は選択されません。

第5に、譲渡人の対応です。連絡に応答し、資料に基づいて履行することのできる内容を提示している場合には、協議による解決が選択されやすくなります。

協議を有利に進めるための準備

第1に、資金繰りの見込みを日単位で作成してください。この資料がなければ、いかなる提案も裏付けを欠きます。

第2に、業者ごとの一覧を作成してください。他の業者との関係で履行することができない約束を避けるためです。

第3に、主要な売掛先との取引の状況を整理してください。取引が継続していることは、将来の回収の原資が存在することを示します。

第4に、履行することのできる金額を、確実に支払うことのできる水準で算出してください。過大な提案は、履行されなかった場合に信用を失わせます。

第5に、書面により提示してください。口頭による提案は、内容が正確に伝わらず、また後に食い違いを生じます。

遅滞が生じた後の時間の使い方

第1に、最初の3日間は、事実の確定と業者への連絡に充ててください。不足する金額と理由を確定し、業者へ連絡します。

第2に、次の4日間は、資金繰りの見込みの作成に充ててください。今後3箇月について、日単位で作成します。

第3に、2週目には、書面による提案を行ってください。金額、期日、回数を明示します。

第4に、3週目以降は、協議の経過に応じて対応します。協議が調わない場合には、売掛先に対する説明の準備を進めます。

第5に、1箇月を経過しますと、法的手続に移行する可能性が高まります。この段階までに方針を確定しておく必要があります。

第6に、いずれの段階においても、連絡を絶たないでください。連絡が取れない状態が続きますと、業者は回収の手段として売掛先に対する債権譲渡の通知を選択します。

本ページの位置付け

本ページは、ファクタリングの支払を遅滞した事業者の方に向けて、契約上の効果と実務上の流れを整理したものです。

遅滞により生じる効果は、契約書の条項によって定まります。まず条項を確認し、請求されている金額の根拠を求めることが出発点となります。

時間の経過とともに選択肢は狭まりますので、早い段階でご相談ください。

いま確認していただきたいこと

1 契約書における期限の利益の喪失、買戻し、償還請求、損害金及び違約金に関する条項を確認してください。

2 請求されている金額について、算定の根拠を書面により求めてください。

3 売掛先に対する債権譲渡の通知の有無を確認してください。

4 債権譲渡登記の有無を、登記事項概要証明書により確認してください。

5 裁判所から書類が届いている場合には、書類の種別と記載された期限を直ちに確認してください。

6 業者との連絡の記録を保全してください。

よくあるご質問

1日遅れただけでも、全額を請求されますか。

期限の利益の喪失に関する条項の定めによります。1回の遅滞で全額の請求を受けることとなる例があります。契約書の条項を確認してください。

損害金の利率に上限はありますか。

ファクタリングには利息制限法の適用がありませんので、法令上の上限はありません。著しく過大である場合には、別途の主張の余地を検討することとなります。

請求されている金額の根拠が示されません。

算定の根拠を書面により求めてください。根拠が示されない場合には、その旨を明らかにしたうえで協議に入ることとなります。

遅滞しただけで逮捕されますか。

単に支払をすることができないという事実のみによって、直ちに犯罪が成立するものではありません。問題となるのは、譲渡した債権の内容に事実と異なる部分がある場合、及び回収した資金を引き渡していない場合です。

裁判所から書類が届きました。

書類の種別により期限が異なります。訴状に対する答弁書の提出期限、支払督促に対する督促異議の期限は短いため、直ちにご相談ください。

代表者個人にも請求が来ています。

連帯保証がある場合には、個人に対する請求がされます。保証の範囲及び効力を確認したうえで、対応を検討することとなります。

おわりに

遅滞により生じる効果は、契約書の条項によって定まります。まず条項を確認し、請求されている金額の根拠を求めることが出発点となります。

そのうえで、資金繰りの見込みに基づいて履行することのできる提案を組み立て、書面により提示することとなります。時間の経過とともに選択肢は狭まりますので、早い段階でご相談ください。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

ファクタリングの支払の遅滞に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

ご留意事項

本ページの記載は、ファクタリングの支払の遅滞に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。

また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。

法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。

出典

  • 民法第90条、第412条、第420条、第467条第2項
  • 刑法第159条、第161条、第246条、第252条、第253条
  • 刑事訴訟法第248条
  • 貸金業法第2条第1項
  • 利息制限法第1条、第4条、第7条
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条

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