ファクタリングを名目とする取引をめぐる摘発の報道について 確認することのできる事柄と読み取ってはならない事柄

暗い机上に置かれた木槌

この記事の位置付け

ファクタリングの適法性は、債権の売買として扱われる場面と、金銭の貸付けと判断される場面とに分かれますので、次のとおり切り分けます。本ページは、摘発の報道から確認することのできる事柄の範囲を扱います。

▶ ファクタリングが貸付けに当たるかどうかが争われた裁判例 判断の枠組みと考慮されている要素

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本記事は、ファクタリングを名目とする取引をめぐる摘発の報道に接し、ご自身が利用している取引にも同じ問題があるのではないかと不安を覚えている事業者の方に向けたものです。

報道の内容からご自身の取引の結論を読み取ることはできず、判断の出発点となるのはご自身の契約書の条項です。通帳の記録による資金の授受の書き出し、業者の存続と債権譲渡登記の確認、連絡の記録の保全を行い、支払を停止するかどうかを独断で判断しないことが重要です。以下、順にご説明します。

ファクタリングを名目とする取引に関し、貸金業法違反又は出資法違反の疑いにより関係者が逮捕された旨の報道がされることがあります。

これらの報道に接した事業者の方から、ご自身が利用している取引も同様の問題があるのではないかというご相談をお受けします。本ページでは、この種の報道から確認することのできる事柄と、読み取ってはならない事柄を整理します。

なお、当事務所は、個別の事件について、報道されている以上の事実関係を把握しているものではありません。以下は、一般的な法律上の枠組みの整理です。

取引の性質が争われる場合の判断の枠組み

売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例があります。そのような判断がされる場合に考慮されている要素は、次のとおりです。

第1に、回収不能の危険の所在です。最も重視されている要素です。売掛先が支払をしない場合に譲渡人が買い戻す義務、又は譲受人に対して償還する義務を負う仕組みとなっている場合には、危険が譲渡人に残ることとなります。

第2に、売掛先の信用の調査です。譲受人が売掛先の信用状況を調査していない場合には、実際に依拠しているのが譲渡人の資力であることがうかがわれます。

第3に、担保及び保証の徴求です。代表者個人の連帯保証、不動産の担保、株式の担保、手形の差入れが求められている場合には、譲渡人の資力を前提とする取引であることがうかがわれます。

第4に、譲渡の対象の特定です。売掛先の名称、金額、支払期日が明確でなく、又は事後に差し替えることが予定されている場合には、資金の融通が主たる目的であることがうかがわれます。

第5に、資金の授受の態様です。債権買取代金が分割して交付されている場合、又は返済に相当する入金が定期的に行われている場合には、貸付けに類似する態様であるといえます。

これらは、いずれか1つが認められれば直ちに貸付けと同視されるというものではありません。取引全体を通じて判断されます。

報道に接した事業者の方が採るべき行動の順序

第1に、ご自身の契約書を確認してください。報道の内容ではなく、契約書の条項が判断の出発点となります。

第2に、通帳の記録により、資金の授受の全部を書き出してください。

第3に、業者が現に存続しているかどうかを、登記事項証明書により確認してください。

第4に、債権譲渡登記の有無を、登記事項概要証明書により確認してください。

第5に、業者との連絡の記録を保全してください。削除しないでください。

第6に、支払を停止するかどうかを、独断で判断しないでください。取引の性質が争われる場合であっても、直ちに支払を拒むことができるものではありません。まずご相談ください。

捜査の対象となった業者との取引がある場合の実務

第1に、支払の相手方の確認です。業者が営業を停止した場合であっても、債権そのものが消滅するものではありません。誰に支払うべきかが不明である場合には、供託を検討することとなります(民法第494条第2項)。

第2に、債権譲渡登記の抹消です。譲受人の協力が得られない場合には、抹消の登記手続を求める訴えを提起することとなります。

第3に、通知書の回収です。署名押印して交付した通知書が第三者に渡ることを避けるため、返還を求めてください。

第4に、資料の保全です。契約書、通帳の記録、業者との連絡の記録を保存してください。後に返還請求を検討する場合の資料となります。

第5に、捜査機関からの連絡への対応です。参考人として事情の聴取を受けることがあります(刑事訴訟法第223条第1項)。取引の記録を整理したうえで臨む必要があります。

他の業者との取引への影響

第1に、債権譲渡登記が残っている場合には、同一の債権について他の業者による取引が困難となります。

第2に、業者相互の間で情報が共有されることがありますので、他の業者からの照会がされることがあります。

第3に、金融機関の審査において、当該業者との取引の事実が確認されることがあります。

第4に、売掛先が事情を把握した場合には、取引関係に影響することがあります。

第5に、これらへの対応においては、事実を伏せず、確認することのできる資料に基づいて説明することが基本となります。

本ページの位置付け

本ページは、ファクタリングを名目とする取引をめぐる摘発の報道に接した事業者の方に向けて、確認することのできる事柄と、読み取ってはならない事柄を整理したものです。

当事務所は、個別の事件について、報道されている以上の事実関係を把握しているものではありません。また、特定の事業者について、その属性を判断して申し上げることはいたしません。

ご自身の取引について不安がある場合には、契約書及び取引の記録をご持参のうえご相談ください。

報道から確認することのできる事柄

第1に、捜査機関が、ファクタリングを名目とする取引について、貸金業法又は出資法の違反の疑いにより捜査を行う場合があるという事実です。

第2に、その場合の被疑事実は、無登録で貸金業を営んだこと(貸金業法第11条第1項、第3条第1項)、又は出資法第5条が定める水準を超える利息の契約をし、若しくは利息を受領したことであるのが一般であるという点です。

第3に、逮捕は、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、かつ、逮捕の必要があると裁判官が認めた場合に、令状によって行われるものであるという点です(刑事訴訟法第199条)。

第4に、逮捕がされたことは、有罪の判断がされたことを意味しないという点です。何人も、法律の定める手続によらなければ、刑罰を科せられません(日本国憲法第31条)。

報道から読み取ってはならない事柄

第1に、ファクタリングが一般に違法であるということは、読み取ることができません。ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

第2に、ご自身が利用している取引についても同様の判断がされるということは、読み取ることができません。判断は、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実に基づいて行われます。

第3に、支払を停止してよいということも、読み取ることができません。取引の性質が争われる場合であっても、直ちに支払を拒むことができるものではありません。

第4に、支払った金銭の返還を請求することができるということも、読み取ることができません。

報道された事案の類型

この種の報道において取り上げられる事案には、給与債権を対象とするものと、事業者が有する売掛債権を対象とするものとがあります。両者は、法律上の枠組みが異なります。

いわゆる給与ファクタリングについては、最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)が、貸金業法第2条第1項及び出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たる旨を判示しています。もっとも、これは、賃金は直接労働者に支払わなければならないものとされていること(労働基準法第24条第1項)から、譲受人が使用者に対して直接に支払を求めることが予定されていないという、給与債権に特有の事情を前提とする判断です。事業者が有する売掛債権を対象とする事業者向けのファクタリングとは事案を異にしますので、この判断がそのまま及ぶものではありません。

報道においては、両者が区別されずに扱われることがあります。ご自身の取引がいずれに当たるかを確認してください。

利用している事業者の方が確認すべき事項

報道に接して不安を感じられた場合には、次の事項を確認してください。

1 譲渡の対象が、給与債権であるか、事業者が有する売掛債権であるかを確認してください。

2 契約書に、買戻し又は償還請求に関する条項があるかどうかを確認してください。

3 契約に至る過程で、売掛先に関する資料の提出を求められたかどうかを確認してください。

4 連帯保証、担保の差入れの有無を確認してください。

5 債権買取代金が一括して交付されたかどうかを、通帳の記録により確認してください。

6 業者が現に存続しているかどうかを、登記事項証明書により確認してください。

取引の相手方が捜査の対象となった場合の実務上の影響

第1に、業者との連絡が取れなくなることがあります。この場合であっても、支払の義務が消滅するものではありません。

第2に、譲渡した債権の帰属が不明確となることがあります。売掛先から問合せを受けた場合には、事実関係を確認したうえで対応することとなります。

第3に、債権譲渡登記が抹消されないまま残ることがあります。抹消には譲受人の関与が必要ですので、手続が複雑となります。

第4に、参考人として事情の聴取を受けることがあります(刑事訴訟法第223条第1項)。この場合には、取引の記録を整理したうえで臨む必要があります。

第5に、他の資金調達手段の利用に影響することがあります。

よくあるご質問

報道された業者と取引しています。支払を止めてよいですか。

支払の義務が当然に消滅するものではありません。まず、契約の内容と取引の記録を整理したうえで、対応を検討してください。

業者と連絡が取れなくなりました。

登記事項証明書により所在地を確認し、書面により連絡することとなります。あわせて、入金及び送金の記録を保全してください。

支払った金銭の返還を請求することはできますか。

取引の性質を争うことができる場合には、検討の余地があります。もっとも、業者に資力がなければ回収することができません。

債権譲渡登記が残っています。

抹消には譲受人の関与が必要です。譲受人が解散し、又は所在が不明である場合には、手続が複雑となりますので、個別にご相談ください。

警察から連絡がありました。

用件、所属、氏名を確認し、記録してください。取引の記録を整理したうえで臨む必要がありますので、応答の前にご相談ください。

自分の取引も違法なのでしょうか。

報道された事案とご自身の取引とは、契約の内容及び運用の実態が異なります。契約書及び取引の記録をご持参のうえご相談ください。

おわりに

この種の報道から確認することができるのは、捜査機関がファクタリングを名目とする取引について捜査を行う場合があるという事実にとどまります。ファクタリングが一般に違法であるということも、ご自身の取引について同様の判断がされるということも、読み取ることはできません。

不安を感じられた場合には、報道の内容ではなく、ご自身の契約書の条項と取引の記録に基づいて確認してください。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

報道された事案に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

ご留意事項

本ページの記載は、ファクタリングをめぐる摘発の報道に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。

また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。

法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。

出典

  • 日本国憲法第31条
  • 刑事訴訟法第199条、第223条第1項
  • 貸金業法第2条第1項、第3条第1項、第11条第1項
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第3項
  • 労働基準法第24条第1項
  • 利息制限法第1条
  • 最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)

具体的なご相談をお考えの皆様へ

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件に関与し、平成23年には最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得ております。現在は弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士を務めております。

主として取り扱う分野 M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務

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本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。