ファクタリングは違法なのか 法令の適用の有無、取引の性質が争われる場合及び個別の行為の問題

この記事の位置付け
ファクタリングの適法性は、債権の売買として扱われる場面と、金銭の貸付けと判断される場面とに分かれますので、次のとおり切り分けます。本ページは、法令の適用と取引の性質が争われる場面の全体を扱います。
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本記事は、ファクタリングを利用しており、又は利用を検討しており、その取引が違法ではないかという疑問をお持ちの事業者の方に向けたものです。
ファクタリングは違法なのかというご質問を数多くいただきます。広告や解説記事において、違法である、あるいは適法であるという相反する説明がされていることが、混乱の一因になっているものと思われます。
結論から申し上げますと、売掛債権の売買としてのファクタリングは適法な取引です。他方で、売買の形式が採られていても、契約の内容及び運用の実態によっては、その法的な性質が争われることがあります。また、取引の過程における個別の行為が、別途、法令に違反することがあります。
本ページでは、この点を、法令の適用の有無、取引の性質が争われる場合の枠組み、及び取引の過程で問題となり得る行為の3つに分けて整理します。
貸金業法、利息制限法及び出資法の適用の有無
ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。
利息制限法は「金銭を目的とする消費貸借」における利息の上限を定めるものです(同法第1条)。出資法第5条も、金銭の貸付けを行う者を規律の対象とするものです。貸金業法第2条第1項は、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介を業として行うことを貸金業と定義しています。いずれも、売買には直接に適用されません。
したがって、ファクタリング業者が貸金業の登録を受けていないことをもって、直ちに無登録営業(貸金業法第11条第1項)に当たるということにはなりません。
いわゆる給与ファクタリングとの区別
いわゆる給与ファクタリングについては、最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)が、貸金業法第2条第1項及び出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たる旨を判示しています。
もっとも、これは、賃金は直接労働者に支払わなければならないものとされていること(労働基準法第24条第1項)から、譲受人が使用者に対して直接に支払を求めることが予定されていないという、給与債権に特有の事情を前提とする判断です。事業者が有する売掛債権を対象とする事業者向けのファクタリングとは事案を異にしますので、この判断がそのまま及ぶものではありません。
事業者向けのファクタリングにおいては、譲受人が売掛先に対して債権譲渡の通知をし、売掛先から直接に支払を受けることが、法律上も実務上も予定されています(民法第467条第1項)。この点において、給与ファクタリングとは仕組みが根本的に異なります。報道等において両者が区別されずに扱われることがありますので、注意を要します。
取引の性質が争われる場合の枠組み
売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例があります。そのような判断がされる場合には、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実が考慮されています。主として問題とされている要素は、次のとおりです。
| 回収不能の危険の所在 | 売掛先が支払をしない場合に、譲渡人が買い戻し、又は償還する義務を負う仕組みとなっているかどうか。危険が譲渡人に残る場合には、売買としての性質が希薄であるとされることがあります。 |
| 売掛先の信用の調査 | 譲受人が売掛先の信用状況を調査しているかどうか。調査をしていない場合には、売掛先の資力ではなく譲渡人の資力を前提とした取引であることがうかがわれます。 |
| 担保及び保証の徴求 | 代表者個人の連帯保証、不動産の担保、株式の担保その他の担保が徴求されているかどうか。 |
| 譲渡の対象の特定 | 譲渡の対象とされた債権が具体的に特定されているかどうか。特定が形式的なものにとどまる場合には、資金の融通が主たる目的であることがうかがわれます。 |
| 資金の授受の態様 | 債権買取代金が分割して交付されているかどうか。返済に相当する入金が定期的に行われているかどうか。 |
| 取引の反復性 | 同一の当事者間で取引が反復し、実質において与信の枠として機能しているかどうか。 |
これらは、いずれか1つが認められれば直ちに貸付けと同視されるというものではありません。取引全体を通じて判断されます。したがって、争う場合には、契約書の条項のみならず、実際の資金の流れ、業者との連絡の記録その他の資料を収集し、主張及び立証を組み立てる必要があります。
取引の過程で問題となり得る行為
取引そのものが適法であっても、その過程における個別の行為が法令に違反することがあります。
第1に、催促の態様です。深夜又は早朝の連絡、勤務先又は自宅への訪問、家族に対する連絡等については、態様によっては、脅迫罪(刑法第222条)、強要罪(同法第223条)、住居侵入罪(同法第130条)等の成否が問題となります。もっとも、ファクタリングには貸金業法第21条第1項の適用がありませんので、同項各号に該当することを理由として直ちに違法となるものではありません。
第2に、契約の締結の過程における説明です。重要な事項について事実と異なる説明がされ、これによって誤認して契約をした場合には、詐欺(民法第96条第1項)を理由とする取消しが問題となります。
第3に、譲渡人の側の行為です。実在しない債権を譲渡し、又は金額を過大に記載した資料を提出した場合には、詐欺罪(刑法第246条)、私文書偽造罪及び同行使罪(同法第159条、第161条)の成否が問題となります。また、回収した資金を分別して管理すべき旨が定められているにもかかわらず他の支払に充てた場合には、横領罪(同法第252条)の成否が問題となります。
第4に、公序良俗違反です。負担の水準、契約の内容及び締結の経緯を総合して、公の秩序又は善良の風俗に反するものとして無効とされる余地があります(民法第90条)。もっとも、これが認められるためには、相当に強度の事情を要します。
業者を選別する際に確認すべき事項
1 商号、所在地及び代表者が、登記事項証明書の記載と一致しているかどうか。
2 契約書が交付され、控えを保有することができるかどうか。
3 手数料その他の控除の内訳が、書面により明示されているかどうか。
4 実際に受領する金額が、契約の締結の前に確定的に示されているかどうか。
5 買戻し、償還請求、損害金及び違約金に関する条項の内容が説明されているかどうか。
6 連帯保証又は担保の差入れが求められているかどうか。
7 署名押印を急がせ、又は検討の時間を与えない対応がされていないかどうか。
適法性をめぐる議論の経緯
ファクタリングの適法性に関する議論は、給与ファクタリングをめぐる問題を契機として広がりました。給与債権を対象とする取引については、下級審において金銭の貸付けに当たるものとして判断され、その後、最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)により、貸金業法第2条第1項及び出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たる旨が判示されました。
この議論が事業者向けのファクタリングにも及ぶかのように紹介されたことにより、混乱が生じています。もっとも、給与ファクタリングに関する判断は、賃金は直接労働者に支払わなければならないものとされていること(労働基準法第24条第1項)から、譲受人が使用者に対して直接に支払を求めることが予定されていないという、給与債権に特有の事情を前提とするものです。事業者が有する売掛債権を対象とする事業者向けのファクタリングとは事案を異にしますので、この判断がそのまま及ぶものではありません。
他方で、事業者向けのファクタリングについても、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例があります。これらの裁判例は、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実を検討したうえで、個別の事案について判断をしたものです。したがって、ファクタリング一般について結論を述べたものではありません。
また、弁護士会その他の団体から、規制の在り方について意見が示されることがあります。これらは立法上の提言としての性質を有するものであり、現行法の解釈を直接に変更するものではありません。
取引の性質を争う場合の実務上の手順
第1に、取引の全体を復元します。業者ごとに、契約書、個別の取引の明細、通帳の記録を時系列で整理し、資金の授受を確定します。
第2に、契約書の条項を整理します。買戻し、償還請求、期限の利益の喪失、損害金、違約金、表明及び保証に関する条項を抜き出し、それぞれが取引の性質の判断においてどのように働くかを検討します。
第3に、運用の実態を示す資料を収集します。契約書に定められていない取扱いが行われている場合には、その事実を示す資料が重要となります。業者の担当者との連絡の記録が中心となります。
第4に、主張の骨格を組み立てます。手数料の水準を中心に置くのではなく、回収不能の危険の所在を中心に置きます。
第5に、立証の方法を検討します。運用の実態を示す資料の多くは業者の手元にありますので、文書提出命令の申立て(民事訴訟法第221条第1項)を含めて検討することとなります。
第6に、順序を判断します。現に取引が継続している場合には、争う姿勢を示すことにより、売掛先に対する債権譲渡の通知が送付され、取引関係が失われることがあります。事業の継続を優先するのか、既に生じた負担を争うことを優先するのかを、あらかじめ定めておく必要があります。
いま確認していただきたいこと
1 業者ごとに、契約書及び個別契約書の全部を時系列で整理してください。
2 通帳又は取引明細により、資金の授受の全部を書き出してください。
3 手数料、保証金その他の名目で控除された金額を、取引ごとに確認してください。
4 業者の担当者との連絡の記録を保全してください。削除しないでください。
5 催促の態様に問題がある場合には、日時、方法及び内容を記録してください。
よくあるご質問
貸金業の登録を受けていない業者との契約は無効ですか。
ファクタリングは金銭の貸付けではありませんので、登録を要しません。登録を受けていないことのみを理由として契約が無効となるものではありません。
年率に引き直すと100パーセントを超えます。出資法違反ではありませんか。
出資法は金銭の貸付けを行う者を規律の対象とするものですので、売買には適用されません。水準のみを理由として違反となるものではありません。
実質は貸付けであると主張することはできますか。
できます。もっとも、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実の主張及び立証を要します。契約書の条項のみでは足りません。
催促がしつこいのですが、法令に違反しませんか。
貸金業法第21条第1項の適用はありませんが、態様によっては刑法上の問題が生じ得ます。日時、方法及び内容を記録してください。
契約を取り消すことはできますか。
重要な事項について事実と異なる説明を受け、これによって誤認して契約をした場合には、取消しが問題となります(民法第96条第1項)。説明の内容を示す資料の有無が重要となります。
業者が反社会的勢力であるかどうかを知る方法はありますか。
当事務所において特定の事業者の属性を判断して申し上げることはできません。登記事項証明書による確認、契約書の交付の有無、手数料の内訳の明示の有無といった、確認することのできる事項から判断してください。
既に取引を重ねていますが、いつ相談すべきでしょうか。
次回の支払期日を履行することができるかどうかが不確かとなった時点でご相談ください。売掛先への通知がされる前の段階が、最も選択肢の広い局面です。
おわりに
ファクタリングが違法であるかどうかという問いは、実際には、貸金に関する法令の適用があるかどうか、取引の性質を争うことができるかどうか、及び個別の行為に問題があるかどうかという3つの問いに分かれます。
いずれについても、確認することのできる事実を積み上げることが出発点となります。広告や解説記事の記載を前提として判断されることは避けてください。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
ファクタリングの適法性に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)
出典
- 民法第90条、第96条第1項、第467条第1項
- 刑法第130条、第159条、第161条、第222条、第223条、第246条、第252条
- 貸金業法第2条第1項、第11条第1項、第21条第1項
- 利息制限法第1条
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第3項
- 労働基準法第24条第1項
- 最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)
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