ファクタリング業者に貸金業の登録は必要か 登録の要否と無登録営業が問題となる場面

法令集の背表紙

ファクタリング業者は貸金業の登録を受けなければならないのか、登録を受けていない業者との取引は無効ではないのかという御質問を数多くいただきます。

結論から申し上げますと、売掛債権の売買としてのファクタリングについては、貸金業の登録を要しません。他方で、取引の実質が金銭の貸付けであると認められる場合には、登録の要否が問題となります。

本ページでは、貸金業法の規律の内容、登録を要しない理由、無登録営業が問題となる場面、及び登録の有無を確認する方法を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。

貸金業法の規律の内容

貸金業法第2条第1項は、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介で業として行うものを貸金業と定義しています。同法第3条第1項は、貸金業を営もうとする者は、2以上の都道府県の区域内に営業所又は事務所を設置する場合には内閣総理大臣の、1の都道府県の区域内にのみ営業所又は事務所を設置する場合には当該都道府県知事の登録を受けなければならない旨を定めています。

同法第11条第1項は、同法第3条第1項の登録を受けない者は貸金業を営んではならない旨を定めています。これに違反した場合には、刑事上の責任が問題となります。

また、貸金業者に対しては、貸付けの条件の掲示、契約締結前の書面の交付、契約締結時の書面の交付、取立て行為の規制等の義務が課されています。同法第21条第1項は、取立てに際して、人を威迫し、又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない旨を定めています。

登録を要しない理由

ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

貸金業法第2条第1項にいう「金銭の貸付け」は、消費貸借(民法第587条)を前提とするものです。売掛債権の譲渡は、財産権の移転を目的とする売買(同法第555条)ですので、これに当たりません。

したがって、ファクタリング業者が貸金業の登録を受けていないことをもって、直ちに無登録営業に当たるということにはなりません。この点は、御相談の際に最も誤解の多い事項です。

また、登録を受けていないことのみを理由として、締結した契約が無効となるものでもありません。

取立て行為の規制が及ばないこと

貸金業法第21条第1項第9号は、債務者が弁護士等に債務処理を委任した旨の通知を受けた後に、正当な理由なく債務者へ支払を請求することを禁じています。同項第1号は、正当な理由がないのに社会通念に照らし不適当と認められる時間帯に電話をかけ、又は訪問することを禁じています。

これらの規律は、貸金業を営む者を対象とするものです。ファクタリング業者には及びません。

したがって、弁護士が受任した旨を通知したことのみによって、催促が当然に止まるものではありません。もっとも、催促の態様によっては、脅迫罪(刑法第222条第1項)、強要罪(同法第223条第1項)等の成否が問題となり得ますので、記録を保全してください。

無登録営業が問題となる場面

売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断される場合には、貸金業の登録の要否が問題となります。

この判断においては、回収不能の危険が譲渡人に残る仕組みとなっているかどうか、売掛先の信用の調査がされているかどうか、担保又は保証が徴求されているかどうか、譲渡の対象が具体的に特定されているかどうか、資金の授受の態様が返済に類似しているかどうかが、主として問題とされています。

なお、いわゆる給与ファクタリングについては、最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)が、貸金業法第2条第1項及び出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たる旨を判示しています。もっとも、これは、賃金は直接労働者に支払わなければならないものとされていること(労働基準法第24条第1項)から、譲受人が使用者に対して直接に支払を求めることが予定されていないという、給与債権に特有の事情を前提とする判断です。事業者が有する売掛債権を対象とする事業者向けのファクタリングとは事案を異にしますので、この判断がそのまま及ぶものではありません。

登録の有無を確認する方法

金融庁が公表している登録貸金業者情報検索サービスにより、貸金業者の登録の有無を確認することができます。もっとも、ファクタリング業者については、登録を要しませんので、検索されないことが通常です。

したがって、取引の相手方を確認するに当たっては、登録の有無ではなく、次の事項によることが確実です。

1 商号、所在地及び代表者が、登記事項証明書の記載と一致しているかどうか。

2 契約書が交付され、控えを保有することができるかどうか。

3 手数料その他の控除の内訳が、書面により明示されているかどうか。

4 実際に受領する金額が、契約の締結の前に確定的に示されているかどうか。

5 買戻し、償還請求、損害金及び違約金に関する条項の内容が説明されているかどうか。

取立ての態様に関する規律の違いの整理

場面 貸金業を営む者 ファクタリング業者
不適当な時間帯の連絡 禁止(貸金業法第21条第1項第1号) 規律なし
勤務先への連絡 制限あり(同項第3号等) 規律なし
受任通知後の請求 禁止(同項第9号) 規律なし
第三者に対する請求 制限あり(同項第7号) 規律なし
威迫又は困惑させる言動 禁止(同項柱書) 刑法上の問題が生じ得る

この差は、規律の対象が異なることによるものです。もっとも、規律がないことは、いかなる態様も許されるという意味ではありません。脅迫罪(刑法第222条第1項)、強要罪(同法第223条第1項)、住居侵入罪(同法第130条)、威力業務妨害罪(同法第234条)の成否が問題となり得ます。

取引の実質が争われる場合における登録の要否

売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断される場合には、貸金業の登録の要否が問題となります。

この場合、無登録での営業(貸金業法第11条第1項)が問題となるほか、利息制限法及び出資法の適用が問題となります。もっとも、これらが認められるためには、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実の主張及び立証を要します。

また、刑事上の責任が問題となるかどうかは、捜査機関及び裁判所の判断によるものであり、当事者が直ちに支払を拒む根拠となるものではありません。

したがって、実務上は、まず契約の内容と取引の記録を整理し、そのうえで、支払の方法についての協議、取引の性質を争うことの可否、資金繰りの立て直しを順に検討することとなります。

業者の実在及び属性の確認の方法

第1に、登記事項証明書の取得です。商号、所在地、代表者、設立の時期、目的、解散の有無を確認することができます。法務局において誰でも取得することができます。

第2に、所在地の確認です。登記された所在地が実在するかどうか、事務所としての実体があるかどうかを確認してください。

第3に、契約書の記載との照合です。広告、契約書、振込先の名義が、登記の記載と一致しているかどうかを確認してください。一致しない場合には、その理由を確認する必要があります。

第4に、担当者の連絡先です。法人としての電話番号が示されず、携帯電話のみである場合には、後に連絡が困難となることがあります。

第5に、契約書の交付の有無です。控えを交付しない取扱いは、後に条項の内容を確認することができなくなりますので、避けるべきです。

登録の有無以外に確認することのできる事項

第1に、契約書における条項の整合性です。契約書の条項と実際の運用とが一致しているかどうかを確認してください。

第2に、手数料その他の控除の明示です。名目と内訳が書面により示されているかどうかを確認してください。

第3に、審査の内容です。売掛先に関する資料の提出を求められたかどうかにより、売買としての性質の強弱がうかがわれます。

第4に、連絡の態様です。時間帯、頻度、相手方について、記録を保全してください。

第5に、他の利用者の評価です。もっとも、公表されている評価には、事業者自身により作成されたものが含まれることがありますので、判断の材料としては限界があります。

本ページの位置付け

本ページは、ファクタリング業者が貸金業の登録を受けていないことについて疑問をお持ちの事業者の方に向けて、登録の要否と無登録営業が問題となる場面を整理したものです。

ファクタリングは金銭の貸付けではありませんので、登録を要しません。したがって、登録の有無によって取引の相手方を判断することはできません。

登記事項証明書による確認、契約書の交付の有無、控除の内訳の明示の有無といった、確認することのできる事項によって判断してください。

いま確認していただきたいこと

1 業者の商号、所在地及び代表者を、登記事項証明書により確認してください。

2 契約書の控えの交付を受けているかどうかを確認してください。

3 買戻し又は償還の事由の範囲を確認してください。

4 催促の態様に問題がある場合には、日時、方法及び内容を記録してください。

5 連帯保証及び担保の差入れの有無を確認してください。

よくあるご質問

登録を受けていない業者との契約は無効ですか。

ファクタリングは金銭の貸付けではありませんので、登録を要しません。登録を受けていないことのみを理由として契約が無効となるものではありません。

弁護士に依頼すれば催促は止まりますか。

止まりません。貸金業法第21条第1項第9号の適用がありませんので、通知により当然に催促が止まるものではありません。

深夜に電話が来ます。貸金業法違反ではありませんか。

貸金業法の規律はファクタリング業者に及びません。もっとも、態様によっては刑法上の問題が生じ得ますので、記録を保全してください。

登録の有無を確認する方法はありますか。

金融庁の登録貸金業者情報検索サービスにより確認することができます。もっとも、ファクタリング業者は登録を要しませんので、検索されないことが通常です。

実質は貸付けであると主張することはできますか。

できます。もっとも、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実の主張及び立証を要します。

無登録営業を理由として告発することはできますか。

取引の実質が金銭の貸付けであると認められることが前提となります。まず、契約の内容及び運用の実態を整理する必要があります。

おわりに

ファクタリング業者は、売掛債権の売買を行う限り、貸金業の登録を要しません。したがって、登録の有無によって取引の相手方を判断することはできません。

取引の相手方を確認するに当たっては、登記事項証明書による確認、契約書の交付の有無、控除の内訳の明示の有無といった、確認することのできる事項によることが確実です。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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御留意事項

本ページの記載は、貸金業の登録の要否に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。

また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士に御確認ください。

法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際の御依頼に際しましては、必ず個別に御相談ください。御相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。

出典

  • 民法第555条、第587条
  • 貸金業法第2条第1項、第3条第1項、第11条第1項、第21条第1項
  • 利息制限法第1条
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第3項
  • 労働基準法第24条第1項
  • 刑法第222条第1項、第223条第1項
  • 最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)

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