ファクタリングをめぐる紛争が裁判となる場面 類型ごとの争点と立証の対象

天秤の上に立つ人々

ファクタリングをめぐる紛争が裁判に至った場合、どのような争点について、どのような主張がされるのかという御質問をいただきます。また、業者から訴訟を提起されたが、どのように応訴すべきか分からないという御相談もお受けしています。

ファクタリングをめぐる紛争は、その類型によって争点が大きく異なります。業者が譲渡人に対して請求する場面、譲渡人が業者に対して既に支払った金銭の返還を求める場面、譲受人相互の間で優劣が争われる場面、そして売掛先が当事者となる場面があります。

本ページでは、紛争の類型ごとに、争点、主張の内容及び立証の対象を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。

紛争の類型

業者から譲渡人への請求 買戻しの請求、償還の請求、回収した資金の引渡しの請求、損害の賠償の請求が中心です。仮差押命令の申立てが併せて行われることがあります。
譲渡人から業者への請求 取引の性質を争い、既に支払った金銭について不当利得の返還を求めるものです。
譲受人相互の争い 同一の債権が二重に譲渡された場合に、対抗要件の先後が争われるものです。供託金の還付請求権の帰属をめぐる争いとなることがあります。
売掛先が当事者となる場面 譲受人が売掛先に対して支払を求める場面です。売掛先は、相殺、弁済その他の抗弁を主張することがあります。
刑事手続 民事上の紛争と並行して、詐欺罪、私文書偽造罪、横領罪の成否が問題となることがあります。

業者から譲渡人への請求における争点

第1に、請求の根拠となる条項の適用の有無です。買戻しの事由、償還の事由が生じているかどうかが争われます。契約書の文言の解釈が中心となります。

第2に、請求されている金額の算定です。元となる金額のほか、損害金、違約金、費用が加算されていることがあります。算定の根拠を明らかにするよう求めることが、応訴の出発点となります。

第3に、損害金及び違約金の水準です。ファクタリングには利息制限法第4条及び第7条の適用がありませんので、法令上の上限はありません。もっとも、著しく過大である場合には、民法第90条による無効、又は損害賠償の額の予定に関する主張の余地を検討することとなります。

第4に、取引の性質です。実質において金銭の貸付けであると主張し、利息制限法所定の上限を超える部分の無効を主張することがあります。この場合、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実の主張及び立証を要します。

第5に、代表者個人の保証の効力です。保証の意思表示の有無、範囲、及び書面性の要件(民法第446条第2項)が争われることがあります。

譲渡人から業者への請求における争点

この類型における中心的な争点は、当該取引が真正な売買であるか、実質において金銭の貸付けであるかという点です。

ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

実質において貸付けであると主張する場合には、回収不能の危険が譲渡人に残る仕組みとなっているかどうか、売掛先の信用の調査がされているかどうか、担保又は保証が徴求されているかどうか、譲渡の対象が具体的に特定されているかどうか、資金の授受の態様が返済に類似しているかどうかを、資料に基づいて主張することとなります。

立証の対象となる資料の多くは、業者の手元にあります。したがって、文書提出命令の申立て(民事訴訟法第221条第1項)を含めて、立証の方法を検討する必要があります。

なお、いわゆる給与ファクタリングについては、最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)が、貸金業法第2条第1項及び出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たる旨を判示しています。もっとも、これは、賃金は直接労働者に支払わなければならないものとされていること(労働基準法第24条第1項)から、譲受人が使用者に対して直接に支払を求めることが予定されていないという、給与債権に特有の事情を前提とする判断です。事業者が有する売掛債権を対象とする事業者向けのファクタリングとは事案を異にしますので、この判断がそのまま及ぶものではありません。

譲受人相互の争いにおける争点

債権が二重に譲渡された場合、譲受人相互の優劣は、対抗要件を備えた時期によって定まります。債務者以外の第三者に対する対抗要件は、確定日付のある証書による通知又は承諾です(民法第467条第2項)。確定日付のある証書による通知が複数到達した場合には、到達の先後によって優劣が定まるものと解されています。

また、法人が金銭債権を譲渡する場合には、債権譲渡登記によって第三者対抗要件を備えることができます(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第1項)。登記と通知が競合する場合には、登記の日時と通知の到達の日時の先後によって優劣が定まります。

売掛先が供託をした場合には、還付請求権の帰属が争われます。この場合、譲渡人は当事者となりませんが、いずれの譲受人が優先するかによって、譲渡人が負う責任の内容が変わります。

売掛先が当事者となる場面における争点

譲受人が売掛先に対して支払を求める場合、売掛先は次の抗弁を主張することがあります。

第1に、債権の不存在です。譲渡の対象とされた債権が実在しない場合には、売掛先は支払を拒むことができます。

第2に、弁済です。通知の到達の前に譲渡人へ支払をしていた場合には、これをもって譲受人に対抗することができます。

第3に、相殺です。売掛先が譲渡人に対して反対債権を有する場合には、通知の到達までに取得した反対債権をもって相殺することができます(民法第469条第1項)。

第4に、譲渡を制限する意思表示の存在です。譲受人が当該意思表示について悪意又は重大な過失である場合には、履行を拒むことができます(民法第466条第3項)。

裁判所からの書類が届いた場合の初動

1 書類の種別を確認してください。訴状、支払督促、仮差押命令の申立てに関する書類では、対応の内容と期限が異なります。

2 記載された期限を確認してください。支払督促に対する督促異議の申立ての期間は、送達を受けた日から2週間です(民事訴訟法第393条)。訴状に対する答弁書の提出期限は、通常、第1回の口頭弁論期日の1週間前とされています。

3 請求の内容と金額を確認し、その算定の根拠を確認してください。

4 契約書、通帳、業者との連絡の記録を収集してください。

5 期限が迫っている場合には、その旨をお伝えのうえ御相談ください。

裁判所から書類が届いた場合の初動の詳細

第1に、封筒を保管してください。特別送達による場合には、送達の日付が期限の起算点となります。

第2に、同封されている書面を全部確認してください。訴状のほか、口頭弁論期日呼出状、答弁書催告状、証拠説明書、書証の写しが同封されていることが一般です。

第3に、請求の趣旨と請求の原因を確認してください。何を求められているのか、いかなる事実を根拠としているのかを把握します。

第4に、請求されている金額の内訳を確認してください。元となる金額、損害金、違約金、費用の別を確認し、算定の根拠を照合します。

第5に、期限を確認してください。答弁書の提出期限、口頭弁論期日を確認し、直ちに対応の準備に着手します。

第6に、契約書、通帳、業者との連絡の記録を収集してください。答弁の内容を定めるための基礎資料となります。

答弁書において記載すべき事項

第1に、請求の趣旨に対する答弁です。請求を棄却する旨の判決を求めることを記載します。

第2に、請求の原因に対する認否です。主張されている事実について、認める、否認する、知らないの別を明らかにします。

第3に、抗弁です。弁済、相殺、消滅時効、契約の無効又は取消しといった主張を記載します。

第4に、取引の性質に関する主張です。実質において金銭の貸付けであると主張する場合には、その根拠となる事実を記載します。

第5に、請求されている金額の算定に関する主張です。算定の根拠が示されていない場合には、その旨を指摘し、明らかにするよう求めます。

第6に、和解に関する意向です。分割による支払について協議する意向がある場合には、その旨を記載することができます。

仮差押命令を受けた場合

第1に、決定書及び差押えの対象を確認してください。預金口座、売掛債権のいずれが対象とされているかにより、影響が異なります。

第2に、事業への影響を確認してください。事業用の口座が対象となっている場合には、資金繰りに直ちに影響します。

第3に、保全異議(民事保全法第26条)の申立てを検討してください。被保全権利又は保全の必要性がない旨を主張することとなります。

第4に、保全取消し(同法第37条以下)の申立てを検討してください。本案の訴えの提起がされない場合には、起訴命令の申立てをすることができます。

第5に、解放金の供託を検討してください。決定において定められた金額を供託することにより、執行の停止を求めることができます(同法第22条第1項)。

第6に、売掛先に対する説明を準備してください。売掛債権が対象とされている場合には、売掛先に差押命令が送達されますので、説明が必要となります。

弁護士に依頼する時期

第1に、裁判所から書類が届いた時点です。答弁の期限、督促異議の期限が短いため、直ちに御相談ください。

第2に、業者から法的手続を予告された時点です。予告の段階で協議が調えば、手続の費用を避けることができます。

第3に、仮差押命令を受けた時点です。事業用の口座が対象となっている場合には、資金繰りに直ちに影響しますので、早急な対応を要します。

第4に、取引の性質を争うことを検討する時点です。資料の収集の方法、順序の判断について、あらかじめ検討する必要があります。

第5に、複数の業者から同時に請求を受けた時点です。全体を把握したうえで対応の順序を定める必要があります。

よくあるご質問

訴状が届きましたが、答弁書を出さなければどうなりますか。

答弁書を提出せず、期日にも出頭しない場合には、請求の原因となる事実を自白したものとみなされ、請求を認容する判決がされることがあります。

支払督促が届きました。

送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てなければ、仮執行の宣言がされます。期限が短いため、直ちに確認してください。

仮差押命令を受けました。

保全異議又は保全取消しの申立てを検討することとなります。事業用の口座が対象となっている場合には、資金繰りに直ちに影響しますので、早急な対応を要します。

取引の性質を争えば、必ず認められますか。

認められるとは限りません。契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実の主張及び立証を要します。

訴訟にはどの程度の期間を要しますか。

争点の内容及び立証の方法によって異なりますので、一律に申し上げることはできません。取引の性質を争う場合には、資料の収集及び尋問を要しますので、期間は長くなります。

和解による解決は可能ですか。

業者にとっての目的は多くの場合に金銭の回収ですので、和解による解決に至る例は少なくありません。履行することのできる内容を資料に基づいて提示することが前提となります。

おわりに

ファクタリングをめぐる紛争は、その類型によって争点が大きく異なります。まず、いずれの類型に当たるかを確定し、争点を絞ることが出発点となります。

裁判所から書類が届いた場合には、期限が短いことが少なくありません。書類の種別と記載された期限を直ちに確認してください。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

ファクタリングをめぐる訴訟に関する御相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

出典

  • 民法第90条、第446条第2項、第466条第3項、第467条第2項、第469条第1項
  • 民事訴訟法第221条第1項、第393条
  • 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第1項
  • 利息制限法第1条、第4条、第7条
  • 貸金業法第2条第1項
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第3項
  • 労働基準法第24条第1項
  • 最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)

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