ファクタリング業者から登記に関する委任状を求められる理由と確認すべき事項

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債権譲渡をめぐる論点は、対抗要件の仕組みを確かめる場面と、売掛先に知られた後の影響へ対応する場面とに分かれますので、次のとおり切り分けます。本ページは、登記に関する委任状を求められる理由と確認すべき事項を扱います。
▶ ファクタリングにおける債権譲渡の通知 対抗要件の仕組みと売掛先への影響及び対応の方法
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ファクタリングの契約の締結に際して、債権譲渡登記に関する委任状の作成を求められることがあります。また、代表者の変更の登記に関する委任状、株式の担保に関する書面、白紙の委任状への署名押印を求められることもあります。
これらの書面は、いずれも、譲受人が権利を実行するための手段をあらかじめ確保するためのものです。もっとも、その範囲が明確でない場合には、想定していなかった効果が生じることがあります。
本ページでは、登記に関する委任状を求められる理由、その法律上の意味、確認すべき事項、及び既に交付している場合の対応を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。
債権譲渡登記に関する委任状
法人が金銭債権を譲渡する場合には、債権譲渡登記によって第三者対抗要件を備えることができます(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第1項)。登記の申請は、譲渡人と譲受人が共同してするものとされています(同法第8条第2項)。
そのため、譲受人は、譲渡人から登記の申請に関する委任状の交付を受け、これに基づいて申請を行います。委任状には、譲渡人の印鑑証明書が添付されることが一般です。
登記がされますと、当該債権について、譲受人が第三者に対抗することができる状態となります。もっとも、債務者に対する対抗要件は、登記事項証明書を交付して通知することにより備えられますので(同条第2項)、登記がされたことのみによって売掛先に通知がされるものではありません。
確認すべきは、登記の対象となる債権の範囲です。個別の債権に限定されているか、将来発生する債権を含む包括的なものであるかによって、影響が大きく異なります。包括的な登記がされますと、他の資金調達手段の利用が困難となることがあります。
登記がされた場合に生じる影響
第1に、他の業者との取引に影響します。他の業者は、登記事項概要証明書により登記の存在を把握しますので、同一の債権について譲渡を受けることを避けます。
第2に、金融機関との関係に影響します。融資の審査において、債権譲渡登記の存在が考慮されることがあります。
第3に、売掛先に知られることがあります。登記事項概要証明書は誰でも取得することができます。売掛先が取引の相手方の信用状況を調査する過程で判明することがあります。
第4に、抹消には譲受人の関与が必要です。登記の抹消の申請も、原則として譲渡人と譲受人が共同してすることとなります。したがって、債務を完済した場合であっても、譲受人が協力しなければ抹消することができません。
登記の抹消をめぐる問題
完済したにもかかわらず登記が抹消されないというご相談を、当事務所は数多くお受けしています。
まず、契約書において、完済の場合に抹消に協力する旨が定められているかどうかを確認してください。定めがある場合には、これに基づいて抹消の申請への協力を求めることとなります。
定めがない場合であっても、債権が消滅した以上、登記を存続させる法律上の理由はありません。抹消の登記手続を求める訴えを提起することにより、判決に基づいて抹消することができます。
なお、譲受人である法人が既に解散し、又は所在が不明である場合には、手続が複雑となります。この場合の対応については、個別にご相談ください。
その他の委任状及び書面
| 白紙の委任状 | 用途及び範囲が記載されていない委任状に署名押印しますと、想定していなかった手続に用いられるおそれがあります。応じるべきではありません。 |
| 代表者の変更の登記に関する書面 | 会社の代表者を変更する内容の書面に署名押印を求められた場合には、その意味を必ず確認してください。実行されますと、会社の支配そのものが失われます。 |
| 株式の担保に関する書面 | 代表者が保有する株式を担保に供するものです。実行されますと、会社の支配が移転します。 |
| 公正証書の作成に関する委任状 | 強制執行を受諾する旨の記載のある公正証書が作成されますと、判決を得ることなく強制執行を受ける状態となります(民事執行法第22条第5号)。 |
| 連帯保証に関する書面 | 保証の意思表示は書面によらなければ効力を生じません(民法第446条第2項)。範囲と期間を確認してください。 |
委任状を交付した後の管理
第1に、交付した書面の一覧を作成してください。日付、種類、通数、交付の相手方を記載します。
第2に、写しを保管してください。写しがなければ、後にどのような書面を交付したかを確認することができません。
第3に、印鑑証明書の交付の記録を残してください。通数と用途を記載します。
第4に、履歴事項全部証明書及び登記事項概要証明書を定期的に取得し、登記の内容を確認してください。
第5に、取引が終了した場合には、交付した書面の返還を求めてください。あわせて、債権譲渡登記の抹消への協力を求めます。
本ページの位置付け
本ページは、ファクタリング業者から登記に関する委任状その他の書面の交付を求められた事業者の方に向けて、その意味と確認すべき事項を整理したものです。
登記に関する委任状に応じること自体が直ちに不利益となるものではありませんが、委任の範囲及び登記の対象となる債権の範囲によって、その後の資金調達に影響が及びます。
白紙の委任状、代表者の変更に関する書面、株式の担保に関する書面については、実行された場合の影響が極めて大きいため、署名押印の前に必ずご相談ください。
債権譲渡登記の内容の確認の方法
第1に、登記事項概要証明書を取得します。これは誰でも取得することができるものであり、譲渡人の商号、譲受人の商号、登記の年月日、登記の存続期間が記載されます。譲渡の対象となる債権の内容は記載されません。
第2に、登記事項証明書を取得します。譲渡の対象となる債権の内容が記載されますが、交付を請求することができる者は限られています。譲渡人及び譲受人のほか、利害関係を有する者に限られます。
第3に、概要記録事項証明書を取得します。譲渡人の本店の所在地を管轄する登記所において、譲渡人を単位として登記の有無を確認することができます。
第4に、登記の存続期間を確認します。債権譲渡登記の存続期間は、原則として債権の債務者のすべてが特定されている場合には50年、それ以外の場合には10年を超えることができないものとされています(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第8条第3項)。
第5に、対象となる債権の範囲を確認します。個別の債権に限定されているか、将来発生する債権を含む包括的なものであるかによって、他の資金調達手段への影響が異なります。
抹消の手続の進め方
第1に、契約書における抹消への協力に関する定めを確認します。完済の場合に抹消に協力する旨が定められている場合には、これに基づいて協力を求めます。
第2に、完済の事実を示す資料を整理します。通帳の記録により、業者へ送金した金額の全部を書き出し、契約上の債務が消滅していることを示します。
第3に、書面により抹消の申請への協力を求めます。期限を定めたうえで、応じない場合には法的手続を採る旨を明らかにします。
第4に、応じない場合には、抹消の登記手続を求める訴えを提起します。判決が確定すれば、これに基づいて単独で抹消の申請をすることができます。
第5に、譲受人が解散し、又は所在が不明である場合には、清算人の選任の申立てその他の手続を検討することとなります。この場合には、手続が複雑となりますので、個別にご相談ください。
白紙の書面を求められた場合の対応
第1に、用途を書面により確認してください。口頭による説明のみでは、後に確認することができません。
第2に、委任の範囲を具体的に記載するよう求めてください。白紙のまま署名押印することは避けてください。
第3に、応じることができない旨を明確に伝えてください。これを理由として取引が成立しないのであれば、当該取引を見送ることが安全です。
第4に、既に交付している場合には、直ちに返還を求めてください。あわせて、交付の経緯、時期、相手方を記録してください。
第5に、履歴事項全部証明書を取得し、現在の登記の内容を確認してください。事実と異なる登記がされている場合には、直ちにご相談ください。
署名押印の前に確認すべき事項
1 当該書面が何のために用いられるのかを、書面により確認してください。
2 委任の範囲が具体的に記載されているかどうかを確認してください。白紙の委任状には応じないでください。
3 登記に関する委任状については、対象となる債権の範囲を確認してください。
4 印鑑証明書の交付を求められた場合には、その用途と通数を確認してください。
5 書面の写しの交付を受けてください。
6 完済の場合の抹消への協力について、契約書に定めがあるかどうかを確認してください。
法令の適用に関する前提
ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。
登記に関する委任状の徴求そのものは、法令に違反するものではありません。他方で、白紙の委任状の交付を強く求め、又は用途を偽って交付を受けた場合には、別途の問題が生じ得ます。
よくあるご質問
債権譲渡登記に応じなければ、契約はできませんか。
業者の判断によります。登記を要件としない業者もあります。
登記がされると、売掛先に分かりますか。
登記事項概要証明書は誰でも取得することができますので、売掛先が調査を行った場合には把握されることがあります。もっとも、登記がされたことのみによって売掛先に通知がされるものではありません。
完済しましたが、登記が抹消されません。
契約書における抹消への協力に関する定めを確認してください。定めがない場合であっても、抹消の登記手続を求める訴えを提起することができます。
白紙の委任状に署名押印してしまいました。
直ちに、用途を確認し、返還を求めてください。あわせて、その経緯を記録してください。
代表者を変更する内容の書面に署名した覚えがありません。
登記事項証明書を取得し、現在の登記の内容を確認してください。事実と異なる登記がされている場合には、その是正に向けた手続を検討することとなります。
印鑑証明書を複数通求められました。
用途と通数を確認してください。用途が説明されない場合には、交付を控えてください。
おわりに
登記に関する委任状は、譲受人が権利を実行するための手段を確保するためのものです。応じること自体が直ちに不利益となるものではありませんが、委任の範囲及び登記の対象となる債権の範囲によって、その後の資金調達に影響が及びます。
白紙の委任状、代表者の変更に関する書面、株式の担保に関する書面については、実行された場合の影響が極めて大きいため、署名押印の前に必ずご相談ください。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
登記に関する委任状の徴求についてのご相談
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本ページの記載は、登記に関する委任状の徴求に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。
また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。
法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。
出典
- 民法第446条第2項
- 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第1項及び第2項、第8条第2項
- 民事執行法第22条第5号
- 貸金業法第2条第1項
- 利息制限法第1条
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条
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