ファクタリング業者を選ぶ際に確認すべき事項 契約の内容及び取引の態様から把握することのできること

ファクタリングを名目としながら、その実態が金銭の貸付けであると疑われる取引について、どのように判断すべきかという御質問をいただきます。また、取引の相手方を選ぶ際に、どのような点を確認すべきかという御相談もお受けしています。
当事務所は、特定の事業者について、その属性を判断して申し上げることはいたしません。他方で、契約の内容及び取引の態様から確認することのできる事項については、具体的に整理することができます。
本ページでは、取引の相手方を選ぶ際に確認すべき事項、契約の内容から把握することのできる事項、及び既に取引をしている場合の対応を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。
法令の適用に関する前提
ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。
したがって、ファクタリング業者が貸金業の登録を受けていないことをもって、直ちに無登録営業(貸金業法第11条第1項)に当たるということにはなりません。この点は、御相談の際に最も誤解の多い事項です。
他方で、取引の実質が金銭の貸付けであると認められる場合には、登録の要否、利息制限法及び出資法の適用が問題となります。この判断は、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実に基づいて行われます。
契約の締結の前に確認すべき事項
| 商号、所在地及び代表者 | 登記事項証明書を取得し、広告及び契約書の記載と一致しているかどうかを確認してください。所在地が実在するかどうかも確認してください。 |
| 契約書の交付 | 契約書が交付され、控えを保有することができるかどうかを確認してください。控えを交付しない取扱いは、後に条項の内容を確認することができなくなります。 |
| 手数料及び控除の内訳 | 手数料のほか、保証金、事務手数料、調査費用等の名目による控除の内訳が、書面により明示されているかどうかを確認してください。 |
| 実際に受領する金額 | 契約の締結の前に、実際に振り込まれる金額が確定的に示されているかどうかを確認してください。 |
| 買戻し及び償還の事由 | 売掛先の支払能力の欠如を事由とする買戻し又は償還が定められている場合には、危険が譲渡人に残ることとなります。 |
| 担保及び保証 | 代表者個人の連帯保証、不動産の担保、株式の担保が求められているかどうかを確認してください。 |
| 検討の時間 | 署名押印を急がせ、又は検討の時間を与えない対応がされていないかどうかを確認してください。 |
契約の内容から把握することのできる事項
第1に、回収不能の危険がいずれに帰属しているかです。売掛先が支払をしない場合に譲渡人が責任を負う仕組みとなっている場合には、譲受人が依拠しているのは譲渡人の資力であることがうかがわれます。
第2に、売掛先の信用の調査がされているかどうかです。契約に至る過程で、売掛先に関する資料の提出を求められず、専ら譲渡人及び代表者に関する資料の提出を求められた場合には、この点が問題となります。
第3に、譲渡の対象が具体的に特定されているかどうかです。売掛先の名称、金額、支払期日が明確でなく、又は事後に差し替えることが予定されている場合には、資金の融通が主たる目的であることがうかがわれます。
第4に、資金の授受の態様です。買取代金が一括して交付されず、分割して交付されている場合、又は返済に相当する入金が定期的に行われている場合には、貸付けに類似する態様であるといえます。
第5に、取引の反復が予定されているかどうかです。1回で終了することが予定されておらず、次の譲渡が事実上求められる場合には、継続的な資金の融通としての性質が強くなります。
取引の態様から確認することのできる事項
第1に、契約書に定められていない金銭の授受が求められていないかどうかです。名目の説明されない金銭の交付を求められた場合には、その内容を書面により確認してください。
第2に、担当者の連絡先が携帯電話のみであるかどうかです。法人としての連絡先が示されない場合には、後に連絡が取れなくなることがあります。
第3に、白紙の書面への署名押印を求められていないかどうかです。用途及び範囲が記載されていない委任状には応じないでください。
第4に、印鑑証明書を複数通求められていないかどうかです。用途と通数を確認してください。
第5に、他の業者との取引を紹介されていないかどうかです。返済のために別の取引を紹介される場合には、負担が累積します。
既に取引をしている場合の対応
第1に、資金の流出を止めることです。取引を重ねる限り、負担は累積します。
第2に、契約の内容を精査することです。買戻しの事由、期限の利益の喪失の事由、損害金及び違約金の水準を確認してください。
第3に、取引の全体を復元することです。通帳の記録により、資金の授受の全部を書き出してください。
第4に、取引の性質を争う余地があるかどうかを検討することです。もっとも、現に取引が継続している場合には、争う姿勢を示すことにより売掛先への通知が送付されることがありますので、順序の判断を要します。
第5に、資金繰りの全体を見直すことです。ファクタリングの負担を除いた場合に営業損益が黒字であるならば、負担の整理により事業を継続することができる可能性があります。
契約の締結の場における具体的な確認の方法
第1に、契約書の全文の交付を求めてください。要約のみが示され、全文が締結の後に交付される取扱いには注意を要します。
第2に、実際に振り込まれる金額を書面により示すよう求めてください。手数料の割合のみが示され、控除の内訳が明らかにされない場合には、受領する金額が想定より少なくなります。
第3に、買戻し又は償還の事由の範囲を確認してください。売掛先の支払能力の欠如を事由とする場合には、回収不能の危険が譲渡人に残ります。
第4に、債権譲渡の通知が送付される要件を確認してください。業者の判断により送付することができる旨のみが定められている場合には、その旨を認識したうえで判断することとなります。
第5に、債権譲渡登記の対象となる債権の範囲を確認してください。包括的な登記がされますと、他の資金調達手段の利用が困難となります。
第6に、検討の時間を求めてください。その場での署名押印を強く求められる場合には、当該取引を見送ることが安全です。
取引の開始後に注意すべき変化
第1に、手数料の水準の上昇です。業者の側で回収の見込みが低いと判断されている可能性があります。
第2に、連帯保証又は担保が新たに求められることです。同様の判断がされている可能性があります。
第3に、連絡の頻度及び態様の変化です。従前より頻繁になり、又は担当者が変更された場合には、回収の方針が変更されている可能性があります。
第4に、契約書に定められていない金銭の授受を求められることです。名目の説明されない金銭の交付を求められた場合には、その内容を書面により確認してください。
第5に、他の業者を紹介されることです。返済のために別の取引を紹介される場合には、負担が累積します。
第6に、譲渡の対象を差し替えるよう求められることです。譲渡の対象の特定が形式的なものにとどまることを示す事情となります。
既に取引をしている場合の点検の手順
第1に、契約書及び付随的な書面の一覧を作成してください。署名押印した書面の全部を把握することが出発点となります。
第2に、通帳の記録により、実際に受領した金額と引き渡した金額を取引ごとに確認してください。
第3に、負担を年率に引き直し、直近1年間の合計を営業利益と比較してください。
第4に、債権譲渡登記の有無及び対象の範囲を確認してください。
第5に、譲渡することのできる売掛債権の残量を確認してください。
第6に、以上を踏まえて、取引を継続するかどうかを判断してください。継続することが困難である場合には、早い段階で御相談ください。
相談の前に整理していただきたい事項
第1に、取引をしている業者の数と、それぞれの残額です。概算で差し支えありません。
第2に、次回の支払期日と金額です。
第3に、売掛先に対する債権譲渡の通知の有無です。
第4に、連帯保証及び担保の差入れの有無です。
第5に、譲渡した債権の内容に事実と異なる部分があるかどうかです。この点は、対応の順序を大きく左右しますので、正確にお伝えください。
本ページの位置付け
本ページは、ファクタリング業者を選ぶ際に確認すべき事項を、契約の内容及び取引の態様の観点から整理したものです。
当事務所は、特定の事業者について、その属性を判断して申し上げることはいたしません。他方で、契約書及び取引の記録から確認することのできる事項については、具体的に整理することができます。
既に取引をしている場合には、契約書及び取引の記録を御持参のうえ御相談ください。
いま確認していただきたいこと
1 業者の商号、所在地及び代表者を、登記事項証明書により確認してください。
2 契約書の控えの交付を受けているかどうかを確認してください。
3 通帳の記録により、実際に受領した金額を取引ごとに確認してください。
4 買戻し又は償還の事由の範囲を確認してください。
5 署名押印した書面の一覧を作成してください。
6 連帯保証及び担保の差入れの有無と範囲を確認してください。
よくあるご質問
貸金業の登録を受けていない業者は違法ですか。
ファクタリングは金銭の貸付けではありませんので、登録を要しません。登録を受けていないことのみを理由として違法となるものではありません。
手数料が高い業者は悪質ですか。
水準のみによって判断することはできません。回収不能の危険の所在、売掛先の信用の調査の有無、担保及び保証の徴求の有無と併せて判断してください。
特定の業者について、問題があるかどうかを教えていただけますか。
当事務所において特定の事業者の属性を判断して申し上げることはできません。契約書及び取引の記録を御持参いただければ、その内容から確認することのできる事項を整理いたします。
契約書を交付されませんでした。
写しの交付を求めてください。交付を受けていない事実を記録しておくことも重要です。
返済のために別の業者を紹介されました。
取引を重ねる限り、負担は累積します。紹介に応じる前に御相談ください。
白紙の委任状に署名押印してしまいました。
直ちに、用途を確認し、返還を求めてください。あわせて、その経緯を記録してください。
おわりに
取引の相手方を判断するに当たっては、評判ではなく、契約書及び取引の記録から確認することのできる事項によることが確実です。商号及び所在地の確認、契約書の控えの取得、控除の内訳の確認、買戻しの事由の確認という手順を経ることにより、多くの問題を予防することができます。
既に取引をしている場合には、まず資金の流出を止め、取引の全体を復元することが出発点となります。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
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御留意事項
本ページの記載は、ファクタリング業者の選定に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。
また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士に御確認ください。
法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際の御依頼に際しましては、必ず個別に御相談ください。御相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。
出典
- 民法第90条、第96条第1項
- 貸金業法第2条第1項、第11条第1項
- 利息制限法第1条
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条
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