ファクタリングを名目とする取引の実質が金銭の貸付けであると疑われる場合 法律関係と採り得る対応

キーボードの上に置かれた紙幣

ファクタリングを名目とする取引でありながら、その実態が金銭の貸付けであると疑われる事案について、どのように見分け、どのように対応すべきかというご相談をお受けしています。

ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

本ページでは、取引の実質が金銭の貸付けであると判断される場合の法律関係、その判断において考慮されている要素、及び採り得る対応を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。

実質が金銭の貸付けであると判断された場合の法律関係

第1に、利息制限法の適用があることとなります。同法第1条は、金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約について、元本の額に応じた上限を定めています。上限を超える部分は無効となります。

第2に、上限を超えて支払われた金銭は、元本に充当されます。充当の結果、なお過払いが生じている場合には、不当利得として返還を請求することができます(民法第703条)。

第3に、貸金業の登録の要否が問題となります。金銭の貸付けを業として行うためには、登録を受けなければなりません(貸金業法第3条第1項)。登録を受けずに業として貸付けを行うことは、同法第11条第1項に違反します。

第4に、出資法第5条が定める水準を超える場合には、刑事上の責任が問題となります。

第5に、契約全体が公の秩序又は善良の風俗に反するものとして無効とされる余地があります(民法第90条)。もっとも、これが認められるためには、相当に強度の事情を要します。

判断において考慮されている要素

第1に、回収不能の危険の所在です。最も重視されている要素です。売掛先が支払をしない場合に譲渡人が買い戻す義務、又は譲受人に対して償還する義務を負う仕組みとなっている場合には、危険が譲渡人に残ることとなります。

もっとも、買戻しの条項が置かれていることのみによって直ちに貸付けと評価されるものではありません。買戻しの事由が、債権の不存在、金額の相違、譲渡を制限する意思表示の存在といった、譲渡人の責めに帰すべき事由に限定されている場合には、売買としての性質と矛盾しないと解する余地があります。

第2に、売掛先の信用の調査です。譲受人が売掛先の信用状況を調査していない場合には、実際に依拠しているのが譲渡人の資力であることがうかがわれます。

第3に、担保及び保証の徴求です。代表者個人の連帯保証、不動産の担保、株式の担保、手形の差入れが求められている場合には、譲渡人の資力を前提とする取引であることがうかがわれます。

第4に、譲渡の対象の特定です。特定が形式的なものにとどまる場合には、資金の融通が主たる目的であることがうかがわれます。

第5に、資金の授受の態様です。債権買取代金が分割して交付されている場合、又は返済に相当する入金が定期的に行われている場合には、貸付けに類似する態様であるといえます。

これらは、いずれか1つが認められれば直ちに貸付けと同視されるというものではありません。取引全体を通じて判断されます。

いわゆる給与ファクタリングとの区別

いわゆる給与ファクタリングについては、最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)が、貸金業法第2条第1項及び出資法第5条第3項にいう「貸付け」に当たる旨を判示しています。

もっとも、これは、賃金は直接労働者に支払わなければならないものとされていること(労働基準法第24条第1項)から、譲受人が使用者に対して直接に支払を求めることが予定されていないという、給与債権に特有の事情を前提とする判断です。事業者が有する売掛債権を対象とする事業者向けのファクタリングとは事案を異にしますので、この判断がそのまま及ぶものではありません。

報道等において両者が区別されずに扱われることがありますので、注意を要します。事業者向けのファクタリングについて主張を組み立てる場合には、この判断を援用するのではなく、契約の内容及び運用の実態に関する具体的な事実によることとなります。

採り得る対応

第1に、取引の全体を復元することです。業者ごとに、契約書、個別の取引の明細、通帳の記録を時系列で整理し、資金の授受を確定します。

第2に、契約書の条項を確認することです。買戻し、償還請求、期限の利益の喪失、損害金、違約金に関する条項の有無及び内容を確認します。

第3に、運用の実態を示す資料を保全することです。契約書に定められていない取扱いが行われている場合には、その事実を示す資料が重要となります。

第4に、順序を定めることです。現に取引が継続している場合には、取引の性質を争う姿勢を示すことにより、売掛先に対する債権譲渡の通知が送付されることがあります。事業の継続を優先するのか、既に生じた負担を争うことを優先するのかを、あらかじめ定めておく必要があります。

第5に、資金の流出を止めることです。取引を重ねる限り、負担は累積します。

取引の実質が争われた場合の手続の流れ

第1に、資料の収集です。契約書、個別契約書、通帳の記録、業者から交付された計算書、業者との連絡の記録を収集します。

第2に、引直しの計算です。仮に実質において貸付けであると認められた場合に、利息制限法所定の上限による計算をした場合の残額を算出します。これにより、請求することのできる金額、又は支払を免れることのできる金額の見込みが立ちます。

第3に、主張の骨格の組立てです。回収不能の危険の所在を中心に置き、売掛先の信用の調査の有無、担保及び保証の徴求の有無を併せて主張します。

第4に、業者に対する通知です。主張の内容と、求める対応を書面により明示します。

第5に、協議です。業者が応じる場合には、早期の解決が可能となります。

第6に、訴訟です。協議が調わない場合には、訴訟の提起又は応訴により争うこととなります。運用の実態を示す資料の多くは業者の手元にありますので、文書提出命令の申立て(民事訴訟法第221条第1項)を検討することとなります。

主張が認められた場合と認められなかった場合

認められた場合には、利息制限法第1条が定める上限を超える部分の利息の契約は無効となり、上限を超えて支払われた金銭は元本に充当されます。充当の結果、なお過払いが生じている場合には、不当利得としての返還を請求することができます(民法第703条)。

他方で、認められなかった場合には、契約の内容に従った支払の義務が残ります。訴訟の費用及び期間を要したうえで、なお支払をしなければならないこととなります。

したがって、主張の見込みを、資料の状況に照らして事前に検討することが重要です。契約書に買戻しの条項がなく、売掛先の信用の調査が行われ、担保及び保証が徴求されていない取引については、主張が認められる見込みは小さくなります。

現に取引が継続している場合の判断

第1に、売掛先に対する債権譲渡の通知が送付される可能性を考慮してください。取引の性質を争う姿勢を示すことにより、業者が回収の手段としてこれを選択することがあります。

第2に、取引を失った場合の影響を試算してください。主要な売掛先を失いますと、資金繰りの再建の前提が失われます。

第3に、資金の流出を止めることを先行させてください。取引を重ねる限り、負担は累積します。

第4に、取引を終了させたうえで争うことを検討してください。取引が終了していれば、通知の問題が生じません。

第5に、消滅時効及び資料の保存期間を考慮してください。無期限に先送りすることもできません。

資料が不足している場合の対応

第1に、金融機関に対して取引明細の発行を請求してください。保存期間内であれば取得することができます。

第2に、業者に対して契約書の写し及び取引の明細の交付を求めてください。応じない場合には、その事実を記録してください。

第3に、登記事項概要証明書により、債権譲渡登記の有無及び時期を確認してください。

第4に、業者の登記事項証明書により、商号、所在地、代表者、解散の有無を確認してください。

第5に、手元にある資料の範囲で主張の骨格を組み立てたうえで、業者の手元にある資料について文書提出命令の申立て(民事訴訟法第221条第1項)を検討することとなります。

本ページの位置付け

本ページは、ファクタリングを名目とする取引の実質が金銭の貸付けであると疑われる場合について、法律関係と採り得る対応を整理したものです。

取引の実質が金銭の貸付けであるかどうかは、手数料の水準ではなく、回収不能の危険の所在、売掛先の信用の調査、担保及び保証の徴求、譲渡の対象の特定、資金の授受の態様を総合して判断されます。

現に取引が継続している場合には、順序の判断が結果を左右しますので、争う前にご相談ください。

いま確認していただきたいこと

1 契約書に、買戻し又は償還請求に関する条項があるかどうかを確認してください。

2 買戻しの事由がどのように定められているかを確認してください。

3 契約に至る過程で、売掛先に関する資料の提出を求められたかどうかを確認してください。

4 連帯保証、担保の差入れ、手形の差入れの有無を確認してください。

5 債権買取代金が一括して交付されたかどうかを、通帳の記録により確認してください。

6 同一の業者との取引の回数と期間を確認してください。

よくあるご質問

手数料が年率で100パーセントを超えます。これだけで貸付けと認められますか。

認められません。水準は、他の要素と併せて、取引の実質を推認させる事情の1つとして位置付けられます。

登録を受けていない業者との取引は無効ですか。

ファクタリングは金銭の貸付けではありませんので、登録を要しません。取引の実質が貸付けであると認められる場合には、登録の要否が問題となります。

実質は貸付けであると主張して、支払を拒むことはできますか。

主張すること自体は可能です。もっとも、認められるとは限りません。また、現に取引が継続している場合には、売掛先への通知が送付されることがあります。

給与ファクタリングの判例を使えませんか。

給与債権に特有の事情を前提とする判断ですので、事業者向けのファクタリングにそのまま及ぶものではありません。

証拠が業者の手元にあります。

文書提出命令の申立て等の手段を検討することとなります。手元にある資料の範囲で、まず主張の骨格を組み立てます。

既に取引が終了しています。

売掛先への通知の問題が生じませんので、争う場合の障害は小さくなります。もっとも、資料の保存期間の経過により、取引の全体を復元することが困難となることがあります。

おわりに

取引の実質が金銭の貸付けであるかどうかは、手数料の水準ではなく、回収不能の危険の所在、売掛先の信用の調査、担保及び保証の徴求、譲渡の対象の特定、資金の授受の態様を総合して判断されます。

争う場合には、契約書のほか、運用の実態を示す資料を収集する必要があります。また、現に取引が継続している場合には、順序の判断が結果を左右します。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

取引の実質に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

ご留意事項

本ページの記載は、取引の実質が金銭の貸付けであると疑われる場合に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。

また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。

法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。

出典

  • 民法第90条、第703条
  • 利息制限法第1条
  • 貸金業法第2条第1項、第3条第1項、第11条第1項
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条第3項
  • 労働基準法第24条第1項
  • 最高裁判所第三小法廷令和5年2月20日決定(刑集77巻2号13頁)

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