ファクタリングの審査 判断される事項、必要となる資料及び審査の結果から把握することのできること

確認済みの印を示すスーツ姿の男性

ファクタリングの審査においては、何が判断されるのか、どのような資料が必要となるのかというご質問をいただきます。また、審査に通らなかった場合に、その理由をどのように把握すべきかというご相談もお受けしています。

本ページでは、審査において判断される事項、必要となる資料、審査に通らない場合に考えられる理由、及び審査の結果から把握することのできる自社の状況を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。

審査において判断される事項

ファクタリングは売掛債権の売買です。本来、審査の対象となるのは、譲渡の対象となる売掛債権の存否及び回収の見込みです。すなわち、売掛先の信用が中心となるはずです。

もっとも、2社間の取引においては、売掛先に対して照会をすることができませんので、提出された資料のみによって判断せざるを得ません。また、回収は譲渡人による引渡しに依存しますので、譲渡人の状況も判断の対象となります。

したがって、実際に判断されている事項は、次のとおりです。

売掛債権の存否 請求書、注文書、契約書、検収書により、取引の実在を確認します。過去に同一の売掛先からの入金の実績があるかどうかも確認されます。
売掛先の信用 売掛先の規模、業種、これまでの支払の状況を確認します。公表されている情報により調査されることがあります。
支払期日までの期間 期間が長いほど、回収不能の危険が高まりますので、条件に反映されます。
譲渡人の状況 債権譲渡登記の有無、他の業者との取引の有無、税及び社会保険料の納付の状況が確認されます。
提出された資料の整合性 請求書の金額と通帳の入金の記録とが整合しているかどうかが確認されます。

必要となる資料

1 履歴事項全部証明書、印鑑証明書、代表者の本人確認書類

2 譲渡の対象とする債権に関する請求書、注文書、契約書、検収書、納品書

3 通帳の写し(当該売掛先からの入金の履歴が分かる部分)

4 直近の決算書類

5 納税証明書

6 他の業者との取引の有無に関する申告

提出する資料の内容は、事実に即したものでなければなりません。実在しない債権に関する資料を作成し、又は金額を過大に記載した資料を提出した場合には、詐欺罪(刑法第246条第1項)、私文書偽造罪及び同行使罪(同法第159条第1項、第161条第1項)の成否が問題となります。

審査に通らない場合に考えられる理由

第1に、売掛債権の存在を確認することができない場合です。請求書のみが提出され、過去の入金の実績がない場合には、確認が困難となります。

第2に、売掛先の信用に疑義がある場合です。売掛先の規模が小さく、公表されている情報が乏しい場合には、判断が困難となります。

第3に、譲渡の対象とする債権が既に譲渡されている場合です。債権譲渡登記の調査により判明します。

第4に、他の業者との取引が多数に及んでいる場合です。資金の循環が生じていることがうかがわれますので、回収の見込みが低いと判断されます。

第5に、税又は社会保険料の滞納がある場合です。滞納処分により差押えがされますと、回収が困難となります。

第6に、提出された資料の間に整合しない点がある場合です。

審査の結果から把握することのできる自社の状況

審査に通らないという結果は、資金調達の観点からは不利な結果です。他方で、自社の状況を把握する手掛かりともなります。

複数の業者において審査に通らない場合には、既に資金の循環が生じており、回収の見込みが低いと判断されている可能性があります。この段階においては、更に条件の厳しい取引を探すのではなく、資金繰りの全体を見直すことが必要です。

また、条件が従前より厳しくなっている場合にも、同様の判断がされている可能性があります。手数料の水準が上昇し、又は連帯保証若しくは担保が新たに求められる場合には、注意を要します。

ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

この段階で検討すべき事項

第1に、資金の流出を止めることです。取引を重ねる限り、負担は累積します。

第2に、公的な支援の制度、金融機関からの借入れ、既存の借入れの条件の変更の可否を確認することです。

第3に、取引先との間で、支払条件の変更について協議することができるかどうかを確認することです。

第4に、支出のうち、延期し、又は削減することのできるものを確認することです。

第5に、既存の業者との間で、支払の方法について協議することです。

資料を準備する際の実務上の留意点

第1に、請求書の記載です。売掛先の商号、件名、金額、支払期日、発行の日付を、実際の取引に即して記載してください。発行の日付を遡らせる、又は将来の日付とすることは避けてください。

第2に、通帳の写しです。当該売掛先からの入金の履歴が分かる部分を提出します。加工した写しを提出しますと、私文書偽造罪(刑法第159条第1項)その他の刑事上の責任が問題となり得ます。

第3に、決算書類です。直近の決算書類を提出します。複数の決算書類が存在する場合には、税務署へ提出したものを用いてください。

第4に、納税証明書です。滞納がある場合には、その事実を隠さずに説明し、納税の猶予の申請の状況を併せて示すことが、かえって信用につながります。

第5に、他の業者との取引の申告です。事実を秘した場合には、表明及び保証の違反として、契約の解除、損害の賠償が問題となります。

第6に、提出した資料の控えです。提出の日付とともに保管してください。後に紛争となった場合の中心的な証拠となります。

審査に通らない場合に検討すべき事項

第1に、譲渡の対象とする債権を変更することです。売掛先の信用の状況により判断が異なりますので、他の売掛先に対する債権について検討する余地があります。もっとも、主要な売掛先に対する債権を対象としますと、通知が送付された場合の影響が大きくなります。

第2に、3社間の取引を検討することです。売掛先の承諾を得ることができるのであれば、条件は相対的に有利となります。もっとも、売掛先に譲渡の事実を明らかにすることとなります。

第3に、他の資金調達手段を検討することです。金融機関からの借入れ、信用保証協会の保証付融資、既存の借入れの条件の変更、取引先との支払条件の協議を順に検討してください。

第4に、支出を見直すことです。延期し、又は削減することのできる支出を確認してください。

第5に、資金繰りの構造を見直すことです。売掛金の回収の期間が支払の期間より長い場合には、この構造を是正しない限り、資金不足は繰り返されます。

第6に、更に条件の厳しい取引を探さないことです。複数の業者において審査に通らないという結果は、回収の見込みが低いと判断されていることを示します。この段階で条件の厳しい取引に至りますと、負担が加速度的に増大します。

条件が従前より厳しくなった場合

手数料の水準が上昇し、又は連帯保証若しくは担保が新たに求められる場合には、業者の側で回収の見込みが低いと判断されている可能性があります。

この場合において、条件を受け入れて取引を継続しますと、負担が増加するとともに、個人の責任又は会社の支配が結び付くこととなります。条件の変化そのものを、資金繰りの状況を示す指標として受け止め、対応の方針を見直してください。

審査の結果を記録しておく意味

第1に、時系列で記録することにより、条件の変化を把握することができます。手数料の水準の上昇、期間の短縮、担保の要求は、いずれも回収の見込みが低いと判断されていることを示します。

第2に、複数の業者における結果を比較することにより、自社の状況を客観的に把握することができます。

第3に、提出した資料の一覧を記録しておくことにより、後に取引の性質が争われた場合において、売掛先の信用の調査が行われていないことを示すことができます。

第4に、審査に通らなかった理由が示された場合には、これを記録してください。改善すべき事項が明らかになります。

第5に、記録は、資金繰りの状況を示す指標として、経営の判断に用いることができます。

本ページの位置付け

本ページは、ファクタリングの審査について、判断される事項、必要となる資料、及び審査の結果から把握することのできる自社の状況を整理したものです。

審査に通らないという結果は、資金調達の観点からは不利ですが、自社の状況を把握する手掛かりともなります。複数の業者において審査に通らない場合には、更に条件の厳しい取引を探すのではなく、資金繰りの全体を見直してください。

提出する資料の内容は、事実に即したものでなければなりません。この点は、後の刑事上の責任に直結いたします。

いま確認していただきたいこと

1 業者ごとの残額、支払期日、担保の有無及び通知の有無を一覧にしてください。

2 債権譲渡登記の有無を、登記事項概要証明書により確認してください。

3 税及び社会保険料の納付の状況を確認してください。

4 直近1年間の負担の合計を算出し、同じ期間の営業利益と比較してください。

5 今後3箇月の資金繰りを、日単位で作成してください。

6 提出した資料の内容が事実に即しているかどうかを確認してください。

よくあるご質問

審査の基準を教えてもらうことはできますか。

事業者が基準を明らかにすることは通常ありません。もっとも、上記の事項が判断の対象となっていることが一般です。

審査が甘い業者を探すべきでしょうか。

審査が簡略であることは、その分だけ危険が条件に反映されることを意味します。手数料の水準、買戻しの事由、担保及び保証の徴求を確認してください。

複数の業者で審査に通りません。

既に資金の循環が生じている可能性があります。更に条件の厳しい取引を探すのではなく、資金繰りの全体を見直してください。直ちにご相談ください。

税を滞納していますが、利用できますか。

滞納処分により差押えがされる可能性がありますので、判断に影響します。滞納の解消についても、あわせて検討する必要があります。

債権譲渡登記があると利用できませんか。

対象となる債権の範囲によります。包括的な登記がされている場合には、他の業者による取引が困難となります。

審査のために資料を作成してもよいでしょうか。

事実に即した資料でなければなりません。実在しない債権に関する資料を作成した場合には、刑事上の責任が問題となります。

おわりに

審査においては、売掛債権の存否、売掛先の信用、譲渡人の状況が判断されます。審査に通らないという結果は、資金調達の観点からは不利ですが、自社の状況を把握する手掛かりともなります。

複数の業者において審査に通らない場合には、更に条件の厳しい取引を探すのではなく、資金繰りの全体を見直すことが必要です。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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ご留意事項

本ページの記載は、ファクタリングの審査に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。

また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。

法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。

出典

  • 民法第467条第1項
  • 刑法第159条第1項、第161条第1項、第246条第1項
  • 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第1項
  • 貸金業法第2条第1項
  • 利息制限法第1条
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条

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