ファクタリングが取引先に知られる経路と、知られた場合の影響及び対応

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ファクタリング業者から、取引先へ債権譲渡の通知を送付する旨を告げられた。あるいは、通知が送付されるのではないかという不安から、業者の求めに応じて過大な負担を引き受けてしまいそうである。このようなご相談を数多くお受けしています。

2社間ファクタリングは、売掛先に譲渡の事実を知られないことを前提とする仕組みです。もっとも、これは知られないことが保証されているという意味ではありません。譲受人は、契約に定められた要件を満たす場合には、通知を送付することができます。

本ページでは、売掛先に譲渡の事実が知られる経路、知られた場合に生じる影響、これを避けるために採り得る対応、及び既に知られた場合の説明の方法を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。

売掛先に知られる経路

債権譲渡の通知 譲渡人の名義により、内容証明郵便によって送付されるのが一般です(民法第467条第1項及び第2項)。契約の締結に際して署名押印を求められた通知書が用いられます。
債権譲渡登記に基づく通知 登記事項証明書を交付して通知する方法によることがあります(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第2項)。
業者からの照会 支払期日に入金がされない場合等に、業者が売掛先へ債権の存否を照会することがあります。
債権譲渡登記の調査 登記事項概要証明書は誰でも取得することができます。売掛先が取引の相手方の信用状況を調査する過程で判明することがあります。
支払先の変更の依頼 3社間ファクタリングにおいては、承諾を得ることが前提となりますので、当然に知られます。
従業員又は関係者からの伝達 経理の担当者、取引の担当者を通じて伝わることがあります。

通知が送付される場面

譲受人が通知を送付するのは、回収の確実性を確保する必要が生じた場合です。具体的には、次の事情が生じた場合が挙げられます。

第1に、譲渡人から譲受人への引渡しが遅滞した場合です。最も一般的な場面です。

第2に、譲渡人と連絡を取ることができなくなった場合です。連絡を絶つことは、通知の送付を早めます。

第3に、譲渡の対象とされた債権の存否又は金額に疑いが生じた場合です。

第4に、同一の債権が他の業者へも譲渡されている疑いが生じた場合です。

第5に、譲渡人の資金繰りが悪化し、回収した資金が他の支払に充てられるおそれが生じた場合です。

知られた場合に生じる影響

第1に、売掛先は、譲受人に対して支払をしなければならなくなります。通知を受けた後に譲渡人へ支払をしても、原則として譲受人に対抗することができません。

第2に、売掛先は、取引の相手方が資金繰りに窮しているとの判断をすることがあります。その結果、取引の縮小、支払条件の変更又は取引の停止に至ることがあります。

第3に、売掛先において、譲受人との連絡、支払先の変更、社内の稟議その他の事務上の負担が生じます。この負担が、取引関係に影響することがあります。

第4に、他の取引先に伝わることがあります。同業者間で情報が共有される業界においては、影響が広がることがあります。

第5に、金融機関との関係に影響が及ぶことがあります。債権譲渡登記の存在が把握された場合には、融資の判断に影響することがあります。

通知を避けるために採り得る対応

第1に、引渡しが遅滞する見込みが生じた段階で、遅滞の理由、入金の見込み及び履行することのできる支払の内容を、資料を添えて業者へ説明することです。連絡を絶つことは、通知の送付を早めます。

第2に、支払の方法について具体的な提案をすることです。業者にとっての目的は多くの場合に金銭の回収ですので、履行することのできる内容が示されれば、通知の送付を留保する判断がされることがあります。

第3に、合意書において、履行されている間は通知を送付しない旨を明記することができるかどうかを確認することです。

第4に、複数の業者と取引がある場合には、対応の順序を定めることです。1つの業者への対応が他の業者に伝わることがあります。

第5に、通知を避けることを条件として過大な負担を引き受けないことです。新たな連帯保証、担保の差入れ、強制執行を受諾する旨の記載のある公正証書の作成に応じることにより、かえって選択肢が失われることがあります(民事執行法第22条第5号)。

いずれの対応についても、結果を保証することはできません。通知の送付は譲受人の権利の行使ですので、業者がこれを行うことを妨げる法律上の根拠は、原則として存在しません。

既に知られた場合の説明の方法

第1に、事実を伏せないことです。事実と異なる説明をしますと、後に判明した場合に信用を失います。

第2に、支払先を明確にすることです。売掛先にとって最も重要な関心は、誰に支払えば免責されるかという点です。

第3に、今後の取引の見込みを示すことです。納品、役務の提供に支障が生じないことを、具体的な体制とともに説明します。

第4に、説明の相手方と順序を定めることです。担当者に先に伝えるか、責任者に先に伝えるかによって、その後の展開が異なります。

第5に、書面を用いることです。口頭のみの説明は、社内で正確に伝わりません。

売掛先の側の受け止め方

通知を受けた売掛先が最も重視するのは、支払先が変更されることによる事務上の負担と、取引の相手方の信用の状況です。

第1に、支払先の変更です。振込先の登録の変更、社内の承認の手続を要します。継続的な取引においては、この事務が毎月生じます。

第2に、免責の確保です。誤って譲渡人へ支払をしますと、譲受人に対抗することができず、二重の支払を求められるおそれがあります。したがって、売掛先は、誰に支払えば免責されるかを慎重に確認します。

第3に、取引の相手方の信用の状況です。債権を譲渡しなければならない状況にあることから、資金繰りに窮しているとの判断がされます。納品又は役務の提供が継続されるかどうかが懸念されます。

第4に、社内における説明です。担当者は、上司に対して事情を説明しなければなりません。この過程で、取引の継続の可否が検討されます。

第5に、他の取引先への影響です。同業者間で情報が共有される業界においては、影響が広がることがあります。

これらを踏まえますと、譲渡人の側からの説明においては、支払先を明確にし、納品又は役務の提供に支障が生じないことを具体的に示すことが最も有効です。

通知の送付を留保させるための交渉の材料

第1に、履行することのできる支払の内容です。資金繰りの見込みに基づいて算出した金額を、書面により提示します。

第2に、売掛先との取引が継続していることです。取引が継続していれば、将来の売掛債権から回収がされる見込みがあります。通知により取引が失われますと、譲受人にとっても回収の総額が減少します。この点を資料により示すことが有効です。

第3に、他の業者との関係です。他の業者との間で協議が調っている場合には、その内容を示すことにより、公平な取扱いを求めることができます。

第4に、担保の提供です。もっとも、新たな連帯保証、担保の差入れ、公正証書の作成は、かえって選択肢を狭めることがありますので、慎重な判断を要します。

第5に、期間の限定です。無期限の留保を求めるのではなく、一定の期間を区切って留保を求める方が、応じられやすい傾向があります。

通知が送付された後に取引が維持された事例の特徴

第1に、通知の到達の直後に、譲渡人の側から売掛先へ説明がされていることです。売掛先が問合せをする前に説明がされた場合には、取引が維持される傾向があります。

第2に、説明の内容が具体的であることです。支払先、今後の取引の見込み、連絡の窓口が明示されていることが重要です。

第3に、納品又は役務の提供に支障が生じていないことです。取引の実務に影響が及ばなければ、売掛先が取引を停止する動機は小さくなります。

第4に、譲渡人の側に代替の資金調達の見込みがあることです。

第5に、説明が書面によりされていることです。口頭のみの説明は、社内で正確に伝わりません。

知られた後に事業を維持するための対応

第1に、納品又は役務の提供を確実に継続してください。取引の実務に影響が及ばなければ、売掛先が取引を停止する動機は小さくなります。

第2に、支払先の変更に伴う事務の負担を軽減してください。譲受人の口座、振込の手続について、必要な情報を整理して提供します。

第3に、資金繰りの見込みを示してください。事業の継続に支障がないことを、具体的な資料により説明します。

第4に、業者との協議の状況を定期的に報告してください。通知の撤回の見込みがある場合には、その旨を伝えます。

第5に、他の売掛先への波及を防いでください。説明の内容を統一しておく必要があります。

本ページの位置付け

本ページは、ファクタリングの利用が取引先に知られることを懸念しておられる事業者の方に向けて、知られる経路、知られた場合の影響及び対応を整理したものです。

2社間の取引は、売掛先に譲渡の事実を知られないことを前提とする仕組みですが、知られないことが保証されているという意味ではありません。

知られることを避けるために過大な負担を引き受けることは、結果として選択肢を狭めます。連絡を絶つことなく、履行することのできる内容を資料に基づいて提示してください。

いま確認していただきたいこと

1 債権譲渡契約書において、通知の送付の要件がどのように定められているかを確認してください。

2 通知書に署名押印をして業者へ交付しているかどうかを確認してください。

3 債権譲渡登記の有無を、登記事項概要証明書により確認してください。

4 売掛先ごとに、譲渡した債権の内容と残額を整理してください。

5 主要な売掛先との取引額と、その事業に占める比重を確認してください。

6 業者との連絡の記録を保全してください。

よくあるご質問

2社間ファクタリングであれば、絶対に知られませんか。

知られないことが予定されている仕組みですが、保証されているものではありません。債権譲渡登記の存在、通知の送付その他の事情により知られることがあります。

債権譲渡登記がされていますが、売掛先には分かりますか。

登記事項概要証明書は誰でも取得することができます。売掛先が調査を行った場合には、譲渡の事実を把握することがあります。

通知を止めることを条件に、新たな契約への署名を求められています。

内容を確認しないまま署名しますと、負担が重くなり、又は直ちに強制執行を受ける状態となることがあります。署名の前にご相談ください。

既に通知が届いてしまいました。取引を維持することはできますか。

事実を正確に伝え、支払先を明確にし、今後の取引の見込みを具体的に示すことにより、取引が維持された例があります。もっとも、結果を保証することはできません。

通知を撤回してもらうことはできますか。

撤回に応じるかどうかは業者の判断によります。既に送付された通知の効力を一方的に消滅させる法律上の手段はありません。

従業員に知られたくありません。

通知が売掛先へ送付された場合には、支払先の変更を通じて経理の担当者に伝わることがあります。あらかじめ説明の方法を整理しておく必要があります。

おわりに

売掛先に知られることを避けたいという希望は、当然のものです。もっとも、そのために過大な負担を引き受けることは、結果として選択肢を狭めます。

連絡を絶つことなく、履行することのできる内容を資料に基づいて提示することが、通知を避けるための最も有効な方法です。既に知られた場合においても、説明の方法を整えることにより、取引を維持することができる例があります。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

売掛先への影響に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜・日曜・祝日を含みます)

ご留意事項

本ページの記載は、ファクタリングが取引先に知られる場合に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。

また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。

法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。

出典

  • 民法第467条第1項及び第2項
  • 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律第4条第1項及び第2項
  • 民事執行法第22条第5号

具体的なご相談をお考えの皆様へ

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件に関与し、平成23年には最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得ております。現在は弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士を務めております。

主として取り扱う分野 M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務

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本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。