ファクタリングの取引条件が他の資金調達手段と大きく異なる理由

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ファクタリングの検討は、取引の仕組みと負担の構造を理解する場面と、個別の業者及び契約の内容を見極める場面とに分かれますので、次のとおり切り分けます。本ページは、取引条件が他の資金調達手段と大きく異なる理由を扱います。
▶ ファクタリングの問題点 負担の水準、契約の内容及び運用の実態から見た留意事項
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ファクタリングの負担の水準は、金融機関からの借入れその他の資金調達手段と比較して、著しく高いことが少なくありません。なぜこのような差が生じるのかというご質問をいただきます。
本ページでは、取引の条件が他の資金調達手段と異なる理由を、法律上の構造、回収の仕組み、審査の対象、規律の有無という4つの観点から整理します。仕組みを理解しておくことは、条件を判断し、また交渉を組み立てる際の前提となります。
第1の観点 法律上の構造の違い
金融機関からの借入れは、金銭の消費貸借です(民法第587条)。借主は、受け取った金銭と同額を返還する義務を負い、これに対して利息を支払います。
これに対し、ファクタリングは売掛債権の売買です(同法第555条)。譲渡人は、財産権である売掛債権を移転し、その対価を受領します。返還の義務を負うものではありません。
この違いにより、適用される法令が異なります。ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。
第2の観点 回収の仕組みの違い
金融機関からの借入れにおいては、返済は借主から行われます。返済が滞った場合には、担保の実行、保証人に対する請求、法的手続によることとなります。
ファクタリングにおいては、譲受人は、売掛先から直接に回収することができる立場にあります。債権譲渡の通知をすれば、売掛先は譲受人に支払わなければなりません(民法第467条第1項)。
2社間の取引においては、この通知をしないことが選択されています。したがって、譲受人は、回収の手段を保有しながら、これを行使しない状態に置かれています。この選択に対する対価が、手数料に反映されます。
また、通知の送付は、譲渡人にとって取引関係の喪失を意味します。したがって、譲受人は、極めて強力な交渉上の手段を保有していることとなります。この構造も、条件に反映されます。
第3の観点 審査の対象の違い
金融機関からの借入れにおいては、借主の事業の内容、収益力、財務の状況、返済の見込みが審査の対象となります。審査には時間を要しますが、その分、借主の事業の実態が把握されます。
ファクタリングにおいては、本来、売掛先の信用が審査の対象となるはずです。もっとも、2社間の取引においては、売掛先に照会をすることができませんので、提出された資料のみによって判断せざるを得ません。
その結果、審査は簡略となり、期間は短くなります。他方で、判断の基礎となる情報が限られますので、その分の危険が条件に反映されます。
また、契約において買戻し又は償還の義務が定められている場合には、実質において譲渡人の資力が依拠の対象となります。この場合、譲渡人の財務の状況が悪いほど、条件は厳しくなります。
第4の観点 規律の有無の違い
貸金業を営む者に対しては、貸金業法により、登録、貸付けの条件の掲示、契約締結前の書面の交付、契約締結時の書面の交付、取立て行為の規制等の義務が課されています。また、利息制限法及び出資法により、利息の水準について上限が定められています。
ファクタリングについては、これらの規律が及びません。したがって、手数料の水準について法令上の上限はなく、契約締結前の書面の交付も義務付けられていません。取立て行為に関する貸金業法第21条第1項の規律も及びません。
この結果、条件の内容及び取引の態様は、当事者間の合意に委ねられます。契約の締結の前に条件を確認することが、唯一の予防となります。
比較の方法
| 比較の基準 | 金融機関からの借入れ | ファクタリング |
| 法律上の性質 | 金銭の消費貸借 | 売掛債権の売買 |
| 負担の表示 | 年率 | 額面に対する割合 |
| 法令上の上限 | あり(利息制限法第1条) | なし |
| 審査の対象 | 借主の事業及び財務 | 売掛先又は譲渡人 |
| 資金化までの期間 | 長い | 短い |
| 取引先への影響 | 原則としてなし | 通知により生じ得る |
| 回収の手段 | 担保の実行、法的手続 | 売掛先からの直接の回収 |
比較に当たっては、負担の表示の基準が異なる点に注意を要します。ファクタリングの手数料は額面に対する割合として示されますので、期間で除して年率に引き直さなければ、借入れの利率と比較することができません。
負担の水準を年率に引き直す具体的な計算
負担の水準を把握する出発点は、実際に受領した金額と、後に引き渡すこととなる金額の差額です。この差額を、資金を受領した日から引渡しの期日までの期間で除し、年率に引き直します。
例えば、額面500万円の売掛債権について、支払期日までの期間が30日であり、実際に受領した金額が450万円であるとします。差額は50万円です。これは受領した金額450万円に対して約11.1パーセントに相当します。期間が30日ですので、年率に引き直しますと、11.1パーセントに365を乗じ30で除して、約135パーセントに相当します。
同じ額面の10パーセントという手数料であっても、支払期日までの期間が15日である場合には、年率に引き直した水準は約270パーセントに相当します。期間が短いほど、年率に引き直した水準は高くなります。
金融機関からの借入れにおける利率は年率で表示されますので、この計算を経て初めて比較が可能となります。元本の額が100万円以上である場合の利息制限法所定の上限は年15パーセントですので(同法第1条)、上記の例における負担は、これを大きく超える水準に相当します。
もっとも、ファクタリングには利息制限法の適用がありませんので、この比較は、水準の大きさを把握するためのものであり、法令違反を基礎付けるものではありません。
資金調達の手段を選択する際の判断の順序
第1に、不足する金額と期間を確定します。この作業を経ずに手段を選択しますと、必要以上の金額を調達し、負担が過大となります。
第2に、資金化までに要する期間の制約を確認します。金融機関からの借入れは審査に時間を要しますので、期日が迫っている場合には間に合わないことがあります。
第3に、負担の水準を年率に引き直して比較します。
第4に、売掛先への影響を検討します。債権譲渡の通知が送付された場合の影響が大きい売掛先に対する債権は、譲渡の対象から外すことが安全です。
第5に、将来の資金調達への影響を検討します。債権譲渡登記の存在、ファクタリングの反復の事実は、金融機関の審査において考慮されることがあります。
第6に、反復の要否を検討します。1回で終了することができるかどうかを確認し、次の期日にも同じ不足が生じる見込みであるならば、負担の総額を試算してください。
取引の条件を判断する際の具体的な質問
第1に、実際に振り込まれる金額はいくらであるかを、書面により示すよう求めてください。手数料の割合ではなく、金額を確認します。
第2に、控除される金額の名目と内訳を示すよう求めてください。返還が予定されているものがあるかどうかを確認します。
第3に、売掛先が支払をしなかった場合に、誰が負担するのかを確認してください。買戻し又は償還の義務が定められている場合には、危険が譲渡人に残ります。
第4に、債権譲渡の通知がどのような場合に送付されるのかを確認してください。
第5に、債権譲渡登記を行うかどうか、行う場合の対象となる債権の範囲を確認してください。
第6に、1回で終了することができるかどうかを確認してください。
資金調達の手段を組み合わせる考え方
第1に、恒常的な運転資金は、金融機関からの借入れにより調達することが基本となります。負担の水準が低く、返済の期間を長期に設定することができます。
第2に、季節的な変動による資金需要については、当座貸越又は短期の借入れが適します。
第3に、突発的な不足については、手元資金により対応することが基本です。月商の1箇月分程度の手元資金を確保しておくことが望まれます。
第4に、ファクタリングは、上記のいずれによっても対応することができない、一時的かつ限定的な不足に対する手段として位置付けることが適切です。
第5に、恒常的な資金不足に対してファクタリングを反復して用いますと、負担が累積し、事業の継続を困難にします。
負担の水準を社内で共有する意義
第1に、経営の判断の基礎となります。年率に引き直した水準を把握しないまま取引を重ねますと、負担の大きさが認識されません。
第2に、経理の担当者との情報の共有により、二重譲渡その他の事故を防ぐことができます。
第3に、金融機関との協議において、資金繰りの状況を説明する資料となります。
第4に、税理士との協議において、決算における計上の方法を確認する資料となります。課税関係は税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。
第5に、取引を停止する判断をする際の根拠となります。
本ページの位置付け
本ページは、ファクタリングの取引条件が他の資金調達手段と大きく異なる理由を、法律上の構造、回収の仕組み、審査の対象、規律の有無の4つの観点から整理したものです。
比較に当たっては、負担の表示の基準が異なる点に注意し、必ず年率に引き直してください。
ファクタリングは、一時的かつ限定的な不足に対する手段として位置付けることが適切です。構造的な資金不足に対して反復して用いますと、事業の継続を困難にします。
いま確認していただきたいこと
1 実際に受領した金額と引き渡した金額の差額を、期間で除して年率に引き直してください。
2 その水準と、金融機関からの借入れの利率とを比較してください。
3 契約書における買戻し又は償還の事由の範囲を確認してください。
4 債権譲渡の通知が送付される要件を確認してください。
5 主要な売掛先に対する債権を譲渡の対象としているかどうかを確認してください。
よくあるご質問
なぜ手数料がこれほど高いのですか。
回収の確実性、売掛先の信用の調査の困難さ、期間の短さ、法令上の上限の不存在が理由として挙げられます。
借入れと比較するにはどうすればよいですか。
手数料を期間で除し、年率に引き直してください。額面の10パーセントで期間が1箇月である場合、年率に引き直した負担は約133パーセントに相当します。
法令上の上限がないのは問題ではありませんか。
売買である以上、利息の規律は及びません。他方で、契約の内容及び運用の実態によっては、取引の性質を争う余地があります。
3社間の取引であれば条件は良くなりますか。
譲受人が売掛先から直接に支払を受けますので、回収の確実性が高く、水準は相対的に低くなります。他方で、売掛先に譲渡の事実を明らかにすることとなります。
金融機関からの借入れに切り替えることはできますか。
債権譲渡登記の存在、ファクタリングの反復の事実が審査において考慮されることがあります。もっとも、事業に収益力が残っているのであれば、検討の余地があります。
条件の交渉はできますか。
今後の取引について協議することは可能です。既に成立した取引について一方的に変更することはできません。
おわりに
ファクタリングの条件が他の資金調達手段と異なるのは、法律上の構造、回収の仕組み、審査の対象、規律の有無の違いによるものです。仕組みを理解しておくことは、条件を判断し、また交渉を組み立てる際の前提となります。
比較に当たっては、負担の表示の基準が異なる点に注意し、必ず年率に引き直してください。
必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。
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ご留意事項
本ページの記載は、資金調達の手段の比較に関する一般的な法制度及び当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、回収し又は負担する金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係及び資料によって異なります。
また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。
法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。
出典
- 民法第467条第1項、第555条、第587条
- 利息制限法第1条
- 貸金業法第2条第1項、第21条第1項
- 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条
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