オンラインで完結するファクタリング 手続の特徴、確認すべき事項及び記録の保全

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この記事の位置付け

ファクタリングの適法性は、債権の売買として扱われる場面と、金銭の貸付けと判断される場面とに分かれますので、次のとおり切り分けます。本ページは、オンラインで完結する取引の特徴と記録の保全を扱います。

▶ ファクタリングが貸付けに当たるかどうかが争われた裁判例 判断の枠組みと考慮されている要素

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来店せずにスマートフォンから申し込み、請求書の画像を送信しただけで、その日のうちに入金を受けられるというファクタリングを見つけた。手軽さに魅力を感じる一方で、契約書の全文を読まないまま同意の操作をしてよいのか、後で問題にならないか気になっている。

本記事は、申込みから契約までがインターネットで完結するファクタリングを利用しようとしている、又は既に利用した事業者の方に向けたものです。

オンラインで完結する取引であっても、法律上の性質は売掛債権の売買であり、電子的な方法による契約が書面による契約と異なる効力を有するものではありません。事業者の特定、契約書の全文、実際に受領する金額を確認し、各段階の画面の写しや電磁的記録をご自身の側でも保存することが重要です。以下、順にご説明します。

申込みから契約の締結までがすべてインターネットを通じて完結するファクタリングが広く用いられるようになりました。来店を要せず、資料の提出も画像の送信によることができますので、手続に要する時間は大幅に短縮されています。

他方で、対面による説明がされないことにより、条件の確認が不十分となりやすいという問題があります。本ページでは、オンラインで完結する取引の特徴、確認すべき事項、及び紛争となりやすい点を整理します。個別の事案における結果を保証するものではありません。

法律上の位置付け

オンラインで完結する取引であっても、法律上の性質は売掛債権の売買です(民法第555条)。手続の方法が異なるにすぎず、契約の内容についての規律が変わるものではありません。

ファクタリングは売掛債権の売買であり、金銭の貸付けではありませんので、貸金業法、利息制限法及び出資法の適用はありません。したがって、手数料の水準が高いことのみを理由として、これらの法令に違反するということにはなりません。もっとも、売買の形式が採られていても、その実質において金銭の貸付けと同視すべきであると判断された下級審裁判例がありますので、契約の内容及び運用の実態によっては、別途の検討を要します。

また、電子署名及び認証業務に関する法律第3条は、電磁的記録であって情報を表すために作成されたものは、本人による一定の電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する旨を定めています。電子的な方法による契約の締結が、書面による締結と異なる効力を有するものではありません。

オンラインで完結する取引の特徴

第1に、手続に要する時間が短いことです。申込みから資金の受領まで、短時間で完了することがあります。

第2に、対面による説明がされないことです。条項の意味について質問する機会が限られます。

第3に、資料の提出が画像の送信によることです。原本の確認がされませんので、提出された資料の内容についての確認が形式的になりやすい傾向があります。

第4に、契約書が電磁的記録により交付されることです。控えの保管の方法を確認する必要があります。

第5に、担当者との連絡が電子的な方法によることです。連絡の記録が残りやすいという利点があります。

確認すべき事項

事業者の特定 商号、所在地、代表者、電話番号が表示されているかどうかを確認し、登記事項証明書の記載と照合してください。所在地が実在するかどうかも確認してください。
契約書の全文 締結の前に全文を閲覧することができるかどうかを確認してください。要約のみが表示され、全文が締結の後に交付される取扱いには注意を要します。
実際に受領する金額 手数料のほか、保証金、事務手数料、振込手数料等の名目による控除の内訳が示されているかどうかを確認してください。
買戻し及び償還の事由 売掛先の支払能力の欠如を事由とする場合には、危険が譲渡人に残ることとなります。
債権譲渡の通知 通知が送付される要件と、通知書への署名押印を求められるかどうかを確認してください。電子的な方法による場合であっても、通知は書面によることが一般です。
債権譲渡登記 登記の申請がされるかどうか、対象となる債権の範囲を確認してください。
控えの保管 契約書その他の書面の電磁的記録を、ご自身の側でも保存してください。事業者の側の閲覧の仕組みに依存しますと、後に確認することができなくなることがあります。

紛争となりやすい点

第1に、条項の内容を確認しないまま締結したという主張です。もっとも、全文が表示され、同意の操作がされている場合には、この主張が認められることは容易ではありません。

第2に、実際に受領した金額が事前に示された金額より少ない場合です。控除の名目と内訳を、締結の前に記録してください。画面の写しを保存することが確実です。

第3に、提出した資料の内容が事実と異なる場合です。原本の確認がされないことにより、資料の内容についての注意が向かないことがあります。実在しない債権に関する資料を作成し、又は金額を過大に記載した資料を提出した場合には、詐欺罪(刑法第246条第1項)、私文書偽造罪及び同行使罪(同法第159条第1項、第161条第1項)の成否が問題となります。

第4に、契約の相手方が誰であるかが不明確な場合です。仲介する事業者と、実際に債権を譲り受ける事業者とが異なることがあります。

第5に、連絡が取れなくなる場合です。電話番号が表示されず、電子メール又は入力画面のみが連絡の方法とされている場合には、後に連絡が困難となることがあります。

記録の保全

オンラインで完結する取引においては、記録の保全が特に重要です。

1 申込みの画面、条件が表示された画面の写しを保存してください。

2 契約書その他の電磁的記録を、ご自身の側でも保存してください。

3 提出した資料の控えを、提出の日付とともに保存してください。

4 担当者との電子メール、通信アプリケーションの履歴を保存してください。

5 入金及び送金の記録を、通帳又は取引明細により確認してください。

電子的な方法による契約の成立と証拠

第1に、契約の成立の時期です。申込みに対する承諾の意思表示が到達した時点で契約が成立します。画面上の操作によって同意がされた場合には、その操作の記録が成立を示す証拠となります。

第2に、電磁的記録の証拠としての効力です。電子署名及び認証業務に関する法律第3条は、電磁的記録であって情報を表すために作成されたものは、本人による一定の電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する旨を定めています。

第3に、事業者の側の記録です。申込みの日時、同意の操作の記録、表示された画面の内容は、事業者の側のシステムに保存されています。紛争となった場合には、その開示を求めることとなります。

第4に、ご自身の側の記録です。事業者の側の記録に依存しないよう、申込みの画面、条件が表示された画面の写しを保存してください。

第5に、契約書の交付です。電磁的記録により交付される場合には、閲覧の仕組みが提供されることが一般です。事業者との関係が終了した後には閲覧することができなくなることがありますので、ご自身の側でも保存してください。

手続の各段階において保存すべき記録

第1に、申込みの段階です。入力した内容、表示された条件、申込みの日時を記録してください。

第2に、資料の提出の段階です。提出した資料の控えを、提出の日付とともに保存してください。画像により送信した場合には、送信した画像そのものを保存してください。

第3に、条件の提示の段階です。手数料、控除の内訳、実際に受領することのできる金額が表示された画面の写しを保存してください。

第4に、契約の締結の段階です。契約書の全文の電磁的記録を保存してください。同意の操作を行った画面の写しも併せて保存してください。

第5に、資金の受領の段階です。通帳の記録により、入金の日付と金額を確認してください。

第6に、引渡しの段階です。送金の記録を保存してください。

連絡の方法に関する留意点

第1に、電話番号が表示されているかどうかを確認してください。電子メール又は入力画面のみが連絡の方法とされている場合には、後に連絡が困難となることがあります。

第2に、担当者の氏名を確認してください。連絡のたびに担当者が異なる場合には、やり取りの経緯が引き継がれないことがあります。

第3に、電子メールによる連絡を優先してください。記録が残りますので、後に事実関係が争われた場合の資料となります。

第4に、通信アプリケーションによる連絡がされる場合には、画面の写しを保存してください。

第5に、事業者との関係が終了した場合であっても、記録を保存してください。返還請求を検討する場合の資料となります。

事業者の特定に関する確認の実際

第1に、ウェブサイトに記載された商号、所在地、代表者、電話番号を書き留めてください。締結の後に表示が変更されることがありますので、画面の写しを保存してください。

第2に、登記事項証明書を取得し、記載と照合してください。法務局において誰でも取得することができます。

第3に、所在地が実在するかどうかを確認してください。事務所としての実体があるかどうかも確認の対象となります。

第4に、振込先の口座の名義を確認してください。契約の相手方と異なる名義である場合には、その理由を確認する必要があります。

第5に、仲介する事業者と譲受人とが異なる場合には、いずれに対して義務を負うのかを、契約書における当事者の記載により確認してください。

電子的な方法による契約に特有の紛争

第1に、表示された条件と契約書の内容とが異なる場合です。表示の画面の写しを保存していなければ、立証が困難となります。

第2に、同意の操作をしていないにもかかわらず契約が成立したとされる場合です。操作の記録は事業者の側にありますので、開示を求めることとなります。

第3に、契約書の内容が事後に変更された場合です。締結の時点の電磁的記録を保存しておく必要があります。

第4に、事業者が営業を停止し、閲覧の仕組みが利用することができなくなった場合です。ご自身の側でも保存してください。

第5に、いずれの場合においても、記録の保全が対応の前提となります。

いま確認していただきたいこと

1 契約の相手方の商号、所在地及び代表者を、登記事項証明書により確認してください。

2 契約書の全文を保存しているかどうかを確認してください。

3 控除の内訳を確認し、実際に受領した金額と照合してください。

4 買戻し又は償還の事由の範囲を確認してください。

5 債権譲渡登記の有無を、登記事項概要証明書により確認してください。

6 提出した資料の内容が事実に即しているかどうかを確認してください。

よくあるご質問

電子的な方法による契約は有効ですか。

有効です。書面による締結と異なる効力を有するものではありません。

条項を読まないまま同意しました。

全文が表示され、同意の操作がされている場合には、確認しなかったことのみを理由として効力を否定することは容易ではありません。

契約書の控えがありません。

事業者に対して交付を求めてください。閲覧の仕組みが提供されている場合には、電磁的記録をご自身の側でも保存してください。

連絡が取れなくなりました。

登記事項証明書により所在地を確認し、書面により連絡することとなります。あわせて、入金及び送金の記録を保全してください。

仲介する事業者と譲受人が異なるようです。

契約書における当事者の記載を確認してください。誰に対して義務を負うのかが不明確な場合には、その確認が出発点となります。

資料の内容に誤りがありました。

民事上の責任にとどまらず、刑事上の責任が問題となり得ます。業者から指摘を受ける前の段階が、最も選択肢の広い局面です。

おわりに

オンラインで完結する取引は、手続に要する時間が短いという利点があります。他方で、対面による説明がされないことにより、条件の確認が不十分となりやすいという問題があります。

契約の相手方の特定、契約書の全文の確認、控除の内訳の確認、記録の保全という4点を確実に行ってください。

必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

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また、課税関係につきましては税理士の職域ですので、当事務所において判断することはいたしません。税務上の取扱いについては、顧問税理士にご確認ください。

法令の改正、裁判例の集積により内容が変わる場合には、記載を改めます。実際のご依頼に際しましては、必ず個別にご相談ください。ご相談の内容は、弁護士法上の守秘義務に基づき秘密を厳守いたします。

出典

  • 民法第467条第1項、第555条
  • 電子署名及び認証業務に関する法律第3条
  • 刑法第159条第1項、第161条第1項、第246条第1項
  • 貸金業法第2条第1項
  • 利息制限法第1条
  • 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件に関与し、平成23年には最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得ております。現在は弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士を務めております。

主として取り扱う分野 M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務

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